『地上より永遠に』(53)(1982.7.18.)
舞台は1941年、日本軍の真珠湾攻撃前のハワイ。ホノルル基地に赴任してきたラッパ手のプルー(モンゴメリー・クリフト)は、上官に逆らったことから孤立無援となる。彼をかばったアンジェロ(フランク・シナトラ)は営倉入りとなり、残忍な主任(アーネスト・ボーグナイン)に虐待死させられる。
アメリカ版の『人間の条件』とでも言おうか、軍隊の矛盾や非人間的な行為が、いかにもフレッド・ジンネマンらしい、細かい描写の積み重ねの中で描かれる。
この映画が作られたのはちょうど朝鮮戦争の頃。従って、第二次大戦前夜を描きながら、その影響が感じられるところがある。例えば、軍隊にいじめ抜かれたプルーが、それでもラスト近くで吐く「アメリカ軍は世界一…」というセリフに象徴されるように、戦争そのものは良くないが、アメリカは正しい、とするところが感じられなくもない。それがちょっと残念ではある。
とは言え、決して硬いばかりの映画ではなく、バート・ランカスターとデボラ・カーの砂浜での激しいラブシーン、クリフトとドナ・リードが演じる悲恋、クリフトとシナトラ、あるいはランカスターとの友情、ボーグナインの見事な憎まれ役ぶり、クリフトが吹くトランペットの音色の使い方など、映画的な見せ場がだっぷりと用意されている。こうした構成と出演者たちの好演があればこそ、この映画は今でも名作として残っているのだろう。
【今の一言】当時は気付かなかったが、後に、この映画が赤狩りの嵐の中で作られていたことを知り、改めてジンネマンらの勇気を感じた。
フレッド・ジンネマン&フランク・シナトラ&ドナ・リード
バート・ランカスター
デボラ・カー
『名画投球術』いい女シリーズ4「正真正銘の“美女”が観たい」デボラ・カー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/be594f2a790e1b4a23a8b68236557b94
モンゴメリー・クリフト
ドナ・リード
フランク・シナトラ
アーネスト・ボーグナイン
パンフレット(53・外国映画社)の主な内容
解説/物語/真実を衝いた傑作 ジンネマンの無技巧の技巧(原安佑)