田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『幽霊紐育を歩く』

2019-01-16 13:08:16 | 1950年代小型パンフレット
『幽霊紐育を歩く』(41)(2007.1.29.)

 飛行機事故により、誤って天国に召されてしまったボクサーのジョー(ロバート・モンゴメリー)。天国の係官ジョーダン(クロード・レインズ)は、何とかジョーの魂を現世に戻そうとするが、ジョーの肉体はすでに火葬にされていた。仕方なくジョーは、妻と愛人に殺された大富豪を身代わりの肉体として現世に復活するが…。



 大好きなこの映画を再見。何度見ても、原案ハリー・シーガルのアイデアの素晴らしさと、それを一本の映画として仕上げたスタッフ、キャストに拍手を送りたくなる。特に天国の係官ジョーダン役のレインズ、その相棒のエドワード・エバレット・ホートン、ジョーのトレーナー役のジェームズ・グリーソンなど、脇役のうまさが光る。原題は『Here Comes Mr.Jordan』だから、真の主役は実はジョーダンなのかもしれない。ジョー役のモンゴメリーは、テレビドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ=エリザベス・モンゴメリーのお父さんだ。

 ところで、この映画の弱点は、ジョーが別の人物に乗り移っても外見が変わらない、つまりモンゴメリーが一人で何役もこなす点にあると思っていたのだが、あえてそうしたのは、魂の不滅を訴えたかったからなのだと気づいた。『Leonard Maltin's Movie Guide』によれば、「主人公のモデルは、飛行機事故で亡くなった名優ウィル・ロジャースで、この映画には、彼が生き帰ってくれたら…という思いが込められている」とのこと。ウォーレン・ベイティが監督、主演したリメーク版の『天国から来たチャンピオン』(78)の主人公の職業はアメフトの選手に変わったが、この精神は引き継がれていた。



 【今の一言】他に“天国物”としては、死後の世界にやってきた男(ドン・アメチー)が、閻魔大王を相手に自らが歩んできた人生を語る、エルンスト・ルビッチ監督の『天国は待ってくれる』(43)や、第二次世界大戦中の天国と地上を舞台に、天国側のミスで生き残った一人の英国軍パイロット(デビッド・ニーブン)をめぐる騒動を描いた、マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督の『天国への階段』(46)もある。フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』(46)も、この範疇に入るか。どれもいい映画だ。

ロバート・モンゴメリーのプロフィール↓


クロード・レインズのプロフィール↓

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『風と共に去りぬ』

2019-01-16 09:27:08 | 1950年代小型パンフレット

『風と共に去りぬ』(39)(2006.3.13.)



 中学時代に、最初に見たときは、圧倒的なスケールの大きさに打ちのめされたのだが、その後、何度か見るうちに「この映画は、結局わがまま勝手な女(スカーレット・オハラ)の一代記に過ぎないのではないか」と反発を覚えたり、「いやいや、そうは言ってもやっぱりいい映画だ」と思ったりと、自分の中でも評価が定まらなくなった。とはいえ、マックス・スタイナー作曲のあのテーマ曲「タラのテーマ」がかかると、訳も分からず感動させられてしまうのは確かだ。

 今回、NHK BSの放送で久しぶりに見たのだが、改めて、古典映画での俳優の存在感、あるいは人物描写の極端さや、濃さについて考えさせられた。思えば最近はやりの“韓流ドラマ”のルーツはこういう映画にあるのかもしれない。

 また、この映画は南軍、つまり敗者の側から見た南北戦争が描かれるから、アメリカというか、アイリッシュ移民のトラウマや、土地への執着が露わになる。また、アシュレイ(レスリー・ハワード)は戦場で受けた心の傷が癒えないし(今で言うPTSDか)、レット・バトラー(クラーク・ゲイブル)は成金の自分をどこかで恥じている。にもかかわらずスカーレット(ビビアン・リー)はたくましい、と言ったら、それは男の勝手な言い分か。

 今回は、意外や、天使のようだと表現され、何かとスカーレットと対比されるメラニー(オリビア・デ・ハビランド)の方が、実はずるくてくせ者なのかもしれないと思わされた。

 【今の一言】NHK Eテレの「100分de名著」で、この映画の原作であるマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』について解説していた。「スカーレットは金と土を手にした時に我に返る」「実はメラニーの方がエキセントリック」など、興味深い考察が語られていた。

ビビアン・リーのプロフィール↓


クラーク・ゲイブルのプロフィール↓


オリビア・デ・ハビランドのプロフィール↓

パンフレット(52・東宝事業課(有楽座 No52-17.))の主な内容
この映画のスタッフに就て/映画を織りなす人々/オリヴィア・デ・ハヴイランド/ヒロインの決定と九つのオスカア/ミッチェル女史のこと(大久保康雄)/極付レット役者クラーク・ゲイブルのこと(大井眞太)/天下一品名女優ヴィヴィアン・リイのこと(淀川長治)/スカーレットと暮す四時間”風と共に去りぬ”に就て(飯島正)/強い女性スカーレット・オハラのこと(村岡花子)/南北戦争映画風の背景について(春山行夫)/「風と共に去りぬ」劇的事件のあらまし

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする