明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(115) 陸前高田・福伏避難所で・・・東北の旅第6信

2011年05月16日 15時30分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110516 15:30)

「明日に向けて(113) 気仙沼を訪れて・・・東北の旅第5信」の続きをお送りします。

****

再び、陸前高田・福伏の話をします。ここは家が47戸、人口は約160人の集落です。
その多くの人が高台に逃れましたが、津波が家々を襲い、17戸は完全に流失、
その他の2戸を含む19戸が甚大な被害を受けました。しかも周辺の道路が
津波で寸断され、陸の孤島になってしまった。

その状態で人々は夜を過ごさなければなりませんでした。地域の公民館も
流されてしまったために、少し高台にある街道沿いにあった建物を避難所に
当てました。津波の被害に合わなかった家から布団などが持ち込まれました。
しかしこの夜はとても眠れなかったと言います。

避難民となったのは、集落の人ばかりではありませんでした。道路が寸断されて
どちらの方面にもいけなくなってしまったため、通行中の人も、福伏近辺から
動けなくなってしまいました。すぐに食糧を持ち込んで炊き出しを始めたそうですが、
これはこうした通行人にも配られました。

その日の夜、気仙沼方面の山の上が真っ赤に染まっていることから、気仙沼の
火事が分かったそうです。情報はほとんど入らず、わずかに携帯電話の
ワンセグ機能だけが有効だったとか。電池が切れると車を利用して充電して
情報を取り続けました。

翌日からも活発な活動が始まりました。とにかく生き延びなくてはならない。
気仙沼への道路が通ったのは3日目でした。すぐに行ったのは透析が必要な
方を、病院へ搬送することでした。陸前高田方面への道は、それから数日
経って、開通したそうです。

避難所の指令センターになるテントができたのは4日目。またこのころ、被災地
で泥棒などが発生しているという情報が流れていたために、夜警隊も組織した
そうです。やっと通った道路を、確かにあやしい車も通ったそうですが、目に
見える形で夜警をおこなったせいか、とくに被害はありませんでした。

その頃、やっとのことで物資が供給されはじめました。真っ先に到着したのは
ボランティアの人たちだったそうです。続いて自衛隊が入ってきた。ありがた
かったのは、何よりも水と食料、そして防寒できるもの・・・カイロや着る物、
毛布だったそうです。

多くの家が暖房にファンヒーターを使っているため、暖が取れなくなってしまって
いた。停電で電気製品がまったくダメだったからです。夜もロウソクですごさねば
ならず、情報を得られるのはラジオとワンセグだけでした。そういう状態なので
食糧と防寒具が届けられるのが本当にありがたかったそうです。

早くからかけつけてきてくれたボランティア団体の一つは、RQ市民災害救済
センターでした。この団体は後に、被災者を温泉地までマイクロバスで送迎
までしてくれたといいます。3月いっぱいです。他にもいろいろなボランティア、
自衛隊、警察にとても助けられたと小松さん。

一方で自分たちでも積極的な活動を展開していきました。燃料を集めたり、
物資を分けたり、やることはたくさんあったといいます。もともと地域で
組織していた自主防災組織がとても役に立った。これまで訓練をしてきた
ように、おのずと役割分担ができていって、仕事が割り振られていった。

この点が、大きな都市の避難所との違いではないかと小松さんは語ります。
大きな避難所では、被災者は食べ物や物資を待つ以外にやることがなくなって
しまう。そうすると災害で失ったものへの悲しみと、これからの不安ばかりが
思い浮かび、鬱やノイローゼになってしまう。しかしここはやることがある。

また顔見知りのご近所で避難所を作っているので、メンバーの間の結びつきが
強い。とにかく命をつなぐために、誰もが自分の役割を果たすために必死だった
といいます。そしてやることがあれば、悩んだり、悲しんだりばかりしなくても
いい。とにかく人との結びつきと、自分にやることがあることが大切なのです。

しかし震災から2週間ぐらい経ったころから意識の変化があらわれてきたそう
です。とりあえず命の危機は去った。地域の知り合いの身元の確認も一段落
してきた。そうなるとやはり今度、どう生活していくのかを考えなければいけない。
そうなると家がある、ないという大きな現実が誰の目にも見えてくる。

被災者にとって家があるのかないのかは、本当に大きな差です。それを完全に
平等にすることはできない。しかしその差が、差別になってはいけないと小松
さんは考えたそうです。それで例えば衣服や防寒具は、初めから家が流された
方たち優先で配ったのだそうです。家のある人はその余りを分け合った。

