空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

『赤旗』紙「ソマリア攻撃加担か テロ特措法 給油の米艦隊出動」を巡って

2007-09-20 01:52:43 | ソマリア関連
『赤旗』9月6日付けの「ソマリア攻撃加担か テロ特措法 給油の米艦隊出動」の功は,一瞬なりともソマリア問題に日本人の目を向けたことに尽きるかと思われる。いや冒頭に結論だけ挙げるのもなにやら不当な手法の気がするが。

『赤旗』「ソマリア攻撃加担か テロ特措法 給油の米艦隊出動」(2007年9月6日)

 テロ特措法が具体的に何を念頭において制定されたか,何を大義名分としてきたかはともかく措こう。それは私の記事の主題ではない。しかし同法が対テロ戦争援護を目的とし,一定の成果を挙げたが,所期の目的を達していない―というのも,アフガニスタンが安定したとは,どうにもいい難いからだ―,この認識は正しいものといわざるを得ないだろう。

 自衛隊の艦船は同法に基き,インド洋(は広いが)で米国補給艦に物資を補給した。その米国補給艦が如何なる艦船に補給したかは,自衛隊としてはさしあたりあずかり知らぬことである(それはそれで問題あるだろうけど)。

 米艦船は,その一部はソマリア沖に向った。だから,テロ特措法に基づいて米艦船などの支援のためにインド洋に派兵されている海上自衛隊部隊が、今年一月の米軍によるアフリカ・ソマリア攻撃に加担した疑いが浮上しています。給油など海自の支援対象となっている米艦船が、この攻撃に参加していたもの。(青地は『赤旗』上掲記事引用)という言葉は,まず事実と言っていい。

 問題は,次の段かな。米軍は一月七日、「対テロ戦争」の一環としてソマリア南部を空爆し、多数の民間人が犠牲になりました。
 …それはジブチ発のAC-130によるものであって,自衛隊由来の補給を受けたかもしれない米艦船に直接関係はしないのではないか(この件,ソースとして弱いながらも日本語版Wikipediaでも確認できる)。いや観測かなにかで援助したかも,といわれたら,私には否定できませんがだって軍事詳しくないもの。

 寧ろ米艦船による直接ソマリア攻撃には,こんな例がある:「アメリカ,プントランド地域へ攻撃:ソマリア」(6月2日)。プントランドまで逃げてきたイスラム主義派が基地を設営しようとしたところに,ミサイル攻撃しかけたとか?

 …こっちのほうがよくないですか?

 ちょっとねぇ。つまりねぇ。論旨はわかるし,僕も全体的に『赤旗』の主張よりにまとめることも出来るんだけど,もうちょっと材料を吟味しなさいよ。「自衛隊が米艦に補給しました」「米航空機がソマリアを攻撃しました」「したがって自衛隊は米軍のソマリア攻撃を援助した事になります」って論理がなりたってないでしょうアナタ

 いいですか? 自衛隊の補給由来の物資を利用したかもしれない米艦がソマリアを攻撃したという報道はちゃんとあるんです。この記事の情報を組み込むだけで,全体の論旨がはっきりしっかりくっきりするでしょう。自分の主張を支持する材料ぐらいちゃんと集めて,適切に配置する努力をしなさいよ。新聞記者でしょう,アナタ? 新聞くらい読みなさいよ,自社の記事だけじゃなく他の社の記事も。でなきゃぁ,ちょっとはものを調べる位しなさいよWikpediaでもいいですよ別に英語版まで出かければソースくらい書いてあるんじゃないかなぁ?

 というわけで『赤旗』の,とりあえずこの記事を書いた記者はものすっごく適当にこの記事を書いたらしいと私は推測する。だって知ってたら,こんな非論理的な文章,書けないもの。「自衛隊がインド洋で米艦に補給」→「ジブチから攻撃機が飛来,爆撃」→「自衛隊の補給がソマリア攻撃に転用!」いやされてないから,それ。どうやればこの論理を成立させられるかと考えれば,ああそうか,駆逐艦にAC-130が着艦して給油すればOKじゃない?ってどうやれば可能なんですそんなこと

 あとですねぇ。米海軍が「アフガン復興とは無縁」な攻撃をソマリア沖で展開してるのは,僕も知ってる。具体的に言って,海賊に対して(参考:「デンマーク船解放さる:ソマリア,海賊問題」)。…うーん。これは「米国主導の報復戦争」の一環とは…ちょっと…。

 でも,テロ特措法の観点からして,転用ではあるのかな。つまり,米艦はテロリストを追う任務の最中に,海賊退治などという,任務外の行動をとった…と。…あれ? いやそれ任務のうちですよ確か。

 ん,とりあえず今回はこの位で終えることにしよう。
 けども,どうもね,今回の『赤旗』さんの記事は,1.記事を書くに当たって適切な材料集めを怠った,2.それにより,(ソマリアを巡る)各文章間の論理が繋がらなくなった―この2点の過失があること,確信してよいのではないかと思う。

 結果として,1.米艦のソマリアミサイル攻撃の事実でもって攻めることができたのにそれをせず,2.その代わり,印象論で説得性を高めるだけに終わってしまった。
 どうにも私は,上掲『赤旗』記事を称賛しかねるのです。

 ―あー。この数日の頭の中の引っかかりが外れた感じがする。うん,『赤旗』の,ソマリア問題の扱いの雑さに腹を立ててたんだな,私は。そういう私怨を晴らしてしまえば,今回の『赤旗』記事のいまひとつの功を認めるのも吝かではないか―「インド洋方面に,日本人の目を些かなりと向けさせた」。

 ま,雑に書かれた雑な論旨の記事に,あまり多くを期待するのもなんですし。

追記:
 この『赤旗』の記事は,注意する価値はないと思っていたのです。しかし久しぶりに出てきたソマリア言及記事なのに,あまりに立論が雑。その上,どうもそこそこ読まれているらしい。で耐えかね,某所でコメントしたのですよ(『無能な怠け者の呻き』さん,「2007-09-10 ならば、何故ためらっているのだ?」)。

 いやしかしまぁ,見回っているとこの記事を扱っているblog,コメント不可,トラックバック不可の設定が散見される。記事をコピーしてそのまま放置とか。そんな中,『ひとみちゃんにも ちょっと言わせて』の「ただの給油じゃなかったとね、ソマリア攻撃加勢やね」は身元を公開,しかもまぁ曲がりなりにも一応自分の意見を書いていないでもない点が評価されようか。苦言を呈するなら,「共産党で議員をするなら,もっと勉強しなさい」。…トラックバック・コメントは一時保留方針だそうですが,そこは議員さんの頁です。必要な措置といえましょう,です。

 そんなわけで,飛んでけ,トラックバック♪


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2 コメント

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TBありがとうございます (ひとみ)
2007-09-20 21:53:57
これから、学習の参考にさせていただきます。私のお気に入りに追加し、時々見せていただきます。宣伝などがたくさんありますので、公開はいたしません。ごめんなさいね。
返信する
勉強するとよいのです (teiresias)
2007-09-21 14:55:47
 日々これ勉強なのです。多角的に情報収集することも,とても大事だと思うのです。
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