田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『要塞警察』

2020-09-26 13:02:11 | ブラウン管の映画館

 今日のBSシネマはジョン・カーペンター監督の『エスケープ・フロム・L.A.』(96)。メモが残っていなかったので、その代わりに、

『要塞警察』(76)(1987.6.7.)

 移転を間近に控えた警察署に、ストリートギャングに追われた男が逃げ込んでくる。ギャングたちは警察署を完全包囲。黒人警官は、わずかな署員と署に収容されていた凶悪犯と協力し、ギャングたちに立ち向かう。

 この映画は、ハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』(59)を下敷きにしているという。なるほど、大人数に少人数が立ち向かう戦いの面白さやスピード感はちゃんと踏襲して、上出来な映画に仕上げていると思った。

 加えて、これがジョン・カーペンターのデビュー2作目と聞けば、ニューシネマ以降の監督たち(スピルバーグ、ルーカス、ミリアス、デ・パルマ…)の、先達を尊敬し、模倣しながら、自分なりの形にして、新たな映画を作り出すという共通性が浮かんでくる。彼らが、旧作を否定することをエネルギーとし、時代に敏感だったニューシネマの波を越えていったのだ。

 その意味でも、この映画はジョン・カーペンターという監督の資質を知るには外せない一本だと言えるだろう。オースティン・ストーカーが演じたタフな主人公は、『ニューヨーク1997』(81)『遊星からの物体X』(82)のカート・ラッセルに通じるし、得意のバイオレンス描写のルーツもここにある、と言ってもいいだろう。いずれにせよ、ある監督の初期の映画というのは、いろいろと勘繰りたくなるものらしい。

【今の一言】カーペンターは、よっぽど『リオ・ブラボー』が好きとみえ、この映画のほか、火星を舞台とした『ゴースト・オブ・マーズ』(01)、セルフリメークの『アサルト13 要塞警察』(05)と三度リメークしている。

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『追憶映画館 テアトル茜橋の奇跡(伴一彦)

2020-09-25 11:09:08 | ブックレビュー

 名作映画をモチーフに、焼失した映画館と、映画で結ばれた人々を描いた連作短篇集。登場する映画は 『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)『レオン』(94)『ハチ公物語』(87)『マディソン郡の橋』(92)『小さな恋のメロディ』(71)『愛と喝采の日々』(77)『ローマの休日』(53)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)
 
 金城一紀の『映画篇』や、原田マハの『キネマの神様』と同様の、「映画と映画館が起こす奇跡」という題材を、手練れの脚本家が書くとこうなるのか、という感じがした。題材となった映画の選択は、自身の思い入れの強さからではなく、話にしやすいものを選んだような印象を受けたからだ。

 だから、確かに、一気に読ませるうまさはあるのだが、作者自身が“映画は人生を変える”と信じながら書いたと思われる前者2編に比べると、映画への愛よりも、作為や便宜的なものを強く感じてしまうところがあった。

『キネマの神様』(原田マハ)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8028269b0cf5e5baa9d099d34fda3589

若い人が書いた映画館を舞台にしたライトノベルもある。

『古書街キネマの案内人 おもいで映画の謎、解き明かします』(大泉貴)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6d97b5672a79cf2dd48c688097bd7e6e

『名画座パラディーゾ 朝霧千映のロジック』(桑野和昭)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/beb69a8ba3e1c71f008eb5955dd5a974

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『DESTINY 鎌倉ものがたり』「金曜ロードショー」

2020-09-25 07:14:36 | ブラウン管の映画館

 今日の「金曜ロードショー」は、監督、脚本の山崎貴をはじめ、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのチームが、再び西岸良平の漫画を映画化した『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)。田中泯の貧乏神がなかなか良かった。

【ほぼ週刊映画コラム】『DESTINY 鎌倉ものがたり』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1d02b056247284d42b5301a6160edd6

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『大いなる西部』

2020-09-25 07:02:58 | 1950年代小型パンフレット

『大いなる西部』(58)(2012.10.17.鎌倉市川喜多映画記念館)



 一時期、妻と共に「お気楽映画談議」というブログをやっていた。その時の記事から。

 夫…この映画の主人公はグレゴリー・ペック扮する東部から西部にやって来たマッケイ。ところが、本来ヒーローであるはずの彼の行動や言動が何だか身勝手に見えて感情移入ができないんだな。むしろ彼と敵対するチャールトン・ヘストン演じる西部の牧童頭リーチの方が魅力的だし、行動や心情にも一本筋が通っている。というわけで、この映画はヒーロー西部劇としてはちょっと異端なんだね。プロデューサーも兼任したペックが、あえて自分を損な役回りにしたのだとすれば、それはそれですごいと思うけど…。

 妻…初めて見た時はペックのさわやかさにやられてしまいましたが、今回は違ったぞ。マッケイの空気読めなさ加減にうんざり。人の忠告を聞かない、自分が大好きな男なんだから。

