a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

風が吹いてくるみたい

2014-03-08 14:21:13 | 東京公演


2010年、木下順二作『山脈(やまなみ)』以来、
久々の出演となる久我あゆみ。
稽古初日には、緊張感漂うオーラを発していた。
そりゃそうだろう。
けれども、稽古が進むにつれ、
だんだん落ち着いてきて、
久しぶりに聞くあゆみの言葉は、
やっぱりいいなー、と思ったりしている。
『屠畜場の聖ヨハンナ』のヨハンナとして、
どう舞台に存在するか。
楽しみである。


聖なるヨハンナ。
ブレヒトが描いた時代のジャンヌダルクである。



今回はかとうかなこさん書き下ろしのソングもある。
あゆみの歌を聴けるのも久しぶりだ。
彼女が劇団の本公演デビューしたのは、
やはりブレヒト作・広渡常敏演出『セチュアンの善人』だった。
あの時の鮮烈な印象は忘れられない。
一瞬にして魅了された。
その空間の空気が変わった。
ヨハンナも、きっとそうに違いない。
そんな一瞬を見たい。
ヨハンナに心動かされたモーラーもまた、
その一瞬にした空気が変わる、
そんな風を受けたからに違いない。


さて、一方、
搾取を続け、
私腹を肥やす食肉王ピーヤモント・モーラーには、
松下重人。
『走れメロス』のメロス、
『ワーニャ伯父さん』のワーニャ、
『シャイロック』のシャイロック、
と数々のタイトルロールを担ってきた。


さすがに今回は“ヨハンナ”というわけにはいかないが、
並んでの主役。
ブレヒトの描く人間は、いつでも1面的ではなく、
とても立体的だ。
モーラーもまた、1人の人間として描かれている。
見る立場によっては、冷酷無比な人間でもあり、小ずるい人間でもある。
また一方では、気弱で、優しい一面も垣間見える。
松下モーラーは、そんなどこか憎めない男であり、
ときにユーモアたっぷりに演じられている。



小ずるいことをしながら、
金を儲けることを悪いとも思わない世界で生きてきたモーラーが、
ヨハンナに出会うことで、これまでの価値観を根底から揺さぶられる。
そう、ヨハンナからの風を受けて、新たな空気を吸い込む。
新しい演出家との出会いを、
最も喜んでいるのは松下ではないだろうか?
稽古場にいる姿を見ているとそんな気がする。
小森演出という新しい風を受けて、
これまでの価値観が揺さぶられ、
新たな発見を繰り返す稽古場で、
大きな牽引力となっている。



まぁ、普段の重さんが、
小ずるいとか、そういうことではありません……。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


TEE東京演劇アンサンブル公演 創立60周年記念公演Ⅰ
屠畜場の聖ヨハンナ

作 ベルトルト・ブレヒト
訳 加藤衛訳
演出 小森明子
構成 庭山由佳・小森明子
音楽 かとうかなこ
装置 池田ともゆき
衣裳 稲村朋子
舞踊 明樹由佳
照明 真壁智恵子
効果 勝見友理
歌唱指導 菊池大成
舞台監督 入江龍太
宣伝美術 スズキコージ・奥秋圭
制作 太田昭


3/20(木)19:00
3/21(金)14:00
3/22(土)19:00
3/23(日)14:00
3/24(月)19:00☆
3/25(火)休演
3/26(水)19:00☆
3/27(木)19:00
3/28(金)19:00
3/29(土)14:00
3/30(日)14:00

前売(一般)=3,800円
前売(学生)=3,000円
☆=Low Price Day = 2,500円
当日=4,500円

全席自由 申込順に整理番号を発行

ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線 武蔵関徒歩7分)  


東京演劇アンサンブル TOKYO ENGEKI ENSEMBLE
〒177-0051 東京都練馬区関町北4-35-17
TEL:03-3920-5232 FAX:03-3920-4433

作品詳細

東京演劇アンサンブル webチケット