明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1604)~なくそう原発・まもろう命~事故が起きたら京都は危ない!「原発からの命の守り方」-右京区母親大会でお話します!(27日)

2018年10月22日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181022 23:30)

● 10月27日(土) 京都市右京区母親大会にご参加下さい!

今週末の10月27日土曜日に京都市右京区で行われる第60回右京母親大会でお話します。
そもそも母親大会は原水爆禁止を掲げて1955年から始められた大会でした。命を守らんとする女性たちの訴えが母親大会を軸に世界に広がり、やがて1963年の大気中核実験禁止条約締結(米ソ英)に結実しました。
その点で僕自身の命をも守って下さったのがこの大会です。すでに各地での開催におよびいただいていますがとても光栄に思っています。今回も心を込めてお話させていただきます。
タイトルは記事の表題に掲げた通りです。チラシをご紹介します。

● 地震による原発崩壊の可能性がますます高まっている

「原発からの命の守り方」全般についてお話しますが、今回、特に強調したいのは地震と原発の関係性です。
周知のように南海トラフ地震の可能性がどんどん高まっているのに、広島高裁の仮処分で止められていた伊方原発3号機が今月末にも再稼働されようとしているからです。
しかも伊方原発は中央構造線という大きな断層帯のほぼ上に立地しています。こんなところの原発を稼働させるのは本当に愚の骨頂です。ネットで反対署名が展開されているのでこれもご紹介します。
https://www.change.org/p/%E5%8D%97%E6%B5%B7%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%95%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%81%AE%E5%8D%B1%E6%A9%9F%E3%81%8C%E8%BF%AB%E3%82%8B%E4%B8%AD-%E4%BC%8A%E6%96%B9%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E5%86%8D%E7%A8%BC%E5%83%8D%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%AF%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?recruiter=50897116&utm_source=share_petition&utm_medium=facebook&utm_campaign=psf_combo_share_initial.pacific_abi_gmail_send.variation.pacific_abi_select_all_contacts.select_all.pacific_email_copy_en_gb_4.v1.pacific_email_copy_en_us_3.control.pacific_email_copy_en_us_5.v1.lightning_share_by_medium_message.control.lightning_2primary_share_options_more.control&utm_term=439643&fbclid=IwAR0SpfRMoHxhTHSTDj0kU0Aa4MnjNMhFTpgULXm4SLNtcepMkXmm8hXNU7g

● ひずみ集中帯の上にある原発はアウトだ!

地震については「ひずみ集中帯」も重要です。この国は東日本大震災や迫りくる南海トラフ地震に顕著なように地球上を覆う10数枚のプレートの4枚がぶつかる稀有な地震地帯に位置しています。
日本列島が乗るプレートに向けて他のプレートが海から押し寄せてきて、下に滑り込んでいるのですが、巻き込まれた陸地側のプレートが跳ね上がって起きるのが海溝型地震で、それまで列島各地に「ひずみ」をもたらして起きるのがひずみ集中帯地震です。

この「ひずみ集中帯」で起こった地震が北海道胆振東部地震であり、大阪北部地震であり、鳥取中部地震であり、熊本地震でした。いや柏崎刈羽原発を直撃した中越沖地震もそうでした。
注目すべきことは「新潟―神戸ひずみ集中帯」の存在です。なんと若狭湾の原発銀座がすべて入っていて地震の巣になっているのです。断層だけを見ていてはいけない。「ひずみ集中帯」を直視しなくてはいけない。

そもそもなぜこんなところに原発をたくさん作ってしまったのか。答えは「知らなかったから」です。ひずみ集中帯が発見されたのは阪神大震災よりもあと。GPS機能が発達し、各地にあらたな地震計を備えられるようになってからです。
日本の原発はすべてこの「ひずみ集中帯」が発見される前に土地調査を行い、設計し、建ててしまったのです。だからもう「アウト!」なのです。
実際にすでに中越沖地震で柏崎刈羽原発が襲われたのです。壊滅的な事故に至らなかったのは「僥倖の産物」でした。いやつい最近だってひずみ集中帯にある苫東厚真火力発電所が地震に襲われ、北海道がブラックアウトしてしまいました。
柏崎刈羽原発は破局的事故に発展しても不思議はなかったし、苫東厚真発電所事故によるブラックアウトが真冬に発生したら多くの人が凍死してしまったでしょう。2度あることは3度ある!いやひずみ集中帯地震そのものはもっと多発しています。

