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てらまち・ねっと



 最高裁が、地裁、高裁の判決を覆して、新しい解釈を作った。
 裁判は、遺言書の文面の上にボールペンで斜めの線を引いて、いわば「消す」行為のされた遺言が有効か無効かが問われた。
 なんか小説の相続争いみたいな話。誰かが内緒に線を引いて「消した」とか、想像が走る。

 昨日20日の最高裁判決には、亡くなったAの「遺産の大半を被上告人に相続させる内容の本件遺言」とある。相続というのは均等が原則のはずだから、この偏りは他の親族がクレームしたくなるのは当然で、やっぱり、小説みたいな話。

 事件について、日経は簡潔にまとめていた。 ★《2002年に死亡した広島市の男性が生前、土地建物や預金などのほぼ全財産を長男に相続させるとした自筆の遺言を作成。その後、遺言書の左上から右下にかけて自ら赤いボールペンで斜線を引いた。もう1人の相続人である長女が「遺言は故意に破棄された」として、無効の確認を求めて提訴した。》

 昨日の最高裁判決には、●「Aは,平成14年5月に死亡した。その後,本件遺言書が発見されたが,その時点で,本件遺言書には,その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線(以下「本件斜線」という。)が引かれていた。本件斜線は,Aが故意に引いたものである。」とある。

 「本件斜線は,Aが故意に引いたものである。」ということ自体、どうやって真実だと認定したのか、素人には分かりにくい。
 争っている長男・長女の二人ともが、「本人が引いた」と認めているのだろうか。もし、認めたのなら、やっぱり「遺言は書いたけど、思い直して消したんだから、意味がない紙」ということになると思うのがフツ―・・・
 そ宇いう常識が通らないのは、遺言書という特別な文書だからか・・・

 財産の分配を否定された長女が裁判を起こしたが、地裁、高裁は、「遺言は有効」だとして長男への大半の分配を認めたようだ。
 日経★《一審・広島地裁は、男性が遺言を撤回する意思で斜線を引いたことは認めたが、「元の文字が判読できる程度の斜線では効力は失われない」と判断。長女の請求を退け、二審・広島高裁も判断を維持した。》

 最高裁判決は、「遺言を維持すること」を前提にした修正・加除は文字が読めるか否かを認定するとしても、「遺言を破棄する目的」で線を引いたら、全体が無効、ということらしい。
 そうなら、Aさんは「その時に捨てれば良かった」のに・・・いったんは書いて、やっぱり消して、とはいえ、捨てる決断もつかず、又書き直そうとでも・・・悩みがあったのか・・・・やっぱり、小説風・・・

 いずれにしても、亡くなってから13年以上経っての最高裁判決での確定だから、相続争いはコワイこと。
 そんなことで、ブログには、関連報道を記録し、昨日20日の最高裁判決にリンク、判決の全文も載せておく。
 要点は以下。

   主 文
1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 亡Aの作成に係る第1審判決別紙添付の昭和61年6月22日付け自筆証書による遺言が無効であることを確認する。

裁判要旨 /遺言者が自筆証書である遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し遺言を撤回したものとみなされた事例

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● 赤字斜線の遺言「無効」、最高裁
     ロイター 2015年 11月 20日 【共同通信】
 亡くなった父親の自筆の遺言に赤い斜線が引かれていた場合、遺言が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は20日、「一般的な意味に照らし、文面全体に斜線を引く行為は、遺言の全ての効力を失わせる意思の表れ」として無効と判断した。

 その上で、有効とした二審広島高裁判決を破棄した。無効の確認を求めた原告の逆転勝訴が確定した。どのような行為が遺言の破棄に当たるのかの明確な規定はなく、作成者の行為を常識的な感覚で認定すべきだと示した判決といえそうだ。

●斜線の遺言書「無効」 最高裁判決、「故意に破棄」認定
       日経 2015/11/20
 遺言者自ら斜線を引いた遺言が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は20日、「故意に遺言を破棄したといえ無効」とする判断を示し、有効とした二審・広島高裁判決を破棄した。自筆で遺言を残す人が増える中、一定の条件下で遺言者の意思を尊重した判断といえそうだ。

 判決によると、2002年に死亡した広島市の男性が生前、土地建物や預金などのほぼ全財産を長男に相続させるとした自筆の遺言を作成。その後、遺言書の左上から右下にかけて自ら赤いボールペンで斜線を引いた。もう1人の相続人である長女が「遺言は故意に破棄された」として、無効の確認を求めて提訴した。

 一審・広島地裁は、男性が遺言を撤回する意思で斜線を引いたことは認めたが、「元の文字が判読できる程度の斜線では効力は失われない」と判断。長女の請求を退け、二審・広島高裁も判断を維持した。

 同小法廷はこの日の判決理由で「赤いボールペンで文面全体に斜線を引く行為は、一般的には遺言の全効力を失わせる意思の表れとみるべきだ」と指摘。「故意に遺言を破棄したといえ、効力はない」と結論付けた。

