明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(816)トルコ・シノップ原発建設を止めるために(3)

2014年04月07日 23時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140407 23:30)

トルコでの講演禄の3回目をお届けします。
今回は破局の可能性に対して、日本に住まうものがどうすべきなのかを書きました。
危機を危機として正面から受け止め、ただちに広域の避難訓練に着手すべきなのです。こうした取り組みこそが現場を支えることにもつながります。
現場の方たちが、やっと「多くの人が自分たちのこの危機感、苦しみを受け止めてくれた」と思えるだろうからです。
これは僕が折にふれて言っていることですが、この中にしか僕は危機を凌いでいくわずかな可能性を私たちのもとにたぐりよせる方法はないと思います。
今回はトルコでの講演の内容録になっていますが、ぜひ日本のみなさんこそが、多くの場で討論していただきたい内容です。

なおトルコの友人が、原発建設予定地になっているシノップ半島の美しい写真を送ってきてくれたので掲載します。
ほとんどが僕も訪れた場で、胸が熱くなりました!
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10202531477826514&set=pcb.10202531522027619&type=1&theater

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トルコ・シノップ原発建設を止めるために(3)

7、破局に対して、どう対応すべきなのか

このあまりに恐ろしい危機を前に、本来、わたしたち日本人、日本に住む人々は何をすべきなのでしょうか。
第一に必要なのは、この危機を国内に、世界にきちんと明らかにし、危機と正面から向き合うことです。
日本の中のあらゆる資産、人材をこの原発事故の本当の収束のために投入することです。世界中に助けを求め、世界の英知を結集し、日本だけでなく世界を破局的な放射能汚染から救うために努力を傾けることです。

それを考えたとき、私たちの国はとてもではありませんが、オリンピックなどやっている場合ではないのです。そこにかける資金、資材、人材のすべてを福島原発事故の処理に注ぎ込むべきです。それは世界に対する私たちの国の絶対的義務です。
当時に私が強く主張しているのは、福島周辺だけでなく、半径250キロ圏に及ぶ地域で、広域の避難訓練を行うことです。もし大破局が起こった場合、3000万人が安全に避難することなどとても無理です。
だとしたらどうするのか。避難の優先順位などを決めておく必要があります。せめて子どもたちを、未来世代を救いたい。妊娠の可能性のある女性たちを救いたい。障がい者をはじめ、自力で逃げられない人の避難の手段を確保しておきたい。
完璧な避難はとてもできないのですが、しかし準備があれば少しでも多くの人を救うことはできます。

事故処理にあたる人々への徹底した教育も必要です。消防隊、警察官、自衛隊、工事関係者の人々は高線量地帯で働かざるを得ない。
私はいざというときに、自らの命を守るために仕事を辞める権利の確保も必要だと思っていますが、それでも誰かが放射能を浴びながら、人を助けることに従事しなければならない。
そうであれば、せめてもその方たちに少しでも被曝を軽減できる知恵を身に付けて欲しいし、それぞれの組織で被曝防護のアイテムを備蓄しておいて欲しい。いざというときのための準備にやることは本当にたくさんあるのです。

さらに私たちの国に50基もの原子炉があることを考えると、こうした訓練は全国各地で行う必要があります。
なぜか。福島原発4号機の危機が告げているように、原子炉は例え動いてなくても、燃料プールがある限り、破局的な危機を迎える可能性があるからです。それに全国で備えなければなりません。
実際私は西日本にある兵庫県の篠山市という小さな街で、原子力災害対策検討委員会の委員をしています。
日本の福井県というところに原発が20基近くも固まってあるのですが、篠山市はここから一番近いところで45キロにあります。高濃度の放射能が飛んできてしまう距離です。

このためたくさんの市の職員に私は繰り返し講習を行っていますが、その際も完璧な避難はとても無理なことを知った上で、少しでも被害者を少なくすることを訴えています。
私は「原発災害対策は人柱を建てることです」とも言っています。人柱とは古の日本が、建物の安全などを祈願するために、人を生贄にして安全を祈った残酷な行為ですが、あたかもそれと同じように誰かが被曝覚悟で人を守らなければならないのです。

私がこのようなことを強調するのは、現に今、私たちの国はたくさんの人柱を、福島に建てているからです。原発作業員の方たちが毎日、大変な量の放射線を浴びながら仕事をしています。現場はまるで放射能の泥沼のようなところです。それが原発事故の現実です。
にもかかわらず、安倍首相は、「原発はコントロールされている」と語ったわけですが、実はこの言葉で一番、傷ついたのは福島や被災地の人々とともに、現場の作業員の方たちなのです。
今、私が述べてきた福島原発の瀕死の状態は、誰よりも現場の作業員の方たちがよく知っています。いや、おそらく私以上に、現場の深刻さを知っているでしょう。では現場作業員の方たちはどのような気持ちで働いているのでしょうか。
私の友人の知人が現場で働いているのですが、朝、出勤する時に「そいじゃあ、今日も、地球を守ってくっから」と言って出かけるのだそうです。そうです。作業員の方たちが、日々、体を放射線で貫かれながら、地球を守ってくださっているのです。