● 原発は再稼働するたびに壊れている

さらにこの上に重なるのが、この間、原発再稼働の度に故障事故が起こっていることです。現在まで再稼働された原子炉は全部で9つですが、このうちの5つの原子炉で合計9回も故障事故が起こっています。
なんでそうなるのかというとどの原発も福島原発事故後にいったんは長い間、止まっていたからです。長く止めているとさまざまな不具合が生じるのが機械の宿命です。
実は電力会社自身がこのことを熟知しながら、さながら博打のように再稼働を進めているのです。それを象徴するのが本年3月23日に再稼働した玄海原発3号機が蒸気漏れ事故を起こした際の当時の瓜生九電社長の以下の言葉です。
「7年間止めていたため『何が起こるか分からない』と言っていたが現実になってしまい、非常に残念だ」
以下に故障事故一覧を提示します。

● 原発の危険性をリアルにおさえて災害対策を進めよう

こうした原発の危険性をリアルに捉えたとき、一番の災害対策は原発を止めることであることは明らかです。だから僕は災害対策の軸の一つに原発を止める努力を一層強めていくことが必要であることをみなさんに訴えたいです。
しかし現にいま、7基の炉が動いています。(川内2基、玄海2基、大飯2基、高浜1基)。だから事故に備えざるを得ない。
また原発は停まっていても燃料プールに核燃料が沈んでいる限り危険なので、安全が確保されるまで長期にわたって災害対策は続けなければならないのです。

以上、27日土曜日もこれらを含めてみなさんと原発からの命を守る力の向上を図りたいと思います。
お近くの方、ぜひお越し下さい。

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明日に向けて(1603)海側遮水壁ができるまで東電は有効な対策を採ることなく海を手ひどく汚染させてきた!-放射能汚染水問題(8)

2018年10月21日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181021 09:00)

放射能汚染水問題の続きです。

● そもそも遮水壁完成以前に膨大な放射能が海に流されてしまった

これまでの連載で、福島第一原発のサイトからいまもなお意図的な放射能汚染水の排出が行われていることを書いてきましたが、より重要なのはそもそも海側遮水壁ができるまで膨大な量の放射能汚染水が海に流されてきたことです。
しかも事故当初、東電はこのことを熟知していながら、できるだけ経費を使わないためにきちんとした対応を行わずに流れるにまかせていました。
意図的な排出とは言えなくても、知っていて止めようとしなかったのですからこれまた犯罪的な汚染水流入の黙認でした。

● 国の排出基準の62万倍の「高濃度汚染水流出」を確認

放射能汚染水問題を時系列に沿って捉え返してみましょう。最初にクローズアップされたのは2011年4月2日のことでした。「高濃度汚染水の流出を確認」と報道されました。
さらに同年5月11日に原子炉3号機の「ピット」と呼ばれる地下の側溝からセシウム134が「一立法センチメートル」あたり37000ベクレルもある放射能汚染水が漏れてしまったと報道されました。国の基準の62万倍ものものでした。
しかしこれらの発表はいずれも「濃度」でしかなされませんでした。総量が問題になるにもかかわらずです。

さらにこの年の暮れの12月4日に汚染水を処理している施設から45~220トンの汚染水が海に流れてしまったと発表されました。

● 少なくとも462兆ベクレルのストロンチウム、4720兆ベクレルのヨウ素とセシウムが2011年に流れ込んだ

この3回に渡る汚染を朝日新聞が独自に精査し少なくとも462兆ベクレルのストロンチウムが海に流れ込んでしまったという試算を行いました。
東電自体は4、5月の汚染水の海への流れ込みで放射性ヨウ素とセシウムが4720兆ベクレル流れ込んでしまったという推計を出しました。
これらの数値は「最低でもこれだけの放射能が海に流れ込んだ」と捉えるべきものです。ようやく目にできたものが推計されただけだからです。
この間も膨大な地下水が汚染水と混じって海に向かっていたのですが、この構造全体にはその後も長期間にわたってメスが入れられませんでした。

● 馬淵氏、空本氏が、東電の汚染水への未対処を暴露

東電はこのことを当初から知っていました。山側から大量の地下水が流れてきて建屋に入り込んで汚染水となることはいわば「常識」とも言える事態だったのです。
当時、民主党政権のもと、事故対策にあたった二人の議員がこれを暴露しています。一つは馬淵澄夫氏の書いた『原発と政治のリアリズム』、もう一つはその馬淵チームの下で動いていた空本誠喜氏が書いた『汚染水との闘い』です。

