守田です(20181006 10:00)
前回の続きで2014年11月に行った鎌仲さんとの対談の3回目、最終回をお届けします。
なおここで滋賀県知事に当選したばかりの三日月さんのことが出てきます。鎌仲さんとの対談の前に、しがのお母さんたちを中心にした市民の方たちが三日月さんを囲むトークショーを行い、僕もそこに参加して鎌仲さんも観ていたからです。
現在の三日月さん、残念ながらあのときの市民にまるっと囲まれて当選したよい感じが薄れて、「灰色の男たち」の方へと吸い込まれてしまっている感じがします。三日月さんにあの頃を思い起こして欲しいとの思いも込めてこの部分もそのままに掲載しました。
映画『小さき声のカノン』に込められた思い-3
2014年11月24日 アースディしがにおいて
鎌仲ひとみ&守田敏也
● 原発問題というのは、男性にいろいろなことをお任せし過ぎて起こった
鎌仲 私は原発問題というのは、男性にいろいろなことをお任せしすぎて起こったんじゃないかなあって思うのですね。
守田 そうです!
鎌仲 男性原理。つまり効率を追求するとか、経済性を追及するとか、その価値観の前には「命」という言葉を使うのも恥ずかしくなるような感じで、男たちがやってきたと思うのですよ。
でも女は子どもを妊娠して生むわけではないですか。それなのに「そんな感情的になるなよ」とか「科学的な根拠もないのに放射能を怖がっているだけじゃないの?」とか冷たい理屈を言う男たちが未だに日本では多いのですよ。
だから今、そういう男たちが政治とかいろいろなことを決める側にいて、女性たちが「お願いです。給食には安全な食材を使ってください」と嘆願、陳情にいくという構造そのものを変えて、女性も政治を引き受けるし、男性も子育てや地域の活動を引き受けることが必要なのです。だからこれは、単に原発のことだけではなく、男と女の非常に深い問題に関わっているなと映画を作って思いましたね。
母なるもの、男性の中の女性性が、あまりにも日本の中では抑圧されすぎていると思います。
守田 本当にその通りだと思います。
鎌仲 あるいは夫婦の関係で、夫が妻のいうことに耳を傾けることがあまりにもないと、今回取材をして、凄く感じて、驚いたということもありますね。
子どもを抱いて放射能のことを不安だと言う妻に「政府が安全だと言っているのにおまえは何をバカなことを言っているのだ」と。でもそんなことを言ってもらいたいのではないのですよね。子どもを抱えて凄い不安に包まれている自分をどうにかして欲しいとまずは言っているのに、すぐに数字の話とか原発の話を男はしちゃうわけでしょう。
やはり子どもを本当に守りたいという夫婦の共同作業がなければ私は子どもは守れないと思うのです。その中で母なるもの、母的な力というものが今でてきているわけですが、こんなに混迷している安倍さんのアベコベ政治の日本の中で、そういうものと真っ向から対立したら潰されてしまう。
そうではなくて、地を這うように、草の根が広がるように、女たちが今までとは違う意識を持って前に進んでいかなかったら子どもは守れない。原発も止められない。そう思います。
● 女性の声に耳を傾けた方が男性にも断然いい!
守田 僕は滋賀に来てもそう思うのですよね。滋賀というより信楽のお母さんたちに最初に呼んでもらって、その場の雰囲気がとても心地よいというか、「話して下さい」と言われて来ながらその場の雰囲気にすごく教えてもらうことがあったのですね。
たぶんね、僕は三日月さん(注 滋賀県知事。鎌仲&守田トークの前に、お母さんたちを中心としたしがの方たちと対談した)もそうだと思う。あれは男としてすごく得だと思いますよ。
鎌仲 そうそう。あれは良かったね。ああいうのいいね!
守田 おそらく今の彼の日常は、灰色の背広を着た時間泥棒のような人たちに取り囲まれている毎日だと思うのだよね。(守田注、灰色の男たち=時間泥棒はミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる)だから今日は三日月さんはなんかホッとした顔をしていた。
鎌仲 そうよねー。ここにいる女の人たちにいじられるのがいいね。
守田 そうそう。
鎌仲 いじくられキャラ(笑)。
守田 そういうのがもっと広がっていくと僕は「男性解放」になると思います。男性自身がすごく自分も抑圧しているのです。男性の中にも鎌仲さんが言ってくれたように母性的なものもあれば、優しい気持ちもあるのに「そんな腰抜けでどうするんだ」と言われちゃってね。「理屈に強く数字に強くないとダメだ」と言われて、結構、それで男性は疲弊しているのですよね。
それで家に帰って、人のことばかり言えないけれども、お連れ合いに愚痴を聞いてもらう。それではダメで、社会の中で自分が公的な活動をしている場で、そういう母性的なものが出せるようにならないと。
鎌仲 でも連れ合いに愚痴を聞いてもらえるのは良い方だよ。(笑)
● ぶっ倒れるほどにお金がない! 上映への協力を!
守田 さて鎌仲さん。そろそろ最後になるのですが、この映画を僕はとにかく観て欲しいし、広げたいと思うのですけれども何をしたら良いでしょうか。
鎌仲 そうですね。この映画の卵のように産み落とされたシーンを先行的に今日だけ上映するものがありますので観ていただいて、本編は来年の3月に東京の劇場で公開したあとに全国で一斉に上映して、どの劇場でも上映していただきたいと思っていますし自主上映もやります。そのどこでも使える前売り券を販売しています。
私たちはこの映画を3年かけて作ってきました。こういうテーマの映画を誰も作ってくれないのですが、いいものを作らないと広がらないので時間がかかりました。映画を広げるためには、子どもたちを保養に出すとかあるいは定期検診を受けるとか、今はまだまだ足りない制度を作っていくための運動と連携していきたいなと思っていますが、私たち実はもうぶっ倒れるほどにお金がないのです。
守田 前売り券を買っていただくことが凄く重要なそうですね。
鎌仲 そうなんです。
守田 これから宣伝をしなければならなくて、もの凄くお金がかかると聞きました。ですからみなさんにぜひ前売り券を買っていただきたいです。
鎌仲 ほっておいたらマスコミは私がこの映画で描いたようなテーマを取り上げようとしないのです。でも映画になった、それが劇場公開になる、地域で上映になったとなったら取り上げるようになる。現場にはいい記者たちもいるわけですよ。
このテーマを広げるチャンスなんです。私はそのチャンスを生かすために何人かのスタッフを雇わなくてはいけないし、その人たちだって人間的な生活をしなくてはいけない。その上で朝から晩まで働いてもらわなくてはいけない。
映画を作ったのはいいのですが、実は今月の12日にこの映画の製作資金すべての責任を負ってくれていた私と30年一緒に映画を作り続けてきたプロデューサーが亡くなってしまいました。
守田 悲しいですね。
鎌仲 私たちは父親のようなプロデューサーを亡くしてしまって、路頭に迷っているような状態です。でも自分たちでこの映画をやっていこうということで、相変わらず頑張っているのですけれども、ただ、チケットを買っていただかないと、先が・・・という感じなのです。
いやそれでもやっていくでしょうね。例えチケットが売れなくても借金をして頑張っていこうとは思っていますが、良かったら買ってやってください。
はい。終わりました。
守田 今日はどうもありがとうございました!
終わり