田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『フラッド』

2020-11-26 08:11:53 | ブラウン管の映画館

『フラッド』(98)(2006.11.4.木曜洋画劇場)


 大雨による大洪水で沈みかけたアメリカの田舎街を舞台に、現金輸送車運転手と強盗グループ、そして地元の保安官グループが大金をめぐって激しい攻防戦を繰り広げる。

 タイトルのフラッドは洪水の意味だが、原題は「ハード・レイン=大雨」だから、微妙にニュアンスが異なるのだが、水を利用したアクションが全編にあふれてなかなか面白い。

 閉ざされたアメリカの田舎街を舞台にした傑作B級アクションとしては、パニックの形は違うが『トレマーズ』(90)を思い起こさせるところもある。

 監督は撮影出身のミカエル・ソロモン。同じく撮影出身のヤン・デ・ボンが竜巻映画『ツイスター』(96)を撮り、このソロモンが洪水映画を撮った。やはり撮影監督はこういう映画に魅かれるのか?

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『アルカトラズからの脱出』

2020-11-26 07:32:03 | ブラウン管の映画館
『アルカトラズからの脱出』(79)(1983.11.6.日曜洋画劇場)
 
 
 1960年。脱獄不可能とされるサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島の刑務所に、脱獄の常習犯フランク・モリス(クリント・イーストウッド)が収監される。フランクは冷酷な所長のウォーデン(パトリック・マクグーハン)と対立するが、大胆不敵な脱獄計画を企てる。
 
 イーストウッドとの名コンビで知られるドン・シーゲル監督が、実話を基に描いた刑務所もの。絵描きのドク(ロバート・プロッサム)、ネズミをペットにしているリトマス(フランク・ロンジオ)、黒人のイングリッシュ(ポール・ベンジャミン)、フランクと共に脱獄するチャーリー(ラリー・ハンキン)、クラレンス(ジャック・チボー)、ジョン(フレッド・ウォード)ら、渋い脇役たちの存在も見逃せない。 
 
 アルカトラズ刑務所を舞台にした映画には、実際に起きた刑務所内の暴動を基に、バート・ランカスター主演で描いた『真昼の暴動』(47)、同じくランカスターが、収監中に鳥類の権威となった実在の囚人に扮した『終身犯』(62)、アルカトラズを閉鎖に追い込んだ囚人と弁護士との友情を描いた『告発』(95)、アルカトラズ島を占拠したテロリスト集団との闘いを描いた『ザ・ロック』(96)などがある。
 
 ところで、この映画の中に、こんな面白いやり取りがあった。古参の囚人が新入りのフランクに「How are the Brooklyn Dodgers doing?=ブルックリン・ドジャースの調子はどうだい?」と聞くと、フランクが「Moved to L.A, two years ago=2年前にロスに移ったぜ」と答える。あ然とする古参…。ドジャースがロサンゼルスに移ったのは1958年だから、これはまさにタイムリーな話題であり、アメリカでの野球の身近さを示すシーンとして印象に残った。
 
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【インタビュー】『記憶の技法』石井杏奈

2020-11-26 06:10:03 | インタビュー

 吉野朔実原作の同名漫画を、池田千尋監督、脚本・高橋泉で映画化した『記憶の技法』が、11月27日から公開される。本作で自分探しの旅をするヒロイン華蓮を演じた石井杏奈に話を聞いた。

「自分も華蓮と一緒に旅をした気分になって、自然と成長していけたと思います」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1250851

『記憶の技法』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0fbacc7ecce0ef923967fb65c62a5b7d

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『映画の森』『古関裕而と「モスラの歌」』転載

2020-11-25 12:56:09 | 映画の森

「KyodoWeekly」9月27日号から『古関裕而と「モスラの歌」』共同通信のニュースサイトに転載。
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-11-25_3344713/

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『シャレード』

2020-11-25 07:10:08 | ブラウン管の映画館

『シャレード』(63)(1976.11.19.ゴールデン洋画劇場)

