守田です。(20110624 11:30)
深刻な話を続けて来たので、今回はちょっと余談をば。
実は先週の水曜日に、被災地に自転車を送る活動をしているサクセスランニング
の森さんと一緒に、京都府北部の芦生の森を訪ねてきました。森さんの現地案内
のためです。さまざまなアウトドア企画のプランナーでもある森さん、ぜひ芦生
ツアー(有料)を行おうと働きかけてくださり、その下見として行ってきました。
今回は少しその報告をさせていただきます。
芦生の森は、京都市の北方、京北町から福井県境・滋賀県境に向かって広がって
いる森林です。ブナ・トチ・芦生杉などが自生していて、原生林とも呼ばれています。
正確には、日本には誰も入ったことがないという意味での原生林はありません。
しかし人の手があまり入らなくなって、その地域の自然の植生変移に任せていると
終局的にはこう落ち着く・・・という意味での、原生極相林は幾つか残されており、
芦生の森もその1つです。
今回、訪れたのはその南部、佐々里峠から、小野村割岳を目指すコースです。
ただし小野村割岳を登るのではなく、尾根の途中から下って、知る人ぞ知る
秘境を目指したのでした。
ここで出会うことができるのは、推定樹齢1000年を超える芦生大杉です!これが
本当に凄い。ぜひサクセスランニングさんのページに森さんが写真で報告を
行っているので見て下さい。
http://www.success-running.com/news/2011/06/post-73.html
芦生の森の面白さは、ここが日本海側気候と太平洋側気候の接点になっている
こと、同時に、暖温帯と冷温帯の接点になっていることに根拠を有しています。
それだけに生物種がとても豊富なのです。
例えば、日本海側気候に順応した植物の典型が芦生杉。この杉は、苗木のときに
冬の豪雪で何度も押しつぶされてしまうのですが、ところがどっこい、曲げられても、
それをはねのけて伸びあがってくるのです。あるいは曲げられて、地面に接すると、
そこから根を生やして、新たに逞しく伸びあがりだす。
そのため1本の木から枝分かれをして、それぞれが上を目指す習性を持っています。
まるで手のひらを上に向け、それぞれの指が天をついているような感じがある。
こうした杉のことを台杉とも呼びます。
樹齢1000年にもなると、これがもの凄いことになる。途中で枝分かれした幹が
それぞれ巨木になり、うねうねと空高く茂っているのです。その迫力たるや、もう
本当に息をつげなくなるぐらいです。とにかく一見の価値ありです。
またこの山塊で面白いのは、「クマハギ」の跡がいたるところに見られることです。
クマハギとは、クマが杉などの針葉樹をひっかいて傷をつけ、うろをつくってしまう
こと。正確にはひっかかれたところを修復するために、樹の周りがせりだして
きますが、中央部分は回復しないで、そこに穴ができることです。
これで木が育つと、そこにはクマの大好物の蜂の巣ができるようになる。つまり
クマたちは、自分たちの食事の場を作っているというわけですね。
さらに樹が大きくなっていくと、うろはさらに広がって、人が入れるほどの穴に
なる。クマたちはここを冬眠の場とするのです。つまりクマたちは、自分たちの
冬ごもりの場を作っているわけです。
しかしここで素朴な疑問が生じる。そんなに穴が大きくなるまでクマは生きて
いるのだろうか。答えはもちろん否です。となるとクマは次世代のための穴を
作っていることになる。僕の尊敬する昆虫家の方は、「そうなんです。これは
クマたちの世代間倫理の象徴なんです」と言って笑います。
しかもさらに面白いことがある。このクマハギ現象は、この芦生の森を含む
丹波山塊に特徴的な現象であって、同じDNAを持ったクマたちが他の地域では
行っていない。となるとこの現象はこの地域でクマたちが伝えている「文化」で
あることになります。
本当でしょうか・・・。答えは、ぜひあなた自身が森に来て、樹の前に立って
見つけてください!
