田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『完全試合-15人の試合と人生』『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』

2022-04-10 23:32:19 | ブックレビュー

 佐々木朗希の完全試合を見て、思い出した本。彼の場合は、運や偶然がほとんど感じられなかったのがすごかった。

『完全試合-15人の試合と人生』(北原 遼三郎)東京書籍
(1994.2.14.)

 完全試合。それはどう達成され、それを行ったピッチャーは、その後の人生をどう生きたか。藤本英雄から槙原寛己まで、全国に取材を敢行したノンフィクション。

 偶然見掛けた新聞記事によってこの本と巡り合ったのだが、少々うがった見方をすれば、去年(94年)の槇原(巨人)の完全試合がなければ、日の目を見なかった企画だったのかもしれない。

 とはいえ、内容的には、槇原以前に完全試合を達成した14人への取材だけでも、十分なものがあった。そこには、完全試合とは、ちょっとした運や偶然の積み重ね、巡り合わせ、人生の綾などが微妙に絡み合って始めて起こる一種の奇跡だということが書かれ、達成者各々のその後の人生に与えた意味にまで迫っていたからだ。

 加えて、この筆者は野球をよく知っていると感じさせるような、試合経過の描写が見事で、それだけでも読み応えがあった。筆者にとっては、地道な取材から出版へとつながるきっかけとなった槇原の完全試合こそが、奇跡の出来事だったといえるのかもしれない。

完全試合を描いた映画『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/22d17e0ac185bc365f650deda217a5ce

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佐々木朗希の完全試合を見た!

2022-04-10 22:49:15 | スポーツ

「ロッテ6-0オリックス」(千葉マリンスタジアム)

 ぽかぽか陽気に誘われて、急に思い立って、妻と一緒に千葉マリンスタジアムへ、ロッテ対オリックス戦を見に行った。ロッテは佐々木朗希の先発ということで、いいピッチングが見られるかもしれないとは思った。

 ところが、佐々木の出来はこちらの予想を遥かに超え、コントロールも抜群で、160キロ台のストレートと140キロ台後半の高速フォークとのコンビネーションで奪三振ショーを繰り広げた。オリックスの打者がかろうじて当てた球もほとんど前には飛ばず、ファールになるばかり…。高卒ルーキーの松川のリードも冴え、結局、13打者連続三振の日本新記録を達成し、一試合19奪三振の日本タイ記録を樹立。そして、何と完全試合=パーフェクトゲームまで達成したのだ。

 完全試合の一部始終を目の前で見ることができて、こちらは大興奮なのに、当の佐々木はケロッとしているというか、すごいことをしでかした張本人が一番落ち着いているのだから恐れ入った。そして9回でも160キロを出すのだからこれにも恐れ入った。

 自分は、例えば、子どもの頃は、長嶋さんの通算2000本安打(1971.5.2.神宮球場)、王さんのホームラン世界記録(1977.9.3.後楽園球場)を生で見ることができ、最近では、菊池涼介のプロ入り初ホームラン(2012.8.21.MAZDAスタジアム広島)や、鈴木誠也のプロ入り初ホームラン(2014.9.25.神宮球場)を生で見た。野球観戦に関しては比較的ついている方だと思うが、その中でも今日の出来事は群を抜く。いゃあ、すごいものを見せてもらいました。

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『大河への道』

2022-04-10 08:28:20 | 新作映画を見てみた

『大河への道』(2022.3.8.松竹試写室)

 千葉県香取市役所は、地域の活性化を図るため、初めて日本地図を作った郷土の偉人・伊能忠敬を主人公にした大河ドラマ制作のプロジェクトを立ち上げる。

 だが、脚本準備の最中に、忠敬が地図完成の3年前に亡くなっていたという事実が発覚する。一方、1818年の江戸では、亡くなった忠敬の志を継いだ弟子たちが、地図を完成させるべく秘策を講じていた。

 立川志の輔の創作落語「伊能忠敬物語 大河への道」を、中西健二監督、森下圭子の脚本で映画化。企画兼任の中井貴一をはじめ、松山ケンイチ、北川景子らのキャストが二つの時代で一人二役を演じ、現代を舞台に繰り広げられる大河ドラマ制作の行方と、200年前の日本地図完成に至る秘話を描く。

 本来の主役たる伊能忠敬は一切姿を見せず、後を継いだ無名の測量隊員たちが、地図作りに奮闘する様子から、見えない主役=忠敬を浮かび上がらせるという手法。忠敬の死を3年秘すとは、武田信玄と同じ。信玄の死後を描いた黒澤明の『影武者』(80)を思い出した。

 ちなみに、中井が演じた高橋景保は、後に、国禁である日本地図などを日本国外に持ち出そうとして発覚した「シーボルト事件」に関与して獄死する。その事実を知ってこの映画を見ると、さらに感慨深いものがある。

 志の輔は、偶然訪れた佐原の「伊能忠敬記念館」で目にした「大日本沿海興地全図」に驚き、落語を創作したらしいが、自分も同じ体験をしたので、その動機はよく分かる。この映画でも、江戸城の大広間で同図が披露された様子が再現されているが、まさに圧巻だった。

 この素晴らしい地図を制作した無名の人々にスポットを当てたところが、この映画(落語)の核になる。

佐原『うなぎ』『伊能忠敬―子午線の夢』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0a7d2096c5cd43915969275f17f1f44d 

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ビデオ通話で西部劇談議『夕陽に向って走れ』

2022-04-10 00:01:05 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 今回のお題は『夕陽に向って走れ』(69)

幾つか落穂拾いを

  『明日に向って撃て!』と同年に製作されたニューシネマ西部劇。撮影はどちらもコンラッド・ホール。当時キャサリン・ロスの恋人だったからか、両作とも彼女を目いっぱい美しく撮っているように見える。

 監督のエイブラハム・ポロンスキーは赤狩りでブラックリストに載り、長い空白を経ての監督作ということで、赤狩りへの怒り、差別、デマが広がるさま、被害者意識といったものを、この映画の主人公ウィリー(ロバート・ブレイク) に仮託して描いたのだろうと思われる。

 この映画のプロデューサーのジェニングス・ラングは、1951年、彼と妻のジョーン・ベネットとの不倫を疑った『駅馬車』(39)のプロデューサーのウォルター・ウェンジャーに銃で脚を撃たれた。

 スーザン・クラークは、ラングがプロデュースした「エアポート」シリーズに、ジョージ・ケネディの妻役で連続出演。ラングのお気に入りだったのか。

 ロバート・ブレイクはイタリア系で、子役時代は『黄金』(48)などに出演。この映画のほかにも、『冷血』(67)やテレビシリーズの「刑事バレッタ」などで活躍したが、2002年に妻の殺害容疑で逮捕された。

 最近、この映画が描いた実際の事件を基に、ジェイソン・モモアが脚本を書き、出演した『The Last Manhunt』が完成したようだ。50年の間に、この事件に関する意識がどう変わったのか。とても興味がある。

「BSシネマ」『夕陽に向って走れ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b565d5a16f9fe67ea15cfbc3f6803978

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