守田です(20110625 02:30)
田中さんの講演の続きです。
福島原発事故シナリオ 田中三彦氏
http://www.ustream.tv/recorded/15539453 http://www.ustream.tv/recorded/15524200
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多分、起きていたとすれば亀裂が生じて、どんどん拡大していった。 地震で何か起きて、圧力抑制機構が働く成る事が起こった。再循環配管がくさい。主蒸気管かもしれない。地震時に大きな応力が出る。
またB系列のICが使われていない。ああいう修羅場で最後の最後までそれが動かなかったことの意味が分からない。もしかすると、系列の配管が壊れたということもあるかもしれない。
東京電力のシミュレーションの批判を行いたい。 原子力安全基盤機構というところが、クロスチェックと称している。それでさらにちょっと過激なことがでてきた。
メルトダウンが起きたなどということは、誰でも思っているわけだけれども、東京電力が5月11日、日曜日だったと思うがシミュレーション、確率的安全評価というシミュレーションの結果を、記者会見を開いて説明した。
その結果がある意味では、一般の人にとって衝撃的で、それがゆえにある意味では信用がおけると受け取られたかもしれない。そのように僕には思える。
その衝撃的な内容と言うのは、メルトダウンを認めたばかりか、かなりのスピードで、その日のうちに燃料が丸出しになってあっという間にメルトダウンを起して言ったというストーリーだった。
それまでまったくそういうことを言わなかったのに、いきなりそういうことを言ったので、逆に信頼を勝ち取るみたいなことがあったような気がする。その辺の計算づくがあったかもしれない。
私はその記者会見を聞いていて、これはロードマップを変更するのだなと思った。それで水棺方式をやろうとしていた。ところが原子力圧力容器の中に水がたまらないことがすでに分かっていたのだろう。それでこれをあきらめるということを言う時に、タイミングも見計らって、シミュレーション結果を出してくるわけだ。
そうするとそこが抜けているから、水が下に落っこちるのは当たり前としても、さらにメルトスルーという言葉も出ていた。そうすると周りの人は、溶けて落ちたものはどこにいったのかと、格納容器も穴が開いたのではないか、その可能性もあるということになると、それはどこにいったのか、地下にいったのかという話になっていく。
そうすると「水棺方式はうまくいかないですね」という話を、互いに暗黙のうちに了解する。それで翌日にはどの新聞もトップでロードマップ変更と言うことがシミュレーション結果の発表とともに出てきた。
翌日、火曜日に、ちゃんと水棺方式はやめたと言われ、今、やっている循環方式に変わるわけだ。これはうまい理由づけになっている。 メルトダウンを認めると、東京電力は潔いと、しかも普通考えられていたよりも、あっと言う間に起きたと言う、衝撃的な内容になっていたので、逆に言うと信じやすくなっていると思う。
しかし僕は最初からまったくこれを信じていない。これから事故調査委員会が事故の内容を調べるというときに、まだそれが何も始まってないときにIAEAの閣僚級会議の中にシミュレーションの結果を報告すると、それでIAEAが認知して、国際的に認められるという方向付けまでしてしまおうという、ある意味でいうと非常に早計というか、策略のようにも見えるし、それほど自信の持てるシミュレーションなのだろうか。
私がこれから述べるように、これは全く信用できない。このようなものをどうして出すのだろうか。自ら退路を断って、配管破断はなかった地震は関係なかったとこれから言いますよと、地震説は全て拒否と決めたとも見える。
例えばロボットが配管を調べようとして、格納容器の中を撮影すると何か分かるかと言うと、分からない。配管は保温材がまかれていてそれを金属が覆っている。外から見てもわからない。ものすごく複雑な配管がいっぱい通っている。写真を撮って証拠をあげることができない。
それで永遠に配管は壊れなかったと言い張ると話は通ってしまう可能性がある。そう踏んでいるかどうかは分からないけれども、配管破断説は一切受け付けないというシミュレーションだ。
そのシミュレーションの批判を行おうと思うが、シミュレーションではどういう結果が出て来るのかは、どういう入力をしたかによってくる。その意味で入力条件がたくさんある。
例えば私が今日、説明したような、もしかすると配管が壊れているということになると、配管にもいっぱいあるわけだし、穴の大きさもいっぱいあるわけだし、その大きさがどう変わって行くのかということも追っていかなければならないのだけれども、いろいろなケースを入れてみる。もしかすると圧力抑制室の構造が壊れたりしたことがあったかもしれない。そういうことをシミュレーションの中に入れていかなければならないだろう。
そうするといろいろなケースをやって、その中で、記録として残っている実測された水位、圧力、温度と合うもの、一番いいものを選んでいくとか、運転された方の話を良く聞いて、それと矛盾していないかどうか。
その意味でまず運転記録に忠実であること、運転者の話したことに忠実であること、想定されるストーリー、それが一つではないわけだから、いろんなケースも入れて、100ケースも200ケースもやって、その中から一番合理的に説明をつくものをやればいいわけだ。
ところがこれは、鼻から配管破断はないという条件で計算されている。 それから圧力抑制室の異常もないことを条件にしている。もっとひどいことに、IC(非常用復水器)は津波の後に、一切動いていないことにしている。冷却機能は働かなかったとしている。
そうなるとこのシミュレーションを実現した人にとって、最大の難関はこれをどう実現するかになる。
シミュレーションをする人は、何かのデータを説明しなければならないということになる。その場合、格納容器の圧力がどうして7.4気圧まであがってしまったのか。また水位がどうして落ちてきたのか。これをどう説明するかだ。