これらによると事故対策の過程で地下水問題に気が付いた官邸チームが早くから山側に遮水壁を作り地下水の流入を防ごうとしたことに対して、東電が執拗に抵抗し、計画が見送られてしまったというのです。
なぜ東電は抵抗したのか。この段階では事故を起こした東電の資金で対処をなさなければならなかったからでした。東電は海ではなく自社を守るために抵抗し、汚染水漏れへの対処をネグレクトしたのです。
空本氏は国費投入に踏み切らなかった政府をも批判していますが、しかし東電の犯罪性はあまりにも顕著です。

● 選挙における自民党の圧勝後に東電が汚染水漏れを認めた

ではいつから国費を使った対応が始まったのかと言うと2013年7月21日の参院選における自民党の圧勝、民主党の惨敗のあとからでした。なんと東電はこの選挙翌日の7月22日に初めて海への放射能汚染水の膨大な漏れ出しを認めたのでした。

この過程を見ると、選挙前に東電が政府与党となった自民党などと事前に交渉し、自分たちを訴追しないことや、国が対策費を出すのと引き換えに選挙前に事実を発表しないという取引を行ったことが推測されます。
東電はこの後に、重大な事実を小出しに連発していきました。その中で大きなことは、8月2日になんと1日400トンの放射能汚染水が海に流れ込んでいることを発表したことでした。
この間、どれほどの放射能が海に流れ込んだのか。空本氏は自著の中で「約800日間でセシウム137で約1~20兆ベクレル、ストロンチウム90で約7000億~10兆ベクレル、トリチウムで約20~40兆ベクレル」と試算しています。

● 政府が国費の投入を表明

政府はこれに対して8月7日に独自の試算と対策への乗りだしを発表しました。もし政府が8月2日の東電の発表によって事実を知ったのなら、こんな短期間で独自の試算や対策への乗りだしを表明することなどできるはずがありません。
しかも選挙のすぐ後にですから、ここからも東電と政府が放射能汚染水対策を事前に打ち合わせていたことは明らかです。その点で東電は自社の防衛にまんまと選挙=有権者をも利用した可能性が濃厚です。
このように東電の罪は福島原発事故を起こしたことにとどまらないのです。その後の事故対応のあり方もあまりに犯罪的だったのです。

続く

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明日に向けて(1602)世界を変えるための「たいまつ」として―連載1600回越えにあたりカンパを訴えます!

2018年10月20日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181020 23:30)

● 連載1600回を越えました!

「明日に向けて」の連載が1600回を越えました。「明日に向けて」と題する以前の「東北地方太平洋沖地震について」「地震情報」「地震続報」で合計46本の記事を書いているので通算で今回が1648本目の記事になります。
記事は実質的に2011年3月11日から書き始めているので今日まで2778日で1648本の記事を書いたことになります。
連載1600回越えに際してみなさまにカンパを訴えます。1600回を越えた展開の中で僕は従来の活動の枠を踏み越えて、新たな領域にチャレンジしようと思っています。一言で表せば「世界を変革することへの挑戦」です。

● 放射線防護活動を拡大し世界の変革へ!
  
「明日に向けて」の執筆とこれを軸とした活動で、僕は放射線被曝から人々の命を守ることを軸に据えてきました。そもそもの出発点は福島第一原発事故の時に人々に被曝から身を守るすべを伝えたいと思ったことにあったからです。
この間、僕はそれを災害全般へと適用・拡大してきました。また「戦争と平和」の問題への言及も増やしてきました。戦争からもみんなの命を守りたいです。
そしてそのためにはこの混沌とした世界そのものを変えること、革命を進める中でこそ、真に実現することが可能だという確信が広がってきました。そのために道を照らす「たいまつ」として「明日に向けて」を書き続けます!

