
「野菜作りを始めたので見に来て」と訪問依頼の電話に答えるため雨上がりの道を走った。付近は道路の拡幅や農地の宅地転用などで子どものころ知っている様子は跡形もなくなっている。
広い屋敷の大きな門を入った母屋の裏に広い畑が在った。そこには大きな何十もの畝が行儀よく並んでいる。知人の借りた畝は長さ20㍍幅80センチほどの広さ。何種類もの野菜が数本づつ整列している。菊の苗も植わっている。
この畑は無農薬で作られているというとおり、隣の畝のキャベツは芸術作品を思わせる穴あきの葉が青々としていた。
畑の周囲にはビワや柿など幾本もの木が植えられている。初めて見る白い花の名前を聞くと「レモン」と返ってきた。木にはピンク色で縦長のつぼみも見られた。
この花は7から8割が自然に落下して残りが果実になる、とも教わった。リンゴやミカンと違って手間がいらないようだ。
♪おさななじみ
幼馴染の思いでは 青いレモンの味がする
閉じたまぶたのその裏に 幼い姿の君と僕
いろんなとこで黄色いレモンとは言わない。レモンの本当の色は緑色という。店先に並ぶ鮮やかな黄色は輸入品で収穫後に化学処理されるためという。
酸味の中のほのかな甘さ、「おさななじみ」の歌詞は遠い2人の思い出でまで続く。青いレモン、こんな純愛物語を語った団塊世代、そのレモンは今どんな味に変わっただろう。
(写真:白く清楚なレモンの花)