この森に入ると、自分たちが、生き物の一部であることを実感します。
私たちがさまざまな生命に囲まれ、その一部として生かされていることも。
巨大な生命系の中に自分がいること、自然につつまれてあることが感じれ、
何とも言えない安らいだ気分に心がひたっていく。感謝の念が自然に湧いて
きて、ああ森はいいな。この自然を守っていきたいなとしみじみと思うのです。
ちなみにこうした心の中から溢れ出てくるような情感を、ウィルソンという生物
学者がバイオフィリアと命名しています。バイオ=生命を、フィリア=愛する心
です。ここからウィルソンは、アフリカのサバンナの中のオアシス付近から発生
した哺乳類から始まった・・・と推定されるわれわれ人類には、DNAの中に、生命、
あるいは自然を愛する心がインプットされているのだというバイオフィリア仮説を
唱えています。
それが正しいか否か。証明は難しいと思うのですが、しかし芦生の森の中に
入り込むと、この説はきっと正しいに違いないと、すとんと思えてしまうから
不思議です。みなさまもどうか一度、芦生の森の奥深くまでお越しください!!
ちなみにツアーは8月27日に行う予定です。恐縮ですが有料です。
詳しくはサクセスランニングさんのホームページでご確認ください。
ただ、ここまで書いておきながらなのですが、厳しい現実も書き添えなければ
なりません。この芦生の森、京都府北部ですから、若狭湾の原発銀座が
目の前です。だいたい20キロから30キロで各原発に辿りついてしまいます。
話題のもんじゅまでも50キロぐらいでしょうか。
そのためこの地域に、関西電力が、揚水ダムを作ろうとしたことがあり、
地域の、なめこ組合の努力などで、計画が中断しています。関西電力から
必死で美しい森が守られてきたのですが、しかしその努力も、もし若狭湾で深刻
な事故が起こったら水泡に帰してしまいます。
バイオフェリア仮説が正しい!と確信する僕は、だからこそまた若狭湾の
原発も即時停め、廃炉にしていかなければならないと思うのです・・・。
深刻な話を続けて来たので、今回はちょっと余談をば。
実は先週の水曜日に、被災地に自転車を送る活動をしているサクセスランニング
の森さんと一緒に、京都府北部の芦生の森を訪ねてきました。森さんの現地案内
のためです。さまざまなアウトドア企画のプランナーでもある森さん、ぜひ芦生
ツアー(有料)を行おうと働きかけてくださり、その下見として行ってきました。
今回は少しその報告をさせていただきます。
芦生の森は、京都市の北方、京北町から福井県境・滋賀県境に向かって広がって
いる森林です。ブナ・トチ・芦生杉などが自生していて、原生林とも呼ばれています。
正確には、日本には誰も入ったことがないという意味での原生林はありません。
しかし人の手があまり入らなくなって、その地域の自然の植生変移に任せていると
終局的にはこう落ち着く・・・という意味での、原生極相林は幾つか残されており、
芦生の森もその1つです。
今回、訪れたのはその南部、佐々里峠から、小野村割岳を目指すコースです。
ただし小野村割岳を登るのではなく、尾根の途中から下って、知る人ぞ知る
秘境を目指したのでした。
ここで出会うことができるのは、推定樹齢1000年を超える芦生大杉です!これが
本当に凄い。ぜひサクセスランニングさんのページに森さんが写真で報告を
行っているので見て下さい。
http://www.success-running.com/news/2011/06/post-73.html
芦生の森の面白さは、ここが日本海側気候と太平洋側気候の接点になっている
こと、同時に、暖温帯と冷温帯の接点になっていることに根拠を有しています。
それだけに生物種がとても豊富なのです。
例えば、日本海側気候に順応した植物の典型が芦生杉。この杉は、苗木のときに
冬の豪雪で何度も押しつぶされてしまうのですが、ところがどっこい、曲げられても、
それをはねのけて伸びあがってくるのです。あるいは曲げられて、地面に接すると、
そこから根を生やして、新たに逞しく伸びあがりだす。