● 第二のレールム・ノヴァルムのガイスト(魂)を受け継いで

この7月から社会的共通資本の勉強会を始めたのも、直接的には友人たちから頼まれたからですが、世界総体の流れを変えたい、そのために「社会的共通資本」のアイデアを生かしたいとの思いが強まったからでもあります。
この間の内容の紹介で宇沢先生がローマ法皇、ヨハネ・パウロ2世のアドバイザーとなり、第二のレールム・ノヴァルム(革命)の執筆に際して「社会主義の害悪と資本主義の幻想」という副題を提案したことを書きました。
宇沢先生は既存の社会主義に限界を感じつつ、一方で世界の私有化を進める市場原理主義を「幻想」と断じ、警鐘を鳴らされたのです。1991年のことでした。僕はこの観点をしっかりと受け継ぎたいと思っています。

● 社会主義の限界をいかに越えるのか

社会主義、より正確にはマルクス・レーニン主義に領導された社会主義は、一時期、世界の変革の希望の担い手であり、僕も高校生の時(1978年)にこうした思想を掲げるとあるグループに飛び込んで奔走してきました。
しかし社会主義は大きな限界を持っていました。とくにレーニン主義には一部の官僚(前衛)が大衆(後衛)を率いていくというパラダイムがあり、民主的な討論を媒介とした合意の形成を軽視する限界が色濃く介在していました。
それはしばしば前衛勢力同士の間での不毛な対立をも引き起こしました。世界中でこうした限界の露呈が続き、やがて社会主義政権そのものが崩壊し、社会主義の魅力が失われました。官僚が全てを牛耳る中で自己変革が行き詰ったのが大きな要因でした。

● 問われているのは何を継承し何を越えるかだ

もっとも僕はこのことで社会主義のアイデアのすべてがダメになってしまったのだとは考えていません。というよりも少なくとも僕の目に映るのは失敗したのはレーニン主義的社会主義であり、他の社会主義にはまだまだ可能性があります。
むしろいま世界は社会主義の再評価に向かいつつあります。アメリカで社会主義的な政策を掲げたサンダースが躍進し、いまなお若者の強い支持を集めていることはその一つの象徴です。
そしてそうであればこそ、僕は一時期は世界中の多くの人々の心を捉えたレーニン主義的な社会主義の何が誤っていたのか、何を越えていかなければならないかを、その影響下にあったものの手で自己変革的に捉え返すことが大事だと思うのです。

● 世界とのつながりを深めて!

そのためにいま僕は国内においてより幅広く多くの人々とつながるとともに、世界の多くの人々と大きくつながることの重要性を痛感しています。
この間、僕は繰り返し世界に飛び出してきました。核の問題は世界民衆が共通に抱え、共同作業の中で解決できる問題だと考えてのことです。そのために今年「世界とつながる公開秘密会議」をスタートさせ、この夏、ホームページも立ち上げました。
しかしそもそもこの問題も資本主義のもとで起こってきたのです。だからそこにも世界の人々と共に切り込む必要がある。このホームページも活用して、地球上にいるすべての人と世界を変えるための思索と行動を共にしたいです。


● カンパを訴えます

これらの活動に向けて、微力であろうとも、変革の可能性を照らす「たいまつ」として「明日に向けて」を書き続けます。ぜひともみなさんのお力をお寄せください。
僕の活動はみなさんのカンパによってこそ支えられています。どうかよろしくお願いします!
以下、振込み口座を記しておきます。

*****

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
他の金融機関からのお振り込みの場合は
店名 四四八(ヨンヨンハチ) 店番448 預金種目 普通預金 口座番号 2266615

「世界とつながる公開秘密会議」のホームページを示しておきます。
https://opensecretmeeting.com/?lang=ja

この活動に直接に力を貸したいと思う方は以下にお振込みください。

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14440 番号50074231
他の金融機関からのお振り込みの場合は
店名 四四八(ヨンヨンハチ) 店番448 預金種目 普通預金 口座番号 5007423

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明日に向けて(1601)宇沢先生はローマ法皇のアドバイザーも務められた!-社会的共通資本に学ぶ(2)

2018年10月19日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181019 11:00)

社会的共通資本についての考察の続きです。

● ローマ法皇のアドバイザーとして

宇沢先生は本当にいろいろな方と出会い、交流された方でもあって、例えば前の前のローマ法皇のヨハネ・パウロ2世のアドバイザーをされていました。バチカンの歴史で初めての異教徒のアドバイザーだったそうです。
ヨハネ・パウロ2世は1978年10月から2005年4月まで法皇を務められました。どういう時代だったのかというと80年代後半に東欧の社会主義が瓦解していったときで、最終的に「ソ連」もなくなり、社会主義政権がほとんど無くなりました。
資本主義や市場経済の勝利と言われたのですが、法皇はそのことをそのまま受け入れていいのかとすごく悩まれて、宇沢先生をアドバイザーに指名されたのでした。
この方はまた法皇として初めて広島・長崎に来られた方でした。就任から3年後の1981年2月のことで長崎原爆の爆心地である浦上天主堂も訪れられ、戦争は人間が犯した愚かな過ちだと語られました。とても心が温かい方だったそうです。

