
時代離れした風景が気になる。
この舟は昨年も1昨年もこの場所につながれている。夏は数々の雑草が茂り遊歩道から見える舟は半分あまりが隠されている。冬は誰かが舟に近づいたように枯れ草が倒れている。錨は舳先の少し離れたところに埋まっている。
子どものころこんな木造の川舟で川魚を獲ることは珍しくなかった。特に鮎の季節には上流に舳先を向けて何舟も並んだ舟の上で流していく竿を見ていた。学校帰り橋の上から見下ろして時間を過ごしたこともある。
川舟で竿を使った鮎釣を静とするなら同じ川舟を使った投網は動になる。網を投げると同じくして積み込んであった石を網の周辺へ投げる。驚いた鮎は沈んでくる網の中へ逃げ込んだことになり一網打尽となる。引き寄せられる鮎の姿は思い出せないが、橋の上から見るには投網が良かった。
ここ錦川の鮎に心配が起きた。昨秋、日本に存在しなかった鮎の新感染症が見つかった。「エドワジエラ・イクタルク」という細菌が原因で沢山の鮎が死んだ。人体への影響はないが漁業や観光への風評被害が心配だ。夏の観光鵜飼が心配される。感染経路の特定と防疫体制作りが急がれる。
数少なくなった川舟が朽ちようとしている。なんだか川漁業の行く先を示すようでなんとなく寂しい。
(写真:枯れ草が見守っている川舟)