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クリニクラウ、「クリニック(診療所)」と「クラウン(道化師)」とを掛け合わせた合成語として主にヨーロッパで使われ、先進地はオランダという。日本では阪神淡路大震災のあとで活躍が始まったそうだ。主に入院中の小児の病室を訪れ、遊びやコミュニケーションなどを通じて心のケアをする専門家。日本では臨床道化師と和訳されている。
そうした人の東日本大震災後の小児病棟での活躍を映像で見た。紹介された子どもは小児がんで入院3年あまりという4~5歳くらいの男の子だった。そんな子らは震災後は笑いを無くし、緊急地震速報を報せる音におびえる。震災のため母親が避難している子もいる。
診療道化師は病室を回る前、医師から子どもの状況を教えられる。医師の注意事項を理解しその子にあった笑いの方法を工夫する。ピエロ姿の臨床道化師に、はじめ警戒するようなまなざしだった子が、いつの間にか診療道化師や親と共にはしゃぎ、全身で笑っている。いつの間にか子どもの子どもらしさを引き出していた。画面に引き込まれる。
これになるには厳しい選抜があるという。子どもの心理や保健衛生、病院でのルールなどに精通し、なおかつ優れた表現者であることが求められる。そうした表現者だからこそ、治療入院中の子どもたちを、おもいきり笑わせ、一緒に遊ぶ環境を醸し出せるのだ。
病院スタッフも臨床道化師と同化する。こうした活動が精神的な医療効果を生んでいるという。何より笑いが復活した我が子の顔を見て、嬉しさをぽつぽつと話す父親の顔のアップが印象に残った。まだ緒についた活動という、大きなエールを送る。
(写真:早くこうした戸外で遊ばせてあげたい)