そのため1本の木から枝分かれをして、それぞれが上を目指す習性を持っています。
まるで手のひらを上に向け、それぞれの指が天をついているような感じがある。
こうした杉のことを台杉とも呼びます。
樹齢1000年にもなると、これがもの凄いことになる。途中で枝分かれした幹が
それぞれ巨木になり、うねうねと空高く茂っているのです。その迫力たるや、もう
本当に息をつげなくなるぐらいです。とにかく一見の価値ありです。
またこの山塊で面白いのは、「クマハギ」の跡がいたるところに見られることです。
クマハギとは、クマが杉などの針葉樹をひっかいて傷をつけ、うろをつくってしまう
こと。正確にはひっかかれたところを修復するために、樹の周りがせりだして
きますが、中央部分は回復しないで、そこに穴ができることです。
これで木が育つと、そこにはクマの大好物の蜂の巣ができるようになる。つまり
クマたちは、自分たちの食事の場を作っているというわけですね。
さらに樹が大きくなっていくと、うろはさらに広がって、人が入れるほどの穴に
なる。クマたちはここを冬眠の場とするのです。つまりクマたちは、自分たちの
冬ごもりの場を作っているわけです。
しかしここで素朴な疑問が生じる。そんなに穴が大きくなるまでクマは生きて
いるのだろうか。答えはもちろん否です。となるとクマは次世代のための穴を
作っていることになる。僕の尊敬する昆虫家の方は、「そうなんです。これは
クマたちの世代間倫理の象徴なんです」と言って笑います。
しかもさらに面白いことがある。このクマハギ現象は、この芦生の森を含む
丹波山塊に特徴的な現象であって、同じDNAを持ったクマたちが他の地域では
行っていない。となるとこの現象はこの地域でクマたちが伝えている「文化」で
あることになります。
本当でしょうか・・・。答えは、ぜひあなた自身が森に来て、樹の前に立って
見つけてください!
この森に入ると、自分たちが、生き物の一部であることを実感します。
私たちがさまざまな生命に囲まれ、その一部として生かされていることも。
巨大な生命系の中に自分がいること、自然につつまれてあることが感じれ、
何とも言えない安らいだ気分に心がひたっていく。感謝の念が自然に湧いて
きて、ああ森はいいな。この自然を守っていきたいなとしみじみと思うのです。
ちなみにこうした心の中から溢れ出てくるような情感を、ウィルソンという生物
学者がバイオフィリアと命名しています。バイオ=生命を、フィリア=愛する心
です。ここからウィルソンは、アフリカのサバンナの中のオアシス付近から発生
した哺乳類から始まった・・・と推定されるわれわれ人類には、DNAの中に、生命、
あるいは自然を愛する心がインプットされているのだというバイオフィリア仮説を
唱えています。
それが正しいか否か。証明は難しいと思うのですが、しかし芦生の森の中に
入り込むと、この説はきっと正しいに違いないと、すとんと思えてしまうから
不思議です。みなさまもどうか一度、芦生の森の奥深くまでお越しください!!
ちなみにツアーは8月27日に行う予定です。恐縮ですが有料です。
詳しくはサクセスランニングさんのホームページでご確認ください。
ただ、ここまで書いておきながらなのですが、厳しい現実も書き添えなければ
なりません。この芦生の森、京都府北部ですから、若狭湾の原発銀座が
目の前です。だいたい20キロから30キロで各原発に辿りついてしまいます。
話題のもんじゅまでも50キロぐらいでしょうか。
そのためこの地域に、関西電力が、揚水ダムを作ろうとしたことがあり、
地域の、なめこ組合の努力などで、計画が中断しています。関西電力から
必死で美しい森が守られてきたのですが、しかしその努力も、もし若狭湾で深刻
な事故が起こったら水泡に帰してしまいます。
バイオフェリア仮説が正しい!と確信する僕は、だからこそまた若狭湾の
原発も即時停め、廃炉にしていかなければならないと思うのです・・・。
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