いつもの席に、いつもいるべき人がいない。
考えてみたら、ぼくが劇団に入ってから、
ずっと隣の席にいたのだが、
今回、はじめてその席を離れることとなった。
演劇制作になった僕に、
ほんとにたくさんのことを教えてくれた人が、
今、新しい一歩を踏み出そうとしている。
小森明子、初演出。
最後までタリさんの側で創造をともにした一人。
タリさんがとっても信頼していた制作者だ。
劇団の60周年記念に1作目に、
やはり僕たちはブレヒトの作品を選んだ。
しかも、
これまで上演しようとしながら、
上演できなかった作品。
ブレヒトが1920年代後半のシカゴを舞台に、
資本主義社会に傾きつつある世界の経済のからくりを、
食肉市場を取り巻く状況を描くことで、
世界で何が起きているのかを提示しようとした。
戦争前夜。
小森演出は、まさにそこに切り込もうとしている。
ブレヒトのテキストを読めば、読むほど、
今の世界とリンクしてしまう。
資本家が私服を肥やし、
労働者が失業し、街にあふれだす。
トップが代わっても、
新たなトップが生まれるだけで、
貧しいものは、貧しいままである。
ドイツは、ナチス党が政権を取り、
ヒトラーが大統領となる。
どうだろう?
今のこの国は、どうだろう?
戦争前夜でないと、言えるだろうか。
初演出ということは、
当然ながら、何もかもが初めてだ。
それでも、稽古場での小森は堂々としたものである。
作品を読み込む力は、充分鍛えられてきているし、
自分自身が観たい舞台を要求していく。
そして、疑問に思うことは、すぐに稽古場にぶつけていく。
向かうは、38人の出演者と、多くのスタッフ。
これほど心強い相談相手はいない。
稽古場のいたるところで、
いろんな人たちと話をしている小森の姿を見かける。
何度もテキストを読み込み、
資料を読み込み、
どんなに準備しても足りない。
けれど、全部体当たりで向かっている。
その情熱は、稽古場に熱気をもたらしている。
小森演出は、
軽快なテンポと、遊び心をまじえつつ、
純で無垢なヨハンナを、
心が震えるほど美しく描き出そうとしている。
劇団1年目の研究生から、
創立メンバーの入江洋佑まで、
ほとんど劇団員総出演。
劇団の60周年記念であり、
さらなる新たな一歩となる節目の年に、
これからの劇団の姿を予感させることが出来る作品になる。
いろんな新たなる挑戦を、
絶対に見逃してほしくないのである!!
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TEE東京演劇アンサンブル公演 創立60周年記念公演Ⅰ
屠畜場の聖ヨハンナ
作 ベルトルト・ブレヒト
訳 加藤衛訳
演出 小森明子
構成 庭山由佳・小森明子
音楽 かとうかなこ
装置 池田ともゆき
衣裳 稲村朋子
舞踊 明樹由佳
照明 真壁智恵子
効果 勝見友理
歌唱指導 菊池大成
舞台監督 入江龍太
宣伝美術 スズキコージ・奥秋圭
制作 太田昭
3/20(木)19:00
3/21(金)14:00
3/22(土)19:00
3/23(日)14:00
3/24(月)19:00☆
3/25(火)休演
3/26(水)19:00☆
3/27(木)19:00
3/28(金)19:00
3/29(土)14:00
3/30(日)14:00
前売(一般)=3,800円
前売(学生)=3,000円
☆=Low Price Day = 2,500円
当日=4,500円
全席自由 申込順に整理番号を発行
ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線 武蔵関徒歩7分)
東京演劇アンサンブル TOKYO ENGEKI ENSEMBLE
〒177-0051 東京都練馬区関町北4-35-17
TEL:03-3920-5232 FAX:03-3920-4433
作品詳細
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