守田です。(20140405 23:30)
このところ連続的にトルコ・シノップへの原発輸出に反対するアクションを行っていますが、ここでトルコのイスタンブールやシノップ、イズミールで僕が行った講演内容をアップしておきたいと思います。
実は2月28日にベラルーシ・ミンスクのホテルから1回目を出しています。「明日に向けて(804)トルコ・シノップ原発建設を止めるために(1)」がそれです。旅の間に続きも完成させていたのですが、その後、濃密な交流が続き、発信の時間がまったく取れなくなってしまいました。
そのため1月以上も間があいてしまったので、(1)の内容を再掲したのちに、それに続く内容を何回かに分けてアップしていきたいと思います。
なお実際の発言は、時間の制約があることと、通訳の関係でできるだけ話を短く鮮明にした方が良いと考えたため、もっと短いものになりました。
これを通訳者のプナールさんが、僕の言葉の調子も含めて完璧に訳してくださったため、非常にインパクトのある発言が実現できたのではと思っています。
それに加えて、トルコの方たちの原発問題への関心がとても強いこともあって、ずいぶんたくさんのマスコミが、この講演のことを報道してくださいました。その一つ、非常にメジャーな雑誌、ATLASに載った報道をご紹介しておきます。
http://www.kesfetmekicinbak.com/
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=641457292575206&set=a.168717229849217.44896.168146003239673&type=1&theater
facebookの方を見ると、たった今の数字ですが、「いいね」が1080人、「シェア」が1945件に達しています!!ありがたい。もの凄い反響です!
*****
トルコ・シノップ原発建設を止めるために(1)
第一部 福島原発は今なお瀕死の状態にある。
親愛なるトルコのみなさま。
私は日本の京都という街からやってきた守田敏也といいます。ジャーナリストであり、アクティビスとです。福島第一原発事故以降、人々を放射線被曝から守るために走り回ってきました。幾度も福島に入って取材をするとともに、多くの人々をインタビューし、たくさんの記事を書いてきました。
また各地で、放射線被曝、とくに内部被曝の危険性を訴える講演を行っています。福島原発事故以降の講演回数は280回を超えますが、海外での講演は今回が初めでです。その機会がトルコで与えられたことを、私は非常に喜んでいます。
なぜかと言えば、今、私たちはシノップでの原発建設を止めるという共通の課題を負っているからです。そのためには福島原発事故の悲惨な経験、危険が去ったわけではまったくない現状を、トルコのみなさんが正確に知っていただくことが非常に大きな意味を持ちます。
そのため、私は今日の講演を待ち望んでいました。どうか話をお聞きください。
1、日本の首相は大嘘つき
わたしたち日本人とトルコのみなさんは、他の不思議な縁でも結ばれています。2020年のオリンピック開催の権利をめぐって、東京とイスタンブールが争ったからです。
ご存知のようにオリンピック開催は東京に決まりましたが、このとき私たちの国の安倍首相は大きな嘘をつきました。彼がついた嘘は3つあります。一つは福島原発がコントロールされていると言ったこと。
二つは放射能汚染水は完全にブロックされていると言ったこと。三つは現在も未来も福島原発事故による健康被害はまったくないと言ったことです。
この発言の効果もあって、オリンピック開催は東京に決まりましたが、私たち-日本で放射能の危険性と闘っている人々-は、この首相発言を強く恥じています。
福島原発の状態はとてもコントロールされているとは言えません。それどころか極めて危険な状態が続いています。こんな状態の日本には、とてもではないですが、オリンピックを開催する余裕などありません。
また東京にも放射能汚染の影響がおよんでいます。原発がまだまだ危険で、汚染もある東京に世界中から平和の祭典で人々を集めるのは許されない行為です。
私はオリンピック開催に大反対であり、即刻、返上すべきだと思っています。もしイスタンブールのみなさんが、オリンピック開催に意欲的であれば、イスタンブールにお返しすべきです。
ただしイスタンブールでもオリンピック開催のための自然破壊に反対する運動があったと聞いていますから、オリンピックそのものがもはや問い直されなければならないのかもしれません。その点はともあれ、今日は私たちの国の首相がついた大嘘を暴く形で話を進めたいと思います。
オリンピック委員会の委員たちは騙されてしまいましたが、みなさんはけして騙されないでください。
2、福島原発の構造
まず私がお伝えしたいのは、福島第一原発が今なお瀕死の状態であり、きわめて危険なあり方が続いているという事実です。福島第一原発には6基の原子炉がありますが、このうち4基が激しく壊れました。
とくに運転中だった1号機、2号機、3号機はいずれも核燃料が溶融し、メルトダウンを起こしました。スライドは東京新聞という原発のことを一番、きちんと報道している新聞に載った2014年1月現在の原子炉の様子です。