しかし安倍首相が大嘘をつき、政府も東電もマスコミも、この大危機を伝えないため、現場は士気がさがるばかりです。労働条件も悪化し、給料もさがるばかり。しかも被曝のために頻繁に人が交代せざるを得ず、ベテランがほとんどいなくなってもいるといいます。
こんな状態でどうしてこの困難な仕事をやり遂げることができるでしょうか。私はこのままでは必ずどこかで破綻してしまうと思います。
これに対して、国民、住民がこぞって避難訓練を開始したらどうでしょうか。現場の方たちは、「やっと自分たちが直面している苦労を国民、住民が知ってくれた」と思うでしょう。
また悪化している労働環境にもメスが入り、作業員の方たちの被曝防護や医療援助も進むでしょう。そのことが現場を少しでもよくし、その分、危機を遠ざけうると私は思うのです。
私たちにきてしまうかもしれない巨大余震はとめられません。しかし私たちは人の心を支えることができます。そのために日本中で原発災害対策を積み上げ、避難訓練を行うことが必要です。そのことが日本を救い、世界を救う道だと私は思います。

8、漏れ続ける汚染水

安倍首相の、「原発はコントロールされている」という嘘が、いかにひどいものか、私たちを危険に陥れているものか、これでお分かりかと思いますが、続いて、「汚染水は完全にブロックされている」という嘘も批判しておきたいと思います。
図をご覧下さい。これはスイス大使館なども利用している図ですが、まずおさえておくべきところは、この福島原発サイトは、その下に地下水が大量に流れているところにあるということです。流れている量はなんと推定で1日1000トンです。
どうしてそんなところに原発を建ててしまったのかと嘆かざるを得ないのですが、実はもともとここの土地はもっと高くなっていたのです。そこに原発を建てれば、まだしも地下水は遠いいところに流れていました。
原発は冷却のために大量の水をくみあげなければなりません。その経費を削減するため東電は土地を切り崩してしまったのです。そのためこの原発は、2011年の事故の前から、地下水が吹き上げてきて困っていました。

事故後、3つの原子炉がメルトダウンしてしまったので、常に冷却水をいれ続けなければならなくなりましたが、核燃料に触れるため激しく汚染されてしまいます。
これがタービン建屋に戻ってきますが、そこに地下水が入り込み、高濃度の汚染水と混じり合い、また外に出て行って、海にまで達してしまっています。
さらに今年になって、格納容器が思ったよりも激しく破損していて、そこからも汚染水がどんどん漏れ出していることが発見されました。

3号機など、昨年の12月まで核燃料のほとんどが原子炉圧力容器の中にあると東電によって推論されてきたのですが、どうもそうではないらしい。ほとんどが下に落ちてしまい、しかも冷却水もその多くが格納容器から漏れてしまっていることもわかってきました。
こうして激しく汚染された水が海に向かっているのですが、その数は1日に400トンと言われています。東電は400トン、日本政府は300トンと言っています。
しかし私はこれはかなりいい加減な数値だと思います。もしきちんと測れていれば、このようにきりのいい数値になるはずがありません。956.5トンとかそんな数になるはずです。
要するにどれほどの地下水が流れているのかも、そのうちどれだけが核燃料による汚染に接触し、海に流れ込んでいるのかも、きちんと測れてなどいないのです。
地下水の流れが複雑で、把握しきれないからです。そのため非常に大雑把に出された数値が、1日1000トンとか400トンとかいう数字にほかならないのです。

明らかなことは、大変な量の放射能汚染水が、1日、何百トンという単位で、海に流れ込んでいるという事実です。
東電はこれを汚染水と溜め込むタンクをつくることで防ごうとしてきましたが、もともと大量の水を長期的に溜め込むためのものではないので、次々とこのタンクからも高濃度の汚染水が漏れ出してしまっています。
このため、福島原発サイトは汚染水の泥沼のようになっているのです。一体これでどうして、汚染水が完全にブロックされているなどと言えるのでしょうか。あまりにもひどいウソにほかなりません。 海は継続的に汚染され続けているのです。

実は安倍首相がオリンピック招致演説をした翌日、東京電力自身が、「完全にブロックされている」という発言を否定しました。なぜか。東電は自分の生き残りの道をかんがえることだけはとても優秀な企業です。
今、東電が処理の失敗をどれだけ明らかになっても、首相が世界に向けて大きな嘘をついてしまったので、政府が庇わなければならなくなっています。
それを承知で東電ははじめは安倍首相の発言を否定し、後になって、見解の相違はないと修正してみせたのです。これで東電は政府に対して優位に立ちました。

しかしそれで事態が何か改善されたわけではまったくありません。事実は把握でもできない大量の汚染水が海に入り続けているということにつきます。
毎日のように汚染水が海に流れ続けていることに私の胸は痛み続けています。海は世界につながっています。汚染は世界中に及ぶでしょう。とても申し訳ないことです。
しかしこの汚染水問題も、政府も東電も、福島原発の状態をまったく把握できていなことを物語ってもいます。だからこそ、明日、何が起こるかも分からないのです。そこに巨大な危機があるのです。

9、原子力村は危機を直視できない

最後に、これほどの危機があるのに、どうして日本政府が直視しようとしないのかというありうべき質問にお答えしておきたいと思います。答えはそれが原子力を推進してきたもののメンタリティーだとうことです。
彼ら彼女らはあまりに主観的で自分に都合のいいような事実しか見ようとしません。危機を直視する力に著しく欠けているのです。それが原子力発電を推進してきたコネクション=原子力村に共通の意識です。
危機を直視する勇気があるならば、スリーマイル島の事故のときに、チェルノブイリ事故の後に、世界中の原発はとまったでしょう。しかし彼ら彼女らはそうしませんでした。世界が完全に破滅してしまうまでそうでしょう。
だからこそ、今、私たちが立ち上がり、原子力の時代を終わらせなければなりません。そのために一緒に努力を重ねていきましょう。

続く 

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