
2階は民族資料展示室と郷土資料室が設けられている。
民族資料は農耕・収穫用具と生産・製糸用具の2室からなっている。藩政時代に岩国で主産業であった紙漉や織物の道具、農機具などがそのままの形で並ぶ。その数は数百点、酷使に耐え残った品、出番を待っているかのような、人なら「かくしゃく」とした感じのそれもある。子どものころに見かけたもの、使った経験のある品もある。手に触れることはしなかったが、それらには懐かしさを感じる。
展示のどれもがそれを動かす力は人力や家畜の牛馬で、エンジン音の聞こえる今の田園風景とはかけ離れている静かさだった。樹脂製品万能の現在の農耕器具は、これだけの年代を受け継がれてこれるか、手あせが幾度となく滲んだであろう乾いた柄や握りの木工製品を見ながら思う。こうした品々は読むよりも目にすることで印象に残り記憶できる。「手垢にまみれた」というが、農機具の進歩もここから始まった、そう思わせる展示品が並ぶ。
郷土資料室、旧岩国藩主吉川家や名誉市民、江戸時代から現代までの岩国出身者の紹介が、顔写真と関連資料で展示されている。子どものころから知っている名前、歴史で習ったようだと業績を思い出す人、岩国検定で学んで知った偉人など岩国の先賢が並ぶ。
しかし、知らない人のほうが圧倒的に多い。資料はここもガラスケースの中でその中はのぞけないが、黒褐色の表紙などからよく残されている、そして貴重なものだということが伝わる。こうした先人の足跡を知ることも、郷土への思いを深めることになる。そう思うと、この展示場は繰り返し繰り返し訪れないと岩国を知ったことにならない。と顔写真が呼びかけている。