しかし食糧は初めから平等で分け合いました。この中には、家のある人が
持ち込んだものもありました。届けられたものを含めて、自分たちが手にできる
食糧を集めて、平等に分けたのです。他にもいろいろな点で配慮をしたと
いいます。

それでもだんだん仕事のあるなしの問題も浮上してくる。この地域は三分の一
が漁業、三分の一が農業、三分の一が勤め人だそうなのですが、働き口の
ある人と、ない人の差異ができてしまう。それは仕方のないことだけれども、
小松さんはなんとかその差を埋めたいと考え続けてきました。

この頃、ガソリンや灯油も入りだしました。ガソリンがあり、道が通れば、外に
買出しにもいける。そのため物資の必要性もかわってきました。このため
外からの供給への依頼も、全体に必要なものは何かを考え、それを効率よく
分け合っていくことが必要になりました。

このころからボランティアも頻繁に入ってくるようになり、炊き出しサービスなどが
なされ、それへの対応で忙しくなりました。それがゴールデンウィークまで続き、
その後、こうしたイベント的な行事が一段落しました。この間、マスコミの取材も
かなりきました。小松さんは新聞など、文字媒体の取材には積極的に応じました。

ゴールデンウィーク中は、他県ナンバーで、被災地を観光していく方も多くいて
腹立だしい気がしたといいます。避難所の駐車場にも勝手に入ってきて、無神経
に写真を撮っていったそうです。しかしそうしたことも、ゴールデンウィークが
あけて一段落しました。


それでは今後はどうするのか。家のない人が家を持つことが一番大事
だと小松さんは語ります。ではどうするのか。実は近くの高台に、小松さんの
家が持つ畑があるのだそうです。小松さんはその場所を中心に、周りの地権
者に頼んでまわり、避難村・復興村を建てようという構想を立てています。

住むところができたら、第二段階として違う場所に職能ごとに集まって、
共同経営の工場を建てたいと小松さんは考えています。一次産業の漁業は
再開するのは大分、先のことになるだろうし、農業も平野でコメつくりをしていた
ところは先までかかる。なので第二次産業からはじめようというのです。

つまりとりあえずの命をつなぐ段階、その次の生活を徐々に建て直していく
段階を超えて、家のない人が家を得ること、仕事のない人が仕事を得ること、
それをも地域の力でなし遂げようと小松さんは考えている。いや小松さんと
地域の方たちが考えているのです。それが集落の復興の展望です。


ここまでお話を聞いたのちに、原発事故についてのお話を聞きました。
そうすると小松さんは、これまでもここに取材にきたさまざまなマスコミに
ここでも原発のことをとても心配していると伝えてきたことを教えてくれました。
マスコミの側からはこのことは聞かれない。だから自分から言ってきたという。

当初から、ラジオなどで、また電気が使えるようになってからはインターネット
などで情報を懸命に集めたそうです。もともと小松さんはチェルノブイリの
写真展をしたこともあって、原発の事を良く知っていた。原発がアメリカに
押し付けられた経緯などもおさえていました。

小松さんはそんな話を、夜警をしながら、若者たちに教えたそうです。広瀬
隆さんの話をしたり、チェルノブイリの被害などを語って聞かせたとか。
そうしながら原発の情報を集めた。女川原発もとても心配だったといいます。
福島はメルトダウンするのではと話し合ったそうです。

しかし何かあっても、すでに津波から逃げてきている立場で、とても動くことは
できない。物理的にも経済的にも無理なのです。そのため津波で逃げて来て
いて心理的に追い詰められているのに、その上に原発の心配が重なって
ハラハラし、苦しい思いをしてきたそうです。

またそうした中でも東京方面からこちらを心配してボランティアの人がやってくる。
その方たちが福島を通ったり、北陸にまわるなどして、福島を迂回したことなどを
聞けば聞くだけ、被ばくの恐れのあるボランティアの人々に対しても、福島の
人々に対してもとても胸が痛んだそうです。

しかしこうしたことに何らかのアクションが起こしたいとは思うものの、生活再建
に手一杯でとても動けない状態です。沿岸部でも自分と同じように、心配している
人はいっぱいいると思う。しかし今回は自分たちのことで精一杯でそれは
責められないと思うと小松さん。