福島原発の構造をお見せします。この原発の一番内側にあるのが原子炉圧力容器と言います。通常ではこの中で核分裂反応が行われています。
圧力容器の中は水がはってあります。核分裂反応で出た膨大な熱がこの水に伝わり、蒸気が発生します。この蒸気がタービン建屋に送られてタービンを回し、その力で発電を行うわけです。このようにそもそも原子炉とは巨大な湯沸かし器でしかありません。
しかも発電に使われるのは発生した熱の三分の一、あとの三分の二は排熱として海に捨てられています。発電の仕事よりも、地球を温めている方が多いのです。
この原子炉圧力容器の周りを覆っているのが、原子炉格納容器です。この容器は通常運転の時にはなんの役割も果たしていません。格納容器の使命は、もし圧力容器内でトラブルが発生し、放射能が漏れ出してきた時に、この容器内に閉じ込めることです。放射能漏れに対する最大のガードです。
ところが福島原発事故では、この格納容器が、壊れてしまいました。そのため膨大な放射能が漏れだしたのです。その意味で、福島原発はプラントとして完全に破産しています。
3、事故はどのように起こったか
福島原発事故はどのように起こったのか。実は今もって真実は十分に解明されていません。
原子炉の中が見えないからですが、原発に批判的な科学者たちの分析で、地震によって配管が破れてしまい、原子炉の中の水が抜けてしまった可能性が強く指摘されています。つまり地震によって壊れたのだということです。
これを日本政府と東京電力は否定しています。彼らは地震のあとに起こった津波で、電源が奪われ、冷却機能が働かなくなったからだと言いはっています。しかしこれは嘘です。実際には大津波が来る前に壊れていた可能性が高いのです。
政府や東電はこの事実を認めると、日本中のすべての原発が安全基準を満たしていないことが明らかになり、再稼働の道が完全に閉ざされるので、地震の影響を否定していますが、さまざまなパラメーターが、津波が来る前に異常が発生したことを告げています。
私がこの点を強調するのは、ここトルコが日本と同じく地震大国だからです。1999年の大地震では2万人に近い方が亡くなられたとお聞きしましたが、そのようなところになおさら原発を建てるべきではないことが、福島原発事故の教訓から明らかです。
さて原子炉から水が抜けるとどうなるでしょうか。地震があったとき、原発の運転は止めることはできたのですが、内部にある核燃料は、運転が止まってからも非常に長い間、熱を発し続けます。そのために水の中に入れておくのが絶対条件なのです。何十年もです。
ところが水が抜けてしまったために、核燃料が溶け出しました。溶けて圧力容器のそこに落ちてしまうことを「メルトダウン」と言います。さらにメルトダウンした核燃料は、圧力容器の下部を溶かしてしまい、格納容器の底にと落ちていきました。このことをメルトスルーと言います。
メルトダウンするとどうなるか。ものすごい熱量が発生して、圧力容器内はたちまち大変な高圧状態になります。そのため内部にたまったものすごい濃度の放射能を含んだ蒸気が格納容器内へと噴出されました。吹き出すことで、圧力容器を爆発から守るためです。
このとき大量の水素が発生しました。水素は格納容器の上部のフタの部分から、放射能を含みつつ、外に漏れ出して建屋の中にたまり、何らかの要因で火がついて爆発しました。これが福島原発1号機の爆発です。
同時に2号機では、内部に吹き出した放射能にまみれた水蒸気を、格納容器が押さえ込むことができなくなりました。このため格納容器の下部のどこかで爆発が起こりました。この時ものすごい量の放射能が発生し、外部に漏れ出しました。
爆発は3号機でも起こりました。この爆発を政府や東電は、1号機と同じ、水素爆発だったと言い張っていますが、爆発の規模や様子が明らかに1号機とは違っていました。もっと激しい爆発が起こったのです。
このため多くの人々が、この爆発は水素爆発ではなく、核燃料の一部が核反応をおこした「臨界爆発」だったのではないかと指摘しています。
さらに事故は4号機にも及びました。4号機は大地震があっとき定期点検中で運転をしていませんでした。核燃料も原子炉の中にはなく、燃料プールの中に入っていました。
燃料プールは、原子炉の上から燃料交換をするために原子炉建屋の高いところ、5階のフロアに作られていて、もともと構造的な危険性が指摘されていたものです。
ところがこの4号機でも爆発が起こりました。東電は3号機で発生した水素が入り込み爆発を起こしたと言っていますが、真相はわかっていません。
しかしこの爆発やそれに続く火災などが起こる中で燃料プールが冷却できず、水がどんどん減っていってしまいました。燃料がむき出しになるとものすごい放射線が飛び出すし、冷やされない部分から溶け出してしまいます。
燃料は1500体も入っていて、そのまま水が無くなると大変な状態になるところでしたが、偶然に近くにあった水が燃料プールに入り込み、干上がる寸前で事故の進行が止まりました。
これら4基の原発が次々と事故を起こすことで本当に大変な量の放射能が発生しましたが、実はその総量もいまだにはっきりとわかっていません。チェルノブイリの10分の1という説から、チェルノブイリと同等だったのではないかというさまざまな推論があります。
これらの放射能が私たちの国の民を襲ったのです。
続く