
「おじちゃんムシを見て」。来春年少組に入園する親戚の子どもが、玄関を入るとすぐに紙袋を差し出した。
紙模型の昆虫が大小合わせて30匹あまり入っている。先日入院しているとき、昆虫好きな子どものために父親がベッドの側で作ったという。
並べて虫の名前を説明してくれる。時には虫の好きな食べ物も交えながら紹介してくれた。よく覚えていることに驚かされた。生き物大好きな男の子、初めての虫などを見ると「図鑑で見てみる」、と遊んでいても急いで帰るという。
遊ばれた紙昆虫は、のりやテープの剥離、ちぎれかけた角や足など、外科手術の必要なものが何匹かいた。外したり切り取ってつなぎ変えるなど外科医のまねを楽しんだ。男の子はおとなしく側で見ている。その目を見ると、やがて彼が外科医となって修復をするだろうと思えた。
わが子の同じころには、蝶やトンボやセミは家の近くで捕らえた。カブト虫やクワガタはいると教えられた所へ遠出したこともあった。それを絵日記に書かせたところで放したことを思い出した。
今は昆虫を売っている。子ども会の世話をするころには思ってもいなかった。人が自然を遠ざけたのか、本物の虫を観察する場所も機会も少なくなった。
(写真:紙昆虫の一団)