2010年、木下順二作『山脈(やまなみ)』以来、
久々の出演となる久我あゆみ。
稽古初日には、緊張感漂うオーラを発していた。
そりゃそうだろう。
けれども、稽古が進むにつれ、
だんだん落ち着いてきて、
久しぶりに聞くあゆみの言葉は、
やっぱりいいなー、と思ったりしている。
『屠畜場の聖ヨハンナ』のヨハンナとして、
どう舞台に存在するか。
楽しみである。
聖なるヨハンナ。
ブレヒトが描いた時代のジャンヌダルクである。
今回はかとうかなこさん書き下ろしのソングもある。
あゆみの歌を聴けるのも久しぶりだ。
彼女が劇団の本公演デビューしたのは、
やはりブレヒト作・広渡常敏演出『セチュアンの善人』だった。
あの時の鮮烈な印象は忘れられない。
一瞬にして魅了された。
その空間の空気が変わった。
ヨハンナも、きっとそうに違いない。
そんな一瞬を見たい。
ヨハンナに心動かされたモーラーもまた、
その一瞬にした空気が変わる、
そんな風を受けたからに違いない。
さて、一方、
搾取を続け、
私腹を肥やす食肉王ピーヤモント・モーラーには、
松下重人。
『走れメロス』のメロス、
『ワーニャ伯父さん』のワーニャ、
『シャイロック』のシャイロック、
と数々のタイトルロールを担ってきた。
さすがに今回は“ヨハンナ”というわけにはいかないが、
並んでの主役。
ブレヒトの描く人間は、いつでも1面的ではなく、
とても立体的だ。
モーラーもまた、1人の人間として描かれている。
見る立場によっては、冷酷無比な人間でもあり、小ずるい人間でもある。
また一方では、気弱で、優しい一面も垣間見える。
松下モーラーは、そんなどこか憎めない男であり、
ときにユーモアたっぷりに演じられている。
小ずるいことをしながら、
金を儲けることを悪いとも思わない世界で生きてきたモーラーが、
ヨハンナに出会うことで、これまでの価値観を根底から揺さぶられる。
そう、ヨハンナからの風を受けて、新たな空気を吸い込む。
新しい演出家との出会いを、
最も喜んでいるのは松下ではないだろうか?
稽古場にいる姿を見ているとそんな気がする。
小森演出という新しい風を受けて、
これまでの価値観が揺さぶられ、
新たな発見を繰り返す稽古場で、
大きな牽引力となっている。
まぁ、普段の重さんが、
小ずるいとか、そういうことではありません……。
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TEE東京演劇アンサンブル公演 創立60周年記念公演Ⅰ
屠畜場の聖ヨハンナ
作 ベルトルト・ブレヒト
訳 加藤衛訳
演出 小森明子
構成 庭山由佳・小森明子
音楽 かとうかなこ
装置 池田ともゆき
衣裳 稲村朋子
舞踊 明樹由佳
照明 真壁智恵子
効果 勝見友理
歌唱指導 菊池大成
舞台監督 入江龍太
宣伝美術 スズキコージ・奥秋圭
制作 太田昭
3/20(木)19:00
3/21(金)14:00
3/22(土)19:00
3/23(日)14:00
3/24(月)19:00☆
3/25(火)休演
3/26(水)19:00☆
3/27(木)19:00
3/28(金)19:00
3/29(土)14:00
3/30(日)14:00
前売(一般)=3,800円
前売(学生)=3,000円
☆=Low Price Day = 2,500円
当日=4,500円
全席自由 申込順に整理番号を発行
ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線 武蔵関徒歩7分)
東京演劇アンサンブル TOKYO ENGEKI ENSEMBLE
〒177-0051 東京都練馬区関町北4-35-17
TEL:03-3920-5232 FAX:03-3920-4433
作品詳細
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