サウジの集団強姦被害女性の件：司法側の言い分

　サウジ，19歳の女性が集団強姦の被害に遭った件の裁判で，再審の結果刑罰が何故か倍になった―というので世界中が大騒ぎっ。という話について，司法機関のほうの言い分が。

　まずは先の，世界の憤激をかったという記事：BBC news, Middle East Saudi gang rape sentence 'unjust' 16 November 2007

　すっごい性道徳の厳しい国。でも国教と私の宗教は違うのよ！　ちょっと知り合いの車に乗るくらいいいじゃないっ！　それにまだはいてぃーんなのに無茶苦茶されちゃって，ふぇえん，私もぅお嫁いけないよぅっ！　被害者なのにそれなのに，どうして私が罰せられなきゃいけないのっ？！

　…とまぁ，そういうニュースだったわけですな。

　で，司法側の言い分：BBC news, Middle East Saudi rape victim 'having affair' 26 November 2007

　司法側の言い分では，この女性については不正確な情報が流布され，それに基く誤った弁護がなされている，これは不当である，というわけだ。

　この女性は既婚者であった。で，親族ではない男性の車に乗った―という件については，この男性と一緒に写った写真を回収しようとしてのこと，だという。つまり，言わんとするところ，元彼氏だったと推測。

　そしたらそこにならず者が介入，彼女と元彼氏（推定）とを誘拐，人気のないとことに連れこんでまとめてやっちゃった，と。

　司法側の言い分では，つまり，この女性は結婚していたにも関わらず，元彼氏の車に乗ったということで不倫確定，罰せられるに値するというわけだ。いやその法もどうかとは思うけど，悪法もまた一応法であると解釈しておく方向で。

　突込みどころはそこじゃなく，「メディア使って宣伝して，法廷外の場外乱闘で自分に有利な判決引き出そうとしたの，むかつくー」（意訳）という理由で量刑を倍にしたってところじゃないでしょうか。

　メディア利用は，まぁ刑法上の罪を構成しない気がするけど，それでも法廷としては気分はよくないでしょうね。だからといって「君の場外乱闘戦術が気に食わないので量刑さらに倍」とゆー判断はどぅかと。

　量刑が，そんな気分とその場のノリで決められたかのごとき言い訳は，ちょーっと法として―その前では万人が平等であるべき―，問題があるのではないかと思う次第。

　ところで一番の被害者は，元彼氏（推定）でないかと思うんですがどぅか。
　元彼女（推定）は他の男に取られて，諦めきれずデートにこぎつけたかと思いきや車も彼女ももろともに拉致され，挙句まとめて強姦被害。（我々の感覚からして未遂ではあるものの）不倫の現行犯ではあるわけで，鞭打ち刑言い渡し。さらにはその元カノが場外乱闘始めちゃって…。　

　とりあえず，彼の刑については90回鞭打ちとしか書いてません。つまり，この女性に対する，最初の刑と同じ。つまり，不倫行為第一段階に対する罪ってことでしょう。
　追加の刑についてはBBCではわかりません。追加されていないとすれば，この点に，厳格苛烈なサウジ法廷も，いろいろ情けや同情やまぁそれに類する何かを持っている証拠と，考えておくのが穏当かと思います。