 夫…この映画はペックVSヘストンというヘビー級の対決に加えて、水源地をめぐるバール・アイブスとチャールズ・ビックフォードの旧世代の親父同士の対決、マッケイを間に挟んだジーン・シモンズとキャロル・ベイカーの女同士の対決が描かれているけど、そんな中、一人で右往左往するチャック・コナーズのドラ息子も結構いいんだよね。

 妻…チャック・コナーズのダメダメぶりがかわいいです。

 夫…後は、対立する両家の間をひょうひょうと渡り歩く牧童を演じたメキシコ人俳優のアルフォンソ・ベドヤがいいね。彼はジョン・ヒューストン監督の『黄金』(48)などにも出ていた名脇役だけど、残念ながらこの『大いなる西部』が遺作なんだね。

 妻…そんな人いたっけ? 毎度、顔と名前が一致せん。『黄金』は私のベスト映画の一本ですが…

 夫…ペックが乗る荒馬の世話をしていて、ラストでペックとシモンズと共に馬に乗って去っていく彼だってば。

 夫…この映画の日本公開当時(1958)の批評を読むと「ウィリアム・ワイラー監督の横綱相撲」なんてことが書いてあって、すこぶる評判がいい。寂しいことに、今やワイラーの名前は、オードリー・ヘプバーンの『ローマの休日』(53)の監督としてしか語られないところがあるけれど、当時は巨匠中の巨匠という存在だったんだよね。

『これぞ映画遺産!!次世代に残したい名作映画96』 


パンフレット(58・松竹事業部(SHOCHIKU KAiKAN CENTRAL THEATRE 1959 NO33.))の主な内容は
「大いなる西部の六人」「大いなる西部」印象的の場面/ルファス・ヘネシイ/激闘シーンに実に十四時間を費やす/物語/出演者の横顔/大いなる西部に就いて(南部圭之助)/ウィリアム・ワイラー大河監督とその足跡/西部劇の歴史・西部劇百科(南圭生)

 

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『ベスト・キッド』

2020-09-24 07:18:43 | ブラウン管の映画館

『ベスト・キッド』(84)(1985.2.25.丸の内東映パラス)

『ベスト・キッド2』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b67f9fa3802f75547aaa1a263c6c0e2a

『ベスト・キッド4』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/31c712200e08cf8cb6fc612f644ce338

ジャッキー・チェン主演のリメーク作も作られた。

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『メガスネーク』

2020-09-22 09:25:41 | ブラウン管の映画館

『メガスネーク』(07)

 テネシーに住むダフは、太古にこの土地を支配したという邪悪なヘビ「アンテカ」の子供を飼うネイティブアメリカンと知り合う。彼によれば、「容器から出すな」「生きた餌を与えるな」「ヘビを恐れるな」という三つのルールさえ守っていれば封印が守られ、平穏が保たれるという。

 伝説に魅了されたダフは、その小さなヘビを奪って逃走するが、ルールを守れず、封印を解いてしまう。小さかったヘビは、みるみる巨大化し、驚異的な破壊力で人間に襲いかかる。

 当方、ヘビは大の苦手で見るのも嫌なのだが、このアンテカやアナコンダまで巨大化すれば、リアルではないのでモンスターものの一種として見ることができる。それにアメリカの南部が舞台になると、どこか西部劇を感じさせるものがあったりもして…。

 それにしても、一連のサメ映画もそうだが、よくもまあこんなばかばかしい映画を作るものだと感心するやらあきれるやら。でも、それに茶々を入れながら楽しんで見ている自分もどうかと思う。三つのルールは『グレムリン』(84)のパロディか。

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『エイリアン2』

2020-09-22 07:19:48 | ブラウン管の映画館

『エイリアン2』(86)(1987.3.30.新橋文化.併映は『サンダーアーム/龍兄虎弟』)

 ノストロモ号の惨劇から57年、地球に戻ったリプリー(シガーニー・ウィーバー)は、住民からの連絡が途絶えた惑星に向け、海兵隊とともに旅立つ。着陸した惑星には無数のエイリアンが。リプリーは生存を懸け、壮絶な戦いに巻き込まれていく…。

 ジェームズ・キャメロン監督の迫力満点のアクション演出で、前作とは違った魅力を持った傑作となった。アカデミー視覚効果賞、音響効果賞受賞。

 とにかく、最後の最後までサービス満点で見る者を飽きさせない。見る前に気になっていた「今度は戦争だ!」なる、過激な宣伝文句にも、なるほどとうなずかされるだけのパワーもあった。何より、久しぶりにオリジナルを越えた続編に出会えたことがうれしかった。

 オリジナルは、なかなか登場しないエイリアンを目玉にしていたのだが、この映画はその逆、つまり複数のエイリアンを嫌というほど登場させたのだ。そうした、続編としては損な方法を取りながら、単なる見世物に終わらせない構成が見事だった。そして、実はこの映画の隠れテーマは、リプリーとエイリアンとの母性の闘いなのではないかとも思った。