そうした中で、被災地以外の方々に伝えたいのは、ここの被災地でも、若い方
たちを含めて、本当に原発のことを心配していることだと小松さんは語られました。
被災は、津波だけではなくて、原子力事故もそうなのです。また被災による区別が
差別になっていくこともあちこちでおこっている。それも人災なのです。

被災地にお金を出していただいている方がたくさんおられて、ありがたいこと
ではあるけれど、現地に来て見なければわからないことがある。またきていただい
たら、何か動いて欲しい。原発に対する関わりも似たところがあり、自分で
考えて行動することが一番大切だと思うと小松さんは語ります。

何ミリシーベルトだったら安全だとかいうことではない。そんなものが検出される
こと自身が異常な状態です。「なんでそれを考えないの・・・」ということだと小松
さんは言う。「自然界にも放射性物質はあるけれど、それを凝縮するのがいかに
危険なことか。人間は自然な状態でなければ生きられないのです。」

津波被害に多くの方が善意で心配してくれることは分かる。でも津波だけでは
ない。原発事故もある。それを同じように考えて欲しいと小松さん。「津波が起こ
ることは防げません。しかし原子力事故は防ぐことができます。原子力をやめる
のは簡単なことではないかもしれませんけれど。」

小松さんは最後に次のように語られました。「災害全体を振り返ってとき、行政の
対応などで、批判したい点もあります。しかしそれを今、言うことよりも、この中で
学んだものを生かしていくことが大事だと私は思います。知恵をつけなくてはいけ
ない。それが生き残ったものの使命だと私は思うのです。」

***

福伏の小松さんの話をこれで終わりますが、僕は始終、小松さんの熱い思いに
共感しっぱなしでた。どうか感想がある方はmorita_sccrc@yahoo.co.jpまで
お寄せください。小松さんにお届けしたいと思います・・・。




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明日に向けて(114) 京都で脱原発ウィークが進行中・・・

2011年05月16日 13時00分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110516 13:00)

仙台から少し南に下がった国道沿いのネットカフェから発信しています。

東北の旅は毎日が大変、刺激的です。たくさんの方から話を聞いたのですが、
文字にする時間が足りない。というよりも、この旅では僕がパソコンに向かって
いると度々、レゲエの音が聞こえてきて、ウンッチャ、ウンッチャというリズムが
あるときは目をとろんとさせ、あるときは心を浮き浮きさせて、パソコンの前から
僕を離してしまうのです。ウーム、レゲエ恐るべし。放射能とどちらが強いの
だろう。・・・この件に関しては、後日、きちんとした考察をお届けします(笑)

さてそんなわけで、今、旅の報告の続きを大急ぎで書いているところですが、
先に、今後の予定をお知らせしておきます。
今日は夕方に、宮城県角田市のピースファームという農場を訪問し、交流の
ひと時を持ちます。この地域一体の放射線量を測っている方も、駆けつけて
くださるとの連絡が入っています。充実した討論の場が作れるといいです。

今宵は角田市で泊めていただき、いよいよ明日、東北を離れて京都に戻ります。
昼には京都駅につく予定です。
その後、出町柳にて午後1時半と午後6時から、お話をします。
すでに案内を出していますが、もう一度、このメールのあとに貼り付けておきます。

京都ではすでに昨日からぶっとおし1週間デモが行われていますが、22日には
原始力の会とピースウォーク京都よびかけのデモが行われます。

またこの時間にかぶることになりますが、山水人たちのイベントも行われます
のでこれも紹介しておきます。僕はがっちりと心でつながったイベントだと
思っています。京都のみなさま、自分のスタイルにあっていると思うものに
お越しください。

この日は「幸せの経済学」も2回上映されます。1回目の上映をみてデモに行く
こともできるし、デモをしてから夜に映画をみることも可能です。もちろんこれに
山水人のイベントをからめることも。(それでは体がもたないかな?)

僕自身は、2回目の上映会に参加して、上映のあとに少しお話させてもらいます。
タイトルは、「不幸せの経済学・・・原子力発電」でいきます。

どうか京都のみなさま、関西のみなさま、今週から22日にかけての京都の
イベントにご参加ください!


