明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1296)伊方原発3号機1次冷却水ポンプは耐圧試験で壊れた!ただちに停止すべきだ!

2016年08月29日 18時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160829 18:30)

前回の続きで伊方原発3号機の構造的欠陥と思われる一次冷却水ポンプ故障事故についてさらに解析していきたいと思います。
すでにこの点については「明日に向けて」(1282)(1283)で記事にしたのですが、これらを書いた翌日の7月25日に四国電力から報告書が出されました。以下の文章です。

 伊方発電所3号機 1次冷却材ポンプ3B第3シールの点検結果等について
 四国電力 2016年7月25日
 http://www.yonden.co.jp/press/re1607/data/pr005.pdf

ここで7月17日に起こった事故原因の解説がされているのですが、核心部分で述べているのは、なんと格納容器の耐圧試験を行ったときに、ポンプの軸受け部分のシールド箇所に大きな圧力がかかりシールドが効かなくなったということでした。
当該部分を以下に抜粋しておきます。

 「7月12日に実施した原子炉格納容器の耐圧検査時に、第3シールに通常より高い圧力がかかったことにより、シール構成部品であるOリングの噛み込み等が発生し、摩擦力が多きくくなり、シーリングの動きが悪くなったものです。
 このため1次冷却材ポンプ3B起動時に、シールリングが傾いた状態となり、シート面に隙間ができたことから、シールリークオフ流量が増加したものと推定しました。」

抜粋はここまで。

分かりやすいように解説します。そもそもこのポンプと言われる装置、150気圧300度で流れている一次冷却水の中にプロペラを仕込んで回し、水流を強める役割を果たしているものです。
プロペラを回すためにモーターが必要で、その軸が循環している一次冷却水の配管にいわば直角に差し込まれ、その先でプロペラが回されて冷却水が攪拌されているのですが、このモーターの軸の部分がシールド上の弱点になっているのです。

なぜかというとモーターの軸が回転可能なためには当たり前のことですが軸受け部に一定の隙間がなくてはなりません。しかし一次冷却水の圧力はなんと150気圧ですのでこのわずかな隙間に高圧の熱湯が押し寄せて、水漏れが起こりやすいのです。
このためここは3重ものシールドが施されており、主に放射能を大量に含んだ1次冷却水は第一、第二シールまでて侵入を阻止しようという構造になっています。
第3シールの役目はこの軸受けの隙間を埋めて循環しつつ、一次冷却水の侵入をシールドしている純水が漏れないよう封じることにあります。この純水はシール部分を洗浄する役目も負っているのですが、さらにそれを第3シールで封じているのです。

理解を容易にするためにこのポンプを図示している三菱重工のページをご紹介します。

 1次冷却材ポンプ 三菱重工HPより
 https://www.mhi.co.jp/products/detail/reactor_coolant_pump.html

さてこれまで僕はこのポンプが繰り返し同じような故障事故を繰り返しているので、構造的欠陥ではないかと論じてきたのですが、今回は図らずも四国電力の発表によってその一角が明らかになったのではないかと思います。
というのはこの故障事故は、格納容器の耐圧試験でこそ起こったからです。もちろんこの試験は直接にポンプの強度を試すものではなかったのでしょうが、しかし同ポンプが、格納容器が耐えるべき圧力に耐えられなかったのは確かです。
要するに同ポンプは試験に耐えられなかった。角度を変えて言えば、格納容器の強度を試験していたら違う部分が壊れることが判明したのでした。そんなポンプをそのまま使っての稼働などしてよいはずがない。

四電の発表によってもう少し詳しく見ていくと、このポンプには通常は1次冷却水側から強い圧力がかかっていることが説明されています。1番目のシールである第1シール側からです。
ところが試験によって格納容器内の圧力を高めたので、このときは第3シール側からより高い圧力を受けることになりました。このため第3シールの前後で「通常時とは逆向きの圧力が発生する」と説明されています。
このことがシールがずれて水漏れが発生した根拠に上げられているのですが、一読して開いた口がふさがりませんでした。

これではなんらかの事故が発生し、格納容器内の圧力が高まる事態が発生すると、どう考えたってこのポンプで同じ故障が発生する可能性が極めて高いからです。
耐圧試験によってそのことこそが明らかになったのではないでしょうか。というかこういう不慮の事態の発生の可能性を知ることにこそ、試験の意味があるのではないでしょうか。
となれば本来、このように格納容器側、つまり第3シール側の圧力が高まった時にシールがずれてしまう欠陥を解決しなければ再稼働してはならなかったはずです。

にもかかわらず以下のように対処することが発表されたのみでした。抜粋します。

 「今後、一次冷却材ポンプ3Bの第2および第3シールを予備品と取り替えるとともに、万全を期すため、同じ構造である3A、3Cのシールについても同様に取り替えます」

抜粋はここまで

万全を期すためとかいったって、故障事故を起こした肝心な部分の第2、3シールは予備品と変えられたのでしかない。
これは従来と同じ部品ですから、今回起こった事故に対応したことになっていません。つまり試験結果を反映した改良になっておらず、むしろ試験結果を無視したまま従来品と交換したことにしかなりません。
そもそも今回壊れたポンプそのものが、これまで繰り返し事故を起こしてきた箇所であるがゆえに、再稼働を前に新品を取り付けていたのにもかかわらず、7月に事故に見舞われたのです。それでなぜ予備品への交換ですませてしまうのか。

ここからも強く疑われるのは、三菱重工がこの一次冷却水ポンプの構造的欠陥に気が付きながら、抜本的な改良を行わずに、ないしは技術的に行えないままに、今日まで加圧水型原発を動かしてきたと思われることです。
そして壊れる度に、部品の交換などで弥縫してきた。蒸気発生器と同じようにです。
しかしこのポンプは150気圧でまわっている一次冷却水の配管の途中に設置されたものですから、この部分の故障が深刻化すると、冷却材の飛び出し=炉心の冷却材喪失=メルトダウンに直結する可能性があり、こんな対応は許されてはならないのです。

このことからも伊方原発3号機はただちに停めるべきです。

また現在稼働中の川内原発1号機、2号機も同じ三菱重工製の加圧水型原発であり、同じ部品が使われています。それどころか川内原発1号機でも2008年に同ポンプに取り付けられたプロペラの軸(モーターの軸)が折れてしまうという事故も起こっています。
伊方原発と川内原発は蒸気発生器とともに、同ポンプに同じ構造的欠陥を有しているのですから、こちらもまたただちに停めるべきです。
もちろん高浜原発も同じ型ですからやはり二度と稼動させてはならないのです。

なお伊方原発を動かしてはならない理由は他にもたくさんあります。
以下の記事も参照にしてください。

 明日に向けて(1288)伊方原発を動かしてはならない幾つもの理由-上 
 2016年8月15日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ac6e04f05f8f856793573e9be441cddc
 http://toshikyoto.com/press/2193

 明日に向けて(1289)伊方原発を動かしてはならない幾つもの理由-下 
 2016年8月16日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/41d6ef9fd874dce9c96df803ffa6ef4a 
 http://toshikyoto.com/press/2195

この項の連載終わり

コメント
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