飛行機事故により、誤って天国に召されてしまったボクサーのジョー(ロバート・モンゴメリー)。天国の係官ジョーダン(クロード・レインズ)は、何とかジョーの魂を現世に戻そうとするが、ジョーの肉体はすでに火葬にされていた。仕方なくジョーは、妻と愛人に殺された大富豪を身代わりの肉体として現世に復活するが…。
大好きなこの映画を再見。何度見ても、原案ハリー・シーガルのアイデアの素晴らしさと、それを一本の映画として仕上げたスタッフ、キャストに拍手を送りたくなる。特に天国の係官ジョーダン役のレインズ、その相棒のエドワード・エバレット・ホートン、ジョーのトレーナー役のジェームズ・グリーソンなど、脇役のうまさが光る。原題は『Here Comes Mr.Jordan』だから、真の主役は実はジョーダンなのかもしれない。ジョー役のモンゴメリーは、テレビドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ=エリザベス・モンゴメリーのお父さんだ。
ところで、この映画の弱点は、ジョーが別の人物に乗り移っても外見が変わらない、つまりモンゴメリーが一人で何役もこなす点にあると思っていたのだが、あえてそうしたのは、魂の不滅を訴えたかったからなのだと気づいた。『Leonard Maltin's Movie Guide』によれば、「主人公のモデルは、飛行機事故で亡くなった名優ウィル・ロジャースで、この映画には、彼が生き帰ってくれたら…という思いが込められている」とのこと。ウォーレン・ベイティが監督、主演したリメーク版の『天国から来たチャンピオン』(78)の主人公の職業はアメフトの選手に変わったが、この精神は引き継がれていた。
【今の一言】他に“天国物”としては、死後の世界にやってきた男(ドン・アメチー)が、閻魔大王を相手に自らが歩んできた人生を語る、エルンスト・ルビッチ監督の『天国は待ってくれる』(43)や、第二次世界大戦中の天国と地上を舞台に、天国側のミスで生き残った一人の英国軍パイロット(デビッド・ニーブン)をめぐる騒動を描いた、マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督の『天国への階段』(46)もある。フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』(46)も、この範疇に入るか。どれもいい映画だ。
ロバート・モンゴメリーのプロフィール↓
クロード・レインズのプロフィール↓