田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『昭和シネマ館 黄金期スクリーンの光芒』(紀田順一郎)

2019-01-22 17:53:28 | ブックレビュー


プロローグ…焼け跡に立ち並んだ夢の殿堂
昭和26年…小津安二郎の早すぎる離陸 同時代から見た『麦秋』『東京物語』『お早よう』
昭和26年…乾いた街を潤したシネ・ミュージカル 『アニーよ銃をとれ』から『雨に唄えば』に見るアメリカの夢と情熱
昭和27年…敗北を認めない戦後型ヒロイン 『風と共に去りぬ』とメロドラマの真実
昭和28年…ヒーロー、一度去ってまた還らず 西部劇『シェーン』の語り残された謎とは
昭和28年…空想科学映画の黎明期 『宇宙戦争』に潜む地上の闇
昭和29年…同時代のベストワンは『二十四の瞳』 『七人の侍』の意外な評価
昭和30年…夜の闇を駆け抜けたフィルム・ノワール 『現金に手を出すな』の戦後型アンチヒーロー像
昭和31年…疾走する裕次郎、戦うグレン・フォード 『太陽の季節』と『暴力教室』の戦後的エネルギー
昭和38年…変容するスリラーの巨匠 『鳥』『マーニー』から解読するヒッチコックの迷宮
エピローグ…スターの花々が開き、世界が魅惑された ヘップバーンとモンローの知られざる真実

 評論家、作家としても著名な著者が、自身のコレクションである当時のパンフレットの写真をちりばめながら、1950年代の映画黄金時代のさまざまな映画と出来事を解読していく。その時代をリアルタイムで体験した人にしか書けない生々しさが強みだ。特に『シェーン』とジョンソン群戦争の関係について論じた章が印象に残った。もし自分がこういうものを書くとしたら、やはり70~80年代の映画についてになるだろう。
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『甦る熱球』

2019-01-22 12:12:40 | 1950年代小型パンフレット
『甦る熱球』(49)(1996.10.27.)



 ジェームス・スチュワートが、事故で片足を失いながら奇跡のカムバックを果たしたピッチャーを演じた映画を22年ぶりに再見。監督は、ニューヨーク・ヤンキースの至宝ルー・ゲーリッグ(ゲーリー・クーパー)の半生を描いた『打撃王』(42)も撮ったサム・ウッド。

 モンティ・ストラットン。1912~82年(享年70)。1934~38年、シカゴ・ホワイトソックスに在籍した右投げ右打ちの投手。メジャーリーグ通算36勝23敗。ニックネームはガンダ―=ガチョウ。

 以上が『ベースボール・エンサイクロペディア』から得た、この映画の主人公についての情報。猟銃の暴発で右足を切断する直前は、2年連続で15勝を挙げている。いわば投手としての全盛期に事故に遭ってしまったわけだ。

 この映画が、事故後、10年たってから作られたあたりに、ハリウッド映画お得意の“ストーリー発掘”の見事さを感じずにはいられないが、実際にストラットンが示した“奇跡の復活”が映画製作のきっかけになったのは間違いない。まさに事実は小説より奇なりである。

 ストラットンを演じたスチュワートの投球フォームは、無理に長身を折り曲げるような、やや変則的なもので、お世辞にもメジャーの一流投手のそれには見えないが、意外に伸びのある球を投げていたことを今回発見した。彼は、後年の『戦略空軍命令』(55)でも、セントルイス・カージナルスの三塁手を演じている。

 妻役のジューン・アリスンがキャッチボールの際に、球を受けながら後ろに吹っ飛ぶのは、ちと大げさにしても、彼女もきちんと球を受け、きちんと投げ返していたところに、後の『プリティ・リーグ』(92)の萌芽を見た気がしたし、この2人が作り上げた温かい夫婦像には、強固なイメージがあると改めて感じた。

ジェームズ・スチュワートのプロフィール↓


ジューン・アリスンのプロフィール↓




 【今の一言】この映画を見ると、片腕の大リーガー、ピート・グレイやジム・アボットのことを思い出す。パラリンピックなどと違うのは、彼らがプロの健常者と一緒にプレーしたという事実だ。グレイの半生は『ア・ウィナー・ネバー・クワイエット=片腕のヒーロー・大リーグへの道』(86)としてドラマ化され、キース・キャラダインがグレイを演じたが、ちゃんと片腕で打ったり守ったりしていたのには驚いた。
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『コマンチェロ』

2019-01-22 07:58:36 | 1950年代小型パンフレット
『コマンチェロ』(61)(2012.9.2.)



 初めてこの映画をテレビで見たのは、中学生の時だから、かれこれ40年近くも前の話になる。タイトルのコマンチェロとはインディアンのコマンチ族に武器を売りつける白人の商人のこと。ジョン・ウェイン=デュークはテキサスレンジャーで、隠密みたいな役。相棒にしたスチュアート・ホイットマンと共に悪徳商人の巣窟に潜入し、最後はこれを壊滅させる。今となっては、たくさんのインディアンを撃つ場面が気に入らない、という人が多いかもしれない。

 さて、この映画は『カサブランカ』(42)などを監督したマイケル・カーティスの遺作ということになっているけれど、途中から、体調不良のカーティスに代わってデュークが監督をしたといううわさもある。CGではない、馬を使ったアクションや、遠景で映される風景もいい。脇役時代のリー・マービンをはじめ、ブルース・キャボット、ジャック・イーラム、マイケル・アンサラ(歌手の水原弘に似ている)なんて脇役たちが活躍するのも楽しい。

 ところで、アイナ・バリンが演じたメキシコ女性の名前はピラーだったが、これは当時のデュークの奥さんと同じ名前だ。実はデュークの3人の奥さんは皆ラテン系なのだ。この映画には息子のパットも出ているから、色んな意味で、デュークの好みが反映された映画だと言えるのかもしれない。

ジョン・ウェインのプロフィール↓

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