************************

「これからどうなるの?どうすればいい?ー守田敏也さんを迎えて」
~明日に向けて  福島原発事故…ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの
中で、私たちはいかにいきればよいのか。共にかんがえましょう。~


今も放射能を出し続ける福島第一原発。
メディアからは今、どういう状態なのかよく分からない。
だんだん危機感も薄れてくる。京都はけっこう離れてるし。
それでも原発では今も決死の作業を続けてくださってる人がいる。
放射能をいっぱいあびながら。

守田さんに、今原発で起こってる現状やこれから起こりうる可能性などに
ついてお話していただいた後、質疑応答、みんなでこれからどうすれば
いいのか、一緒に考えたいと思います。

お子様がいらっしゃる方にもぜひ来ていただきたいので、平日の昼間と
夜の2回、行います。
参加無料。


2011.5.17(火) ①pm1:30~3:00  ②pm6:30~8:00
出町柳アカテレテコベソベサーバ 京都市左京区田中下柳町3-17


*守田敏也(もりたとしや)
同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在
フリーライターとして取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する
研究を進めている。


問い合わせはこちらまで
sovesahva@sovesahva.org
http://www.sovesahva.org

*************************

◎5月22日(日)
UNIチャリティーフェスティバル

日時・場所・主催者

場所:京都市国際交流会館(蹴上)の前庭
日時:5月22日(日曜日) 11 : 00 ~17 : 00
主催:NPOユニ
後援:浄土宗平和協会・グリーンアクション・MIDIレコード・山水人

本イベントについて

本イベントは、東日本大震災支援チャリティとして開催されます。
イベント内で発生する純益100%が支援金に使われます。

入場無料・小雨決行です。
集計結果およびイベントによる支援活動についてはHP上で公開致します。


イベントスケジュール

11:00  イベント開始
11:30  [講演] アイリーン・美緒子・スミス 
12:30  [LIVE] 岡野 弘幹
13:30  [講演] 平賀 緑
14:30  [LIVE] 三結(みゆ)(Jazz)
15:30  [LIVE] 遠藤りょうきゅう & LAMANI
17:00  イベント終了

http://npouni.net/event/

以上です、皆様のご参加を希望します。

*********************


『幸せの経済学』
http://www.shiawaseno.net/

予告編
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=iqjvmV4qOe0

上映会開催場所と上映時間及びスケジュールについて
http://www.shiawaseno.net/archives/1262


【主催】       Forest Book Store&カルメン 
【日にち】     2011/5/22
【場所】      social kitchen(京都市上京区相国寺北門前町699)
【料金】      1000円
【人数】      40人
【お申し込み】   
fbs.carmen@gmail.com090-6966-9475

【イベント詳細】  
18:30 開場
19:00 上映
20:20 終了+休憩
20:40 スペシャルトーク(守田敏也)
21:10 フリータイム
21:30 閉場
アクセス
京都市上京区相国寺北門前町699 Social Kitchen
地下鉄「鞍馬口」徒歩5分
http://hanareproject.net/

*ご近所に迷惑がかかるので、自転車での来場は御遠慮下さいませ。
お車で来場の際は、近くのコインパーキングを御利用下さい。
なお、会場は2階ですが階段のみです。不便をおかけ致します。


【メッセージ】 
地域の人が年齢、性別、趣味、興味、人種、国籍で溝を作ることなく、お互いが
気持ち良くつながりを持って交流できる社会にしていきましょう。なるべく肩ひじ
張らずゆるく(笑)。
今回の必要経費を差し引いた売り上げは全額「みちのく応援隊」へ寄付します。
みちのく応援隊について
http://sites.google.com/site/michinokuoentai/

だぶるけど上映会会場「ソーシャルキッチン」↓のアクセス
http://hanareproject.net/

************************

『幸せの経済学』上映会
 5月22日(日)13時(12時半開場)、京都市下京いきいき市民活動センター3F
(京都市下京区上之町38。JR「京都」より徒歩10分。周辺に有料Pあり)
TEL075・371・8220。

上映作品=『幸せの経済学』
 人や自然のつながりを取り戻す暮らし方を探るドキュメンタリー。今、問われる
幸せとは? 真の豊かさとは?

 上映後、シェアリングあり。映画鑑賞のみの参加可。
 監督=ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーヴン・ゴアリク、ジョン・ペイジ
 出演=ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、ヴァンダナ・ジヴァ、辻信一 ほか
 (2010年/アメリカ、ニカラグア、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア、
インド、タイ、日本、中国/68分)

 600円。定員100人。※予約・当日可
 申し込み・問い合わせTEL090・3782・5930/shiawase_kyoto@yahoo.co.jp(「幸せの経済学」プロジェクトin京都:森)。
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