 加えて、オリジナルよりもさらにたくましくなって帰ってきたウィーバーの奮闘ぶりやタフさにも驚くべきものがあったが、この映画がオリジナルを超えた際たる理由は、少女を救う愛であり、オリジナルの会社の手下の人造人間とは違うものを登場させ、人間との温かい交流を描いた点にある。いくら過激な映画でも、その奥にはやはり愛や温かさがなければ救いがない、と思うのは甘いだろうか。

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「リンゴ・スター and ヒズ・オールスターバンド ライブ・イン・ロサンゼルス 2019」

2020-09-22 00:51:16 | ビートルズ

 1989年に武道館で見た、第一期のメンバーはもう誰もいなかった。あの時は、リンゴやオールスターバンドの弱点ばかりが目に付いて、素直に喜べなかったのだが、30年の時を経て、改めて見ると、これはこれでヒットパレードみたいで楽しいと思えた。

 今回のメンバーは、スティーブ・ルカサー(TOTO)、コリン・ヘイ(メン・アット・ワーク)、グレッグ・ローリー(サンタナ/ジャーニー)、ヘイミッシュ・スチュアート(アベレージ・ホワイト・バンド/ポール・マッカートニー・バンド)、グレッグ・ビソネット(デビッド・リー・ロス)、ウォーレン・ハム(カンサス)。

 ルカサーが弾くサンタナのナンバーが見事だったし、何と言っても、79歳のリンゴが元気いっぱいで、歌もうまくなっていたのには驚いた。そして、スチュアートは、これでポールとリンゴのバックを務めたことになる。

 最後に、第一期のメンバーだったジョー・ウォルシュ、ジム・ケルトナー、ニルス・ロフグレンたちも登場してきての「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・マイ・フレンズ」の大合唱は、感動的ですらあった。

「マッチボックス」「明日への願い」リンゴ
「エビル・ウエイズ」ローリー
「ロザーナ」ルカサー
「ピック・アップ・ザ・ピーセズ」スチュアート
「ダウン・アンダー」ヘイ
「ボーイズ」「ドント・パス・ミー・バイ」「イエロー・サブマリン」リンゴ
「ブラック・マジック・ウーマン」「ジプシー・クイーン」ローリー
「ユア・シックスティーン」「アンセム」リンゴ
「オーバーキル」ヘイ
「アフリカ」ルカサー
「僕のリズムを聞いとくれ」ローリー
「彼氏になりたい」リンゴ
「ノックは夜中に」ヘイ
「ホールド・ザ・ライン」ルカサー
「想い出のフォトグラフ」「アクト・ナチュラリー」「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」リンゴ
「平和を我等に」 

「リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンド1989」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/14a766a31084cf05165ba9771f78bb6e

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『スペシャリスト』

2020-09-21 14:57:58 | ブラウン管の映画館

『スペシャリスト』(69)

 大金強奪の濡れ衣をきせられ、縛り首になった兄の仇を討つため、単身無法の街に乗り込むガンマンの活躍を描く。監督は『続・荒野の用心棒』(66)『殺しが静かにやって来る』(69)『ガンマン大連合』(70)などのセルジオ・コルブッチで、伊、仏、モナコ、西独の合作という多国籍映画。コルブッチ映画らしく、ここでも主人公を徹底的に痛めつけ、肉体に欠陥を負わせている。

 「フランスのエルビス・プレスリー」とも称された人気ロック歌手ジョニー・アリディが主演し、ガストーネ・モスキン、フランソワーズ・ファビアン、マリオ・アドルフといった個性的な俳優が脇を固めている。

 知り合いがこの映画に関するいいコラムを書いていた。
巨匠コルブッチの作家性を語るうえで重要なマカロニ西部劇の佳作
https://www.thecinema.jp/article/902

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『エイリアン』

2020-09-21 09:28:26 | ブラウン管の映画館

『エイリアン』(79)(1979.12.28.蒲田パレス座.併映は『スーパーマン』)

 謎の信号を受信し、調査に向かった貨物船ノストロモ号の乗組員たち。着陸した惑星で発見した宇宙船の残骸にあった卵から未知の生物が飛び出し、乗組員の一人に寄生する。それが惨劇の始まりだった。

 次々に変態し、人間を襲う恐怖の生物・エイリアンの不気味なビジュアルと、スタイリッシュな映像が評判に。リドリー・スコット監督、ヒロインを演じたシガーニー・ウィーバーの出世作となった。

 キャッチコピーは「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」。SFというよりも、ゲテモノ密室劇の傑作といった感じ。特にエイリアンが腹から飛び出す場面は圧巻。火事場の馬鹿力じゃないが、いざとなると女の方が強いのか。

【今の一言】リドリー・スコット監督作は、この映画といい『ブレードランナー』(82)といい、公開当時はB級扱いだったものが、後年評価が上がる傾向がある。

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