ここでICが津波以降、一切動かなかったと過程しているので、圧力が上がり主蒸気逃し安全弁が開いて、蒸気が圧力抑制室に逃がされる。もう一つ自動減圧系というモードもあって、水位がある程度さがって圧力がある程度残っているときは開きっぱなしにする。
とにかくこの主蒸気からのラインで、蒸気が圧力抑制室に運ばれて圧力容器の水位が下がったと説明しようとしている。
もう一つ重要なのは、7.4気圧だ。これをどうやって説明するか。大口径破断が一瞬に起こったのでもないのに、なぜ格納容器の圧力があがったのか。これは考えることは一つしかない。
・・・(音声途切れる)
シミュレーションの中に、原子炉圧力容器が何度になったら何センチの穴があくとか、そういう入力をするわけだ。メルトダウンがあっというまにきて、原子炉圧力容器が熱くなる。そうなるとどこかが損傷して高温高圧の蒸気が格納容器の中に漏れていく。そうなれば格納容器の圧力があがることになるので、このストーリーを狙って、シミュレーションが行われている。
その証拠をおみせしたい。 まず一番苦労したのは、原子炉格納容器が7.4気圧になっている。これをどう説明するかを苦慮している。
格納容器の圧力は、3気圧ぐらいまでゆっくりあがって、そこからどんと上に上がっている。ここに原子力圧力容器が破損と書いてある。約15時間後となっている。計算上、こうなったとなっている。
どうしてこれが分かるのかというと、燃料が丸出しになる時間が早かったので、ある温度になると原子炉に穴が開くと入力しておくと、ここで穴があいたことになる。
そうすると、穴から高温高圧のガスが噴き出す。そうするとここで一気に圧力が上昇することになる。これをあっているとみなすかどうか。これはあっていない。
なぜかというとこの方式で言うと、もっと早く7.4気圧になっているので、さらにもっと早くメルトダウンを起したことにしないとここで7.4気圧まであがったことが説明がつかないことになる。つまりこれでは説明できていない。
なんでこんなことで穴が開いたことになるのかというと、津波以降、ICを動かさないければ当然、メルトダウンは早く進行するので、そうすると、原子力圧力容器に早く穴が開く。
われわれが問題にするのはこの辺だ。ここはあっていない。原子炉圧力容器の破損に頼っていくと、さらにメルトダウンが早く起こったことにしないと説明がつかない。
結局、これには無理がある。実際には、地震によるスロッシングによって圧力抑制機構がうまく作動しなかった。それはアメリカのNRCが1980年代に指摘した問題とズバリ絡んでいて、そういうことが今回、地震によっておきてないか。そういう要素をこのシミュレーションは何も入れていない。地震の要素を何も入れていない。
こんなものを、これが正しいと主張すること自体が意味がない。これがなぜ受けてしまうかと言うと、われわれが思っている以上にメルトダウンが早く起こったと言ったから、いさぎよくなった、正直になったいう受けがあったかもしれない。
こんなに早くメルトダウンをしたという解析には無理がある。これほど一気に、3気圧から7.4気圧まで一瞬で格納容器の圧力があがったというのは、どこかに矛盾が来ている。また圧力をただしく表現できていない。 もっと凄いものもある。東京電力が原子炉の水位が、一気に落ちて水素爆発が起きたことになっているのだが、シミュレーションの方の計算上の水位はもっと早く落ちてしまっている。非常用復水器が動かないので、逃がし安全弁が動いて水があっという間になくなるとしたいのだが、これが実測データにまったくあっていない。このデータはIAEAにも出されてまだ生きているが、この実測値とシミュレーションの違いがどう説明されているか。
これを東電や国は何て言っているのか。水位が早く落ちてしまったので炉の中の水がなくなって、水位計の中がからからになってしまった。そのため実際には早く落ちたのであって、データの方は信用できないといっている。都合が悪くなるとそのデータはすねてウソにしてしまう。
しかし実測では二つの水位計が同じような水位の低下を記録している。水位計がだめになっていたのなら、どうして二つが同じ傾向をしめしているのか。こうしたことには一切答えず、これはウソのデータだと切り捨てている。
この切り捨てがまったく説得力が無い。このように自分の都合のいい計算をして、それにあわないものは切り捨てていく。これの無理なところは、原子炉圧力容器を早くメルトダウンさせて破損させて、そこから高温高圧の蒸気が噴き出したことにすると一気に格納容器の圧力があがるよというストーリーを頭に描いてそれを実現するだけのシミュレーションを行っただけだ。これはあしきシミュレーションだ。
やるんだったら、配管の破断のモードを積極的に入れて、圧力抑制室の破損も入れて、配管のどこが壊れたとかも入れて、あるいは穴の大きさを止めて考えなくてはいけない。
動いていたものを動いていないとか、測定された装置はウソだったとかそういうシミュレーションを国際的に評価してもらおうといって出すこと事態、暴挙というか、あきれると言うか。しかもそれを方向付けをしてしまう。世間一般の方の受けを狙っているとさえ考えられる。
だから今後事故解析をされる方が、運転者の聴取をきちんとすることと、記録をまず、それが死んでいるか生きているかはあとで判断すればいいので、いろいろな条件を入れてやるといいと思う。
その中で一つ心配なのは、畑浦さんの事故調査委員会ができた。その下に3つのチームができた。その方が任命されたが、その方がいるところが、東京大学のシステム量子工学科、原発推進者の本部のようなものだが、またそこから選ばれている。僕などはシステム量子工学科は相当にくさいと思っているからそういうところだけは避けて欲しかったという気がする。
またそういう方がなって、東京電力も事故調査委員会を作るという。その外部の委員会にも、元システム量子工学科の偉い先生が委員長に就任している。それでこれまでと違う事故調査がしてもらえるのかというと、非常に不安な気持ちになる。
だいたいそれぐらいです。
終わり
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