

舞台中央から少し右手よりの情景。老夫婦の夕餉どき。
「お爺さん美味しいねえ」「お婆さん美味しいねえ」「お爺さんのお野菜の作り方が上手だからですよ」「お婆さんの料理の仕方が上手だからですよ」その時、
「鬼だー鬼だー暴れん坊の青鬼だー」舞台下手から一匹の青鬼が現れた。青鬼は村人を恐れさせるため叫びながら村中を走り回る。村人は逃げ回る。でも青鬼は村人を虐めはしなかった。
「鬼仲間の恥さらしだ」叫びながら舞台上手から颯爽と赤鬼が登場した。赤鬼と青鬼は舞台中央で取っ組み合いになる。「これでもか、これでもか」と赤鬼は殴りながら「痛くないか」と青鬼に聞き、また殴り続けた。
青鬼はたまらない様子で舞台下手へ退散した。
舞台は笑いと笑顔が一杯だ。村人が赤鬼とその仲間と輪を作り談笑する光景は、村を救ってくれた赤鬼への信頼だった。
「人間と仲良くなりたい」という赤鬼の望みを知り、青鬼は友達の赤鬼のため悪役を装いその望みをかなえさせた。
村人との楽しい日々を送る赤鬼がフト友達を思い出しひと山向こうにある家を訪ねて行った。。
「赤鬼君、いつまでも村人と仲良くしてください。僕は遠くへ行きます。サヨウナラ」と手紙が残されていた。
本当の友達を失った赤鬼が悄然と佇むところで幕が閉まった。
同人代表Oさんのエッセイ集の中に「紙芝居台」がある。その導入に「泣いた赤鬼」の話しが数行載っていた。
小学校4年の終わりの学芸会、その泣いた赤鬼で「青鬼」役をやったことを思い出した。大切な思い出の1つだ。
古いアルバムを見た。56年前の小さな記念写真、熱心に演じ終えた雰囲気そのままがセピア色の中に包まれていた。50数名のうち名前と顔の分かる先生と同級生、そうでない人が多い。写真から「岩国小学校創立80周年」の記念すべき年だったことを知った。
古いアルバム、当時は写真が貴重品だった。その1枚1枚の思い出が懐かしくまた今日に連なっているのだと改めて思った。
(写真は終演後の記念写真。前列正座の右から6番目が青鬼)