日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

節分のまじない

2013年02月03日 | エッセイサロン
2013年02月03日 毎日新聞「男の気持ち」掲載

 節分の夜、誰にも見られず、四辻の真ん中に年の数だけ豆を置くと願いがかなう―子どものころ祖母から聞いた節分のまじない。

 そのころ住んでいた集落には四辻が1力所あった。節分翌日の朝、路上には願いが込められた包みが幾つも置かれていた。包みを踏まないように学校へ行った。それは、戦後の社会混乱がようやく落ち着きを見せ始めたころ。それでも復興と生活のため大人は必死に働いていたことを、子ども心にも記憶している。
 
 当時どんな願いを四辻に託したのだろうか。平和な世界や豊富な食料を、子どもらの健康と幸せをなどで、贅沢さや華やかさを願うものはなかったと思う。
  
 節分の豆まきは今も家庭で続くが、有名人を招いての観光化された光景も目立つ。恵方巻きを食べるなど昔とは大きく様変わりした。そんな中でも辻願いが生きている。

 引っ越してきたわが家の前の小さな辻。初めてのときは10個あまりの包みが置いてあり、昔ながらの願い掛けをする人のいることに驚きながらも、何かほっとした。それからは毎年、夜明けを待ってドアを開け、数える。その数は次第に減っていき「掛けた願いがかなったから」と思うようにしてきた。そして、昨年はとうとう一つになった。

 さて今年の節分明けはどうなるか。皆さんの願いがかなっていることを祈りながら、ドアを開けよう。
コメント (2)
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