『ベルイマン島にて』(2022.4.18.オンライン試写)
アメリカ人の脚本家カップル、トニー(ティム・ロス)とクリス(ビッキー・クリープス)は、新作のインスピレーションを得るため、イングマール・ベルイマン監督ゆかりの地である、スウェーデン・フォーレ島に滞在する。
トニーの執筆は順調だが、クリスはなかなか作業が進まない。思いあまったクリスは、アドバイスを求めるため、自分が書いた脚本をトニーに説明するが…。
風光明媚なフォーレ島を舞台に、監督カップルの現実と、ミア・ワシコウスカ主演の劇中映画『ホワイトドレス』、そして現実と映画の狭間が交錯する。ミア・ハンセン・ラブ監督が、かつてパートナーだった、オリビエ・アサイアス監督との関係を投影させて描いたのだという。
面白かったのはベルイマン映画への言及だ。例えば、『ある結婚の風景』(73)は「あれを見て離婚する人が続出した」、『叫びとささやき』(72)は「カタルシスを得られないホラー映画」といった具合。
タイトルが出てくるのは、『不良少女モニカ』(53)『第七の封印』(57)『処女の泉』(60)『鏡の中にある如く』(61)『冬の光』(62)『沈黙』(63)『仮面/ペルソナ』(67)『狼の時刻』(68)『恥』(68)『ファニーとアレクサンデル』(82)『リハーサルの後で』(84)『サラバンド』(03)…。
さらにその作風については、「ベルイマンは人生も作品も残酷だ」「楽しい作品なんてない」「彼は明るさなんかに興味がなかった。暗さの追求が楽しかったんだろう」「どんなに悲しくてつらい映画を見ても、結局はためになるけど、彼の作品は傷つくだけ」など、ある意味ボロクソである。ただし、こうも言う。「でも、なぜか分からないけど、彼の映画が好きだ」と。
そうしたセリフを聞きながら、この監督は本当にベルイマンの映画が好きなのか? と少々疑問に感じたが、自らの体験を反映にさせた映画に、ベルイマンに対する思いを乗せたこの映画は、究極の“私映画”のようなものだとも思った。ベルイマンを知らなかったり、興味がない人の目には一体どう映るのだろうか。
まるで聖地巡礼のような、ベルイマンゆかりの場所をバスでめぐる“ベルイマンサファリ”があるとは驚いた。