 休暇中のスキー場で夫との離婚を決意したレジーナ(オードリー・ヘプバーン)は、ピーター(ケーリー・グラント)と出会い、心引かれる。パリのアパートに戻ったレジーナは、夫が殺されたことを警察から知らされる。不気味な男たち(ネッド・グラス、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディ)が葬儀に現れ、不安を感じたレジーナはピーターに助けを求めるが、アメリカ大使館のバーソロミュー(ウォルター・マッソー)から、夫の正体と彼らとの関係を知らされる。

 スタンリー・ドーネン監督のコメディータッチの傑作ミステリー。オードリーの相手役にグラントを起用したこともあり、ヒッチコック色を強く感じさせながらも、多彩な脇役陣のおかげで、誰が犯人なのかが絞れず、最後まで楽しませてくれる。音楽はヘンリー・マンシーニ。ジバンシー提供の華麗なファッションも見どころ。

 「シャレード」には、ジェスチャーで表す言葉、偽装や見せ掛けという意味があるらしい。ちなみに、我が街・金町にある純喫茶「シャレード」の店名は、この映画から取られたのではないかと思っている。

『名画投球術』いい女シリーズ2「ちゃんと観たことありますか?」オードリー・ヘプバーン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f64acdf38588e036985f3da44701ca89

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『映画の森』「“音”が主役のドキュメンタリー映画」転載

2020-11-24 22:55:55 | 映画の森

「KyodoWeekly」10月26日号から「“音”が主役のドキュメンタリー映画」 共同通信のニュースサイトに転載。
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-11-24_3342588/

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『ナイルの宝石』

2020-11-24 06:59:50 | ブラウン管の映画館

『ナイルの宝石』(85)(1989.4.15.)

 このところ、アメリカ映画も日本にならって? やたらとシリーズものを作っているが、時折オリジナルを超えるものを作ってしまうあたりが、さすがはハリウッドだという気がする。

 この映画も、前作『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(84)よりは、多少落ちるものの、ヒロイン、キャスリーン・ターナーの魅力と、脇役のダニー・デビート、アブナー・アイゼンバーグたちが醸し出すおかしさがうまくかみ合って、なかなか面白い映画に仕上がっていた。

 「ロッキー」「ランボー」シリーズのように、オリジナルの良さをどんどん壊してしまうシリーズものは困るが、この映画や「インディ・ジョーンズ」シリーズのように、面白さを保ったものならば、飽きるまで作ってもらってもいい。

 このシリーズの創作者は、女流脚本家のダイアン・トーマスだが、彼女はこの映画の脚本を執筆中に、事故でこの世を去ったとのこと。フィリップ・ド・ブロカを目指していたという若き才能が失われたことは、惜しみてもなお余りあるものがある。

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『ダイ・ハード3』

2020-11-23 10:14:53 | ブラウン管の映画館

『ダイ・ハード3』(95)(1995.6.6.20世紀フォックス試写室)


 この「3」の製作が噂に上り始めた頃、スティーブン・セガール主演の『沈黙の戦艦』(92)が先に作られて、当初の“海のダイ・ハード”という目論見が崩れたマイナスはあったのだが、それを差し引くとしても、この映画の出来はあまりよくない。せっかくジョン・マクティアナンが監督に復帰したというのに…である。

 シルベスター・スタローン主演の「ランボー」シリーズが、主人公をどんどん超人化させ、ストーリーをパワーアップし過ぎて、おかしくなってしまったケースとよく似ている気がする。

 そして、ジェームズ・キャメロンの『トゥルーライズ』(94)同様、破壊やパニックの大げさな描写を見せる方にばかり気を取られて、肝心のストーリーがおざなりになっているのである。

 最初の『ダイ・ハード』(88)が、何故あんなに面白かったのかと言えば、アクションシーンはもとより、等身大の主人公ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が持つ意外性、彼を取り巻く人々との絡み、閉ざされた場所に張りめぐらされた様々な伏線などが、見事だったからだ。言わば、内面の面白さが外面の派手さを食っているところに魅力があったのだ。

