明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1581)放射能汚染水の投棄は今も継続中!-福島第一原発放射能汚染水問題を振り返る!(2)

2018年10月03日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181003 23:30)

● 放射能汚染水問題の記事連載を再開します!

もう4か月も前になりますが6月14日にコープ自然派さんに招かれて「311後の放射能汚染水問題を考えよう」というタイトルでお話し、これをもとに6月16日に以下の記事を書きました。

明日に向けて(1537)福島第一原発放射能汚染水問題を振り返る!(1)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/303ecfad5408a218b3059a527c519e9c

その後、講演内容を落とし込んだ記事を連続で出していこうと思っていたのですが、直後の6月18日に大阪北部地震が起こり、その分析を優先せねばでした。
さらに続いて7月豪雨災害が起こり、猛暑災害が続き、台風の迷走、南仏サマーキャンプへの参加、台風21号被害、北海道胆振東部地震などと続き、続編がなかなか書けませんでした。

その間に放射能汚染水の海洋投棄の動きが政府や東電によって強められてきました。
政府や東電は「投棄をするのは放射能除去処理をした後の主にトリチウムを含んだ汚染水であり危険性は少ない」と主張してきましたがとんでもないあやまりです。多くの方が反対されておりもちろん僕も反対です。

しかし僕はこの論議で政府と東電が重大な事実から話をずらそうとしていることも感じています。なぜかというと汚染水の海洋投棄はけして今から始められようとしているのではなく、すでに事故後、今日まで継続されていることだからです。
もちろん投棄を公言してはいませんが、そもそも東電は事故当初から山側から流れてくる地下水とメルトダウンした核燃料を冷やす水が混じり合って海に出てしまう可能性を十分に把握していながらまともな対処をしてこず、海に流れるに任せていたのです。

何よりもまずこのことが裁かれなくてはいけない。政府と東電が実態を世界に明らかにし、謝罪し、責任者を処罰すべきです。それもしないままさらに汚染水を流すなど到底許されるわけがありません。
こうした観点をみなさんと共有するために、再度、この問題の連載を継続することにしました。歴史的経緯も踏まえた捉え返しを行います。

1、放射能汚染水の投棄は今も継続中!

● 東電は遮水壁によって汚染を止めたかのように主張しているが・・・

政府と東電は汚染水があたかも今から海に投棄されるかのような印象操作を行っています。とくに東電は事故当初から数年間、放射能汚染水が海に注いでいたことを事細かには報告せず、原子炉の海側に遮水壁を作って2015年10月26日に完成させ、「汚染を止めた」ことばかりを強調しています。
でも実際はどうなのかでしょうか?東電による説明図を参照していただきたいと思いますが、そもそも福島原発の地下には膨大な地下水が流れています。
山側から流れてきて原子炉の下を通るのですが、そこにメルトダウンした核燃料があるので水で冷やし続けており、ここで高濃度の放射能汚染水が生まれてしまい、地下水と一緒に海に出続けてきたのです。

汚染水対策の状況
http://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watermanagement/

● 汚染水を汲み上げ「浄化装置」を通して投棄

これに対し東電は遮水壁で流出を止めたと言っているわけですが、しかし実は今も意図的に流しているものがあります。
一つは原子炉より海側に「地下ドレン」が掘られています。なぜかというと原子炉の下側に迷路のように穴や側溝が走っており、そこに汚染水が溜まってしまい、海側に流れてきて遮水壁との間に溜まるので汲み上げるためです。
原子炉地下の穴や「トレンチ」などの側溝は、図面でしか確認できず、誰も具体的な把握ができていないのだそうですが、それが原子炉建屋とつながっていて高濃度の汚染水が溜まっていることは確かで、ここから流れてくるものを汲み上げているわけです。

東電はこの他にも原子炉建屋のまわりに「サブドレン」という井戸を掘り、建屋に入り込む地下水や、原子炉地下から出てくる汚染水も汲み上げています。
原子炉の周りの「サブドレン」、原子炉と海の間に掘った「地下水ドレン」、同じように原子炉の山側にも「地下水バイパス」を掘っていて、そこから汲み上げたものを「浄化装置」に流し込み、セシウムやストロンチウムなどの放射能を除去したとして、海に流しています。(これらもテプコの図を参照)

● EUの規制値の15倍の濃度のトリチウムの投棄が行われている

まずここに大きな問題があります。東電がトリチウムに対して1リットルあたり1500ベクレル、セシウム134と137に対しては1ベクレル、全ベータ核種に対してサブドレンと地下水ドレンは3ベクレル、地下水バイパスに対しては5ベクレルを自主的な規制値とし、それ以下のものは流していることです。要するにこの濃度以下の放射能汚染水はいまも毎日、意図的に投棄されているのです。
東電は自分たちは厳しい規制のもとに行っているのだと主張しています。日本のトリチウムの排出基準は1リットルあたり60000ベクレルだからです。東電は1500ベクレルを自主規制値にしているので十分に低いと言っていて、WHOの飲料水の基準が1リットルあたり10000ベクレルであることも紹介しています。

しかし世界を見渡すともっと厳しい基準を課しているところもあるのです。例えばカナダは国としては規制値が7000ベクレルで日本より約9倍も厳しい。さらにそのカナダのオンタリオ州飲料水諮問評議会は1リットルあたり20ベクレルという規制値を出しています。この州のオンタリオ湖に原発があることに対し、厳しい規制をかけて環境を守ろうとしているのです。
この他に原発大国のアメリカも740ベクレルだし、EUにいたっては100ベクレルです。つまり東電が現に毎日、投棄を行っている1リットルあたり1500ベクレルという基準は、EU基準の15倍も甘いのです。
このように規制値に大きな違いがあるのは、トリチウムの危険性に未知数が多いためで、評価の仕方に大きな違いがあるからです。僕もオンタリオ州のように考えるべきだと思っていますが、ともあれまずここでは、東電が今もEUでは認められない規制値の15倍ものトリチウムを含みうる汚染水を流し続けている事実をおさえておかねばなりません。

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