 司法統計によると、自筆の遺言を家庭裁判所で公文書にする検認手続きの受付件数は、14年に1万6843件と直近5年間で2割増えた。

 NPO法人「遺言・相続リーガルネットワーク」事務局長の長家広明弁護士は「遺言は書いた本人が中身を説明できないため厳格な形式が求められるが、行き過ぎた形式主義を修正し、遺言本来の趣旨に立ち返る判決だ」と評価。「ただトラブルを防ぐためには公正証書遺言を作るのが望ましい」と指摘している。

●全体に斜線引かれた遺言書は無効…最高裁
         読売 2015年11月20日
 斜線の引かれた遺言書が有効か無効かが争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は20日、「遺言書の全体に斜線を引くことは、遺言の破棄に当たり無効」との初判断を示し、「有効」とした1、2審判決を破棄する判決を言い渡した。

 無効を求めていた原告の勝訴が確定した。

 判決によると、原告の女性の父親(故人)は1986年、自宅や経営していた病院の土地・建物、預金など財産の大半を長男に相続させるとした自筆の遺言書を作成。父親が2002年5月に死亡した後、病院の金庫から見つかった。遺言書は用紙1枚で、文面の左上から右下にかけて赤色のボールペンで斜線が1本引かれていた。

 民法は「遺言書を故意に破棄した時は、撤回したものとみなす」と規定するが、具体的にどのような行為が破棄に当たるのを明記していない。1、2審は、斜線を引いたのは父親と認定する一方、「文字が判読できる状態であれば有効」と判断。これに対して、最高裁は、「遺言書の文面全体に故意に斜線を引くことは、遺言全ての効力を失わせる意思の表れで、撤回したとみなされる」と指摘した。

●最高裁判例/遺言無効確認請求事件    判決 裁判要旨
事件番号  平成26(受)1458 遺言無効確認請求事件
裁判年月日  平成27年11月20日  最高裁判所第二小法廷
裁判種別  判決  結果  破棄自判
原審裁判所名  広島高等裁判所 原審事件番号 平成26(ネ)1  平成26年4月25日
裁判要旨  遺言者が自筆証書である遺言書の文面全体に故意に斜線を引く行為が民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し遺言を撤回したものとみなされた事例

 ●      判決全文 
 平成26年(受)第1458号 遺言無効確認請求事件
 平成27年11月20日 第二小法廷判決
   主 文
1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 亡Aの作成に係る第1審判決別紙添付の昭和61年6月22日付け自筆証書による遺言が無効であることを確認する。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理 由
上告代理人今井光の上告受理申立て理由について
本件は,上告人と被上告人の父である亡Aが作成した昭和61年6月22日
付け自筆証書(以下「本件遺言書」という。)による遺言(以下「本件遺言」とい
う。)について,上告人が,Aが故意に本件遺言書を破棄したことにより本件遺言
を撤回したものとみなされると主張して,被上告人に対し,本件遺言が無効である
ことの確認を求める事案である。


2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,昭和61年6月22日,罫線が印刷された1枚の用紙に同人の遺産
の大半を被上告人に相続させる内容の本件遺言
の全文,日付及び氏名を自書し,氏
名の末尾に同人の印を押して,本件遺言書を作成した。

(2) Aは,平成14年5月に死亡した。その後,本件遺言書が発見されたが,
その時点で,本件遺言書には,その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボール
ペンで1本の斜線(以下「本件斜線」という。)が引かれていた。本件斜線は,A
が故意に引いたものである。


3 原審は,上記事実関係の下において,本件斜線が引かれた後も本件遺言書の
元の文字が判読できる状態である以上,
本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為
は,民法1024条前段により遺言を撤回したものとみなされる「故意に遺言書を
破棄したとき」には該当しない
として,上告人の請求を棄却すべきものとした。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。

民法は,自筆証書である遺言書に改変等を加える行為について,それが遺言書中
の加除その他の変更に当たる場合には,968条2項所定の厳格な方式を遵守した
ときに限って変更としての効力を認める一方で,それが遺言書の破棄に当たる場合
には,遺言者がそれを故意に行ったときにその破棄した部分について遺言を撤回し
たものとみなすこととしている(1024条前段)。

そして,前者は,遺言の効力
を維持することを前提に遺言書の一部を変更する場合を想定した規定であるから,
遺言書の一部を抹消した後にもなお元の文字が判読できる状態であれば,
民法96
8条2項所定の方式を具備していない限り,抹消としての効力を否定するという判
断もあり得よう。


ところが,本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に
斜線を引く行為は,その行為の有する一般的な意味に照らして,その遺言書の全体
を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみ
るのが相当
であるから,その行為の効力について,一部の抹消の場合と同様に判断
することはできない。

以上によれば,本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,民法1024条前段
所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するというべきであり,これにより
Aは本件遺言を撤回したものとみなされることになる。したがって,本件遺言は,
効力を有しない。

5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反
がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したとこ
ろによれば,上告人の請求は理由があるというべきであるから,第1審判決を取り
消した上,その請求を認容することとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官
山本庸幸)


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