a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

第6回 戯曲を読む会のご案内

2018-12-01 15:47:37 | 芝居小屋企画

第6回 戯曲を読む会

新企画として6月から月一回を目処に、「戯曲を読む会」を開催しています。

東京演劇アンサンブルの若手の提案による、いろんな戯曲を皆で声に出して読んでみようという会です。

ワークショップという形式ではないので、誰でも気軽に参加出来ます。

第6回はアーサー・ミラーの「みんな我が子」を読みます。


戯曲に興味がある方、作品について話し合ってみたい方等、お気軽にご参加下さい!

日時 12月9日(日) 18時30分~21時30分
場所 練馬区 関町北地区区民館(会場がいつもと違うのでご注意下さい)
参加費 500円(会場費等)

参加希望の方は2日前までに03-3920-5232、もしくはteeyomukai@gmail.comご連絡ください。
ご質問等もお気軽にお待ちしています。


第5回の作品は安部公房作「友達」でした。

四年前にスープ劇場で安部公房の「未必の故意」を上演したときの話や、共同主催者の和田響きがアンサンブルに入団する前にこの作品に出演した話をしたりと、盛り上がりました。

この日は近くの中学校で先生をしてる方や、テレビ局の方等も初参加してくれました。


チラシデザインは劇団員の山﨑智子です!
今回のためにまた新しくバージョンアップして新しいものを作ってもらいました!
そちらもご覧ください!!

東京演劇アンサンブルHP
http://www.tee.co.jp


アーサー・ミラー

アーサー・アッシャー・ミラー(Arthur Asher Miller, 1915年10月17日 - 2005年2月10日)は、アメリカ合衆国の劇作家。代表作は『セールスマンの死』など。1915年にニューヨークでオーストリアのユダヤ系の家庭に生まれる。高校卒業後、ミシガン大学に入学するが、成績の低さが原因で奨学金が受けられず、更に大恐慌によって父親からの支援がなくなり、2年ほど自動車生産工場で働く。入学後、演劇を学び、在学中からラジオドラマの脚本を皮切りに劇作を始めた。1944年『幸運な男』でブロードウェーに進出を果たす。1947年『みんな我が子』がヒットし注目を集める。1949年『セールスマンの死』でエリア・カザンが演出し、トニー賞、ピュリッツァー賞を受賞。劇作家としての地位を確立し、テネシー・ウィリアムズとともにアメリカ現代演劇の旗手に躍り出た。

京演劇アンサンブル
1954年4月,俳優座養成所を卒業した3期生の有志が結成。初めは劇団三期会を名のったが,67年 12月現名称に改称した。早くからブレヒト作品に取組み,80年元映画スタジオを改装して設けた劇場「ブレヒトの芝居小屋」を開場,活動の拠点とする。広渡常敏演出によるブレヒト作『セチュアンの善人』,『ガリレイの生涯』,チェーホフ作『かもめ』などが代表作。岸田国士作品の連続上演も行なった。

TEEリレートークVol.10 『未来へのあこがれ』 竹口範顕

2018-12-01 09:47:23 | 劇団員リレートーク


こんにちは。
前回のブログで、冨山小枝から「どうしたら早く仕事が終わるかを考えている」と言われた、竹口範顕です。
ここで言う仕事というのは、舞台の設営や後片付けのことですね。
それは言い換えれば「どうしたら早くビールが飲めるか」ということなのですが(笑)
もちろん、真面目な理由もありますよ。
疲れる前に早く終われば怪我も少なくなるし、
なにより芝居に向かう心の余裕が生まれます。
早く仕事を済ませる工夫は、役者と裏方兼業の私たちには欠かせないものです。



わたしは今、冨山小枝と同じ『銀河鉄道の夜』のチームで北陸を巡演しています。
彼女は『銀河鉄道の夜』のことを、「共に歩んできた、私の芝居人生そのもの」と言っていましたが、
それほどでなくとも、この演目に強い思い入れのある劇団員は少なくないのではないかと思われます。
「これはこうだよ」「いや、そうじゃないよ、こうだよ」と、芝居の細部について話し出すと収拾がつかなかったりするほど(笑)



わたしにとっても、『銀河鉄道の夜』はやはり特別な存在です。
わたしは1992年に入団してまもなく、学校公演を続けていたこの演目のチームに入れられました。
それ以来、キャスティングは変わっても、
一度もこのチームから離れることなく、今に至ります。



もう十数年前のことになりますが、劇団をやめようとしたことがありました。
仕事で精神的に追い込まれたせいか、芝居がしたいという欲求も消えてしまうような鬱状態になったのです。
結局は、
「そんなにしんどいなら休めば? そして今の状態を乗り越えて元気になったら戻っておいでよ。
あたしはその時のあなたとまた芝居がしたい。」
という大先輩のことばで踏みとどまり、役者をやめずにすみました。
その後は、実際には仕事の量を減らしただけで、休まずに続けていたのですが、
それでも舞台の上で本気で人と向かい合い、
戯曲のことばに魂を吹き込もうという仕事をするには、ひ弱な精神状態が長く続きました。
前向きな心持ちになるまで、多くの人に助けてもらいましたが、
作品としてわたしを支えてくれたのが、『銀河鉄道の夜』です。
真っ暗な宇宙の闇に向かい合って、たった一人、自分の足で立とうとするジョバンニに背中を押されたのです。
そうか、カッコなんか悪くたっていいのか、
鼻水すすりながらでも、前を向いて自分の足で立ってることが大事なのね。
と、そんな気持ちにさせられました。
震災のような、心身ともに大きなダメージをもたらす出来事がある度に、
大勢の人たちが宮沢賢治のことばを求めるのが、わたしにも少しわかるような気がしました。



『銀河鉄道の夜』が東京演劇アンサンブルの代表作のひとつであり、
多くの劇団員の心を掴んでいるのは、
この作品の中に、よりよき未来へ向けて歩んでいきたい、
という願いをみるからかも知れません。
しかも、それを状況説明的な描写を削り落とした、
凝縮されたことばで語ってくるので、話の設定や劇団員それぞれの状況の違いをを越えて、
聞く人観る人の心に刺さってくるのです。

こども向けの演目にしても、大人向けの演目にしても、
東京演劇アンサンブルの舞台には、よりよき未来への憧れという要素が共通していると思います。
それが演目によって、
動物たちの生き方がテーマだったり、
戦争がテーマだったり、
自由がテーマだったり、
基地問題がテーマだったりするだけです。

ブレヒトの芝居小屋は、公演の度に、
また憲法集会などイベントの度に、
職業のジャンルを越えて人が集い、新しい繋がりが生まれるところです。
その営みは世界から見ればとても細々としたものかもしれません。
でも、そうやってよりよき未来への憧れが人から人へ手渡されてきたのです。
入団する前、この劇団の『銀河鉄道の夜』を見て、
なんだか訳がわからず眠ってしまい、
ここにはそんなに長くはいないだろうと思っていたわたしが、今こうしているのです。
若い頃に比べて、少しは想像力が広がったのでしょう。
「想像力が広がるとは、その人自身が変化することだ」
と、このブレヒトの芝居小屋で教わりました。

今月22日からの『銀河鉄道の夜』ブレヒトの芝居小屋公演に是非いらしてください。
そして、たとえ時間がかかろうと人間の変化の可能性に賭け、
よりよき未来への憧れが次世代に手渡される空間、
ブレヒトの芝居小屋の移転に、引き続き皆さまのお力添えをいただければ幸いです。



次回のブログ担当は、わたしに「そんなにしんどいなら休めば?」と言ってくれた大先輩で、
劇団代表の志賀澤子です。