 ところが、この映画の超人化したマクレーンには、もはや意外性が持つ面白さはない。そして、ニューヨークという巨大な街が舞台となったせいで、ストーリーも散漫なものになった。

 というわけで、シリーズもの故の悲哀を感じずにはいられないのだが、日本でも、最近、オウム真理教関連のさまざまな事件があっただけに、今までは他人事として見られたこうしたテロの残忍さが、現実的な怖さを持って迫ってくるところがあり、何だか、たかが映画として見られなくなったところもあった。いずれにせよ、このシリーズは、もうこの辺りで打ち止めとした方がいいと思う。


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『居酒屋兆治』

2020-11-23 07:07:36 | ブラウン管の映画館
『居酒屋兆治』(83)(1983.11.23.みゆき座)
 
 
 函館で妻(加藤登紀子)と共に小さな居酒屋「兆治」を営む藤野英治(高倉健)は、別の男(左とん平)と結婚した初恋相手のさよ(大原麗子)への思いを引きずっていた。そんな英治の前に、ある日突然、さよが現れる…。
 
 寡黙で実直だが、不器用な居酒屋の主人と、店に集う常連客(田中邦衛、山谷初男、河原さぶ、平田満、池部良、小松政夫…)のさまざまな人生を、ユーモアと哀感を交えて描く。高倉健・降旗康男監督の名コンビが山口瞳の小説を映画化。惹句は「人が心に思うことは誰も止めることができない」だった。健さんが歌う主題歌「時代遅れの酒場」が耳に残り、伊丹十三がやたらと英治にからむ、しつこくて嫌な男を演じていたのが印象に残っている。
 
 黒澤明監督が『乱』(85)の鉄(くろがね)修理役(井川比佐志)を健さんにオファーしたが、健さんは、この映画の準備と降旗監督への義理を理由に断ったという。『影武者』(80)の勝新もそうだが、健さんの鉄も見てみたかった気がする。
 
“これぞ高倉健”というイメージを作り上げた降旗康男
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85483d84925a696f8b433dd5ed395419
 
健さんのパロディー『小惑星帯(アステロイド)遊侠伝』(横田順彌)と『居酒屋兆治』と『ブラック・レイン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6f4a06115c4de004814e0c49d04a595a
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ビデオ通話で西部劇談議『墓石と決闘』

2020-11-22 07:30:21 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 今回のテーマは、ジョン・スタージェス監督が、自身の『OK牧場の決斗』(57)の後日談を描いた『墓石と決闘』(67)。この映画の原題は「銃の時代」だが、保安官として法に忠実であろうとしながら、弟を殺されたことに対する復讐心を抑え切れないワイアット・アープの葛藤を通して、銃の時代の終焉や、法と無法の境界の時代を描いているとも言えるだろう。

 いわゆる「OK牧場の決闘」とそれに続く出来事は、極端に言えば、アープ一家とクラントン一家の私怨によるけんかに過ぎない。それが、なぜ伝説となり、こうしてたびたび映画化されるのか。その理由は実のところ自分にはよく分からない。 
 
 ただ、例えば日本で言えば、浪曲や講談で語られるうちに、どこまでが史実でどこからがフィクションなのかが定かでなくなった、笹川繁蔵と飯岡助五郎という、江戸時代の二人の侠客の勢力争いを伝えた「天保水滸伝」の「大利根河原の決闘」と重なるところがある。おまけに、この話にはドク・ホリディを思わせる、肺病病みで酒好きの零落の助っ人・平手造酒まで登場するのだ。

 ほかにも『シェーン』(53)を長谷川伸の股旅物と重ねるように、本来は別物であるはずの、西部劇と時代劇との類似性には興味深いものがあるが、結局は、どちらの作劇法も『リバティ・バランスを射った男』(61)の「西部では、伝説が事実となったときは、伝説を記事にする」というセリフに集約されるところが、共通点なのかもしれない。

『墓石と決闘』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e9e508f445d4e9084cd0effc88d04d29

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