● 第二のレールム・ノヴァルム(革命)にアドバイス

宇沢先生に連絡をしてこられたときは、ちょうどカトリック教会の公文書である回勅を書かれようとしていたところでした。回勅は全世界の司教に法皇の立場を示すものです。
100年前に当時の法皇レオ13世が「レールム・ノヴァルム」と名付けた回勅を出されました。ラテン語で「新しいもの」を意味し、ときに「革命」とも訳される回勅でしたが、これには「資本主義の害悪と社会主義の幻想」という副題がつけられていました。
レオ13世は資本主義が爛熟して貧富の格差が拡大していること、また恐慌などが繰り返されている現状に対し、カトリック教会がその是正のために社会正義を掲げた関わりを強めることを打ち出されたのでした。
レオ13世は同時にこの問題が、当時勃興し始めていた社会主義では解決できないことも語っていました。

それから100年を経てヨハネ・パウロ2世が第二の「レールム・ノヴァルム」を出そうと宇沢先生にアドバイスを求めて来られたのですが、先生は即座に「社会主義の害悪と資本主義の幻想」という副題を提案されました。
既存の社会主義は限界に来ており、社会主義政権のほとんどが民衆に対して抑圧的になっていてもはや「害悪」としか言えない。しかし市場経済によって全てを置き換えればうまくいくというのも全くの幻想だと宇沢先生は説かれました。
ヨハネ・パウロ2世はこの意見を取り入れて1991年5月に第二のレールム・ノヴァルムを出されました。その後、この年の暮れの12月にソ連邦が崩壊しましたが、レールム・ノヴァルムはそこにも影響をおよぼしたと言われています。
いやそのさきの「市場経済によって全てを置き換えればうまくいくというのは幻想だ」という指摘も社会主義の崩壊の後に来るものへの重要な提言になっています。

● 教皇の部屋で極上のワインを飲んで・・・

さてそんなアドバイスをされた宇沢先生ですが、実際にバチカンに招かれ、ヨハネ・パウロ2世のお部屋でごちそうになったことがあったそうです。宇沢先生はたいへんお酒が好きな方で量もたくさん飲まれました。
僕は直接見たことはないですが若い頃はビールを「何本という単位ではなくてケースで飲んでいた!」という逸話を耳にしたことがあります。

このときも先生曰く、極上のワインが次々に注がれ、どんどん飲んでしまってすっかり良い気持ちになってしまったそうです。それで先生、ヨハネ・パウロ2世にこう言われました。
「いま、人々の魂は荒廃し、心は苦悩に侵されている。この世界の危機的な状況のもとで、あなたは倫理を専門とする職業的専門家として、もっと積極的に発言しなければならない」。
これに対してヨハネ・パウロ2世はニコニコしながらこう言われたそうです。
「この部屋で、私に説教したのは、お前が最初だ」
(You are the first to preach me here!)

なおこれらは前回紹介した書、『人間の経済』『経済学と人間の心』のいずれも冒頭で紹介されています。先生にとっても心に深く残るエピソードだったのでしょう。

● 宇沢先生についてのさまざまなエピソードを交えながら社会的共通資本についてお話してきます!

宇沢先生はそんなエピソードがたくさんある方で、いろいろな方から好かれていて、たくさんのお仲間もいました。僕もそんないろいろな方とお会いする機会に恵まれ、さまざまな角度から社会的共通資本の考え方に触れることができました。
こうして得た経験は僕にとっての宝物です。そんなことも通して学んだ社会的共通資本について、さまざまなエピソードも交えてお話していきたいと思います。
初回はまずその前提として経済社会がどのように動いて来て、その中で経済学はどのようなことを主張し、どのような役割を果たして来たのかをお話していきたいと思います。

続く

*****

社会的共通資本勉強会第4回
第2回・3回で『自動車の社会的費用』について熟読しました。
今回はそれを踏まえて『自動車の社会的費用』で展開されたことのまとめを行い、社会的共通資本のアイデアをどんな風に生かすのか、みんなで討論します。
10月24日(水) 午後7時から9時
市民環境研究所にて(京都市叡山電車元田中駅から5分)
https://www.facebook.com/events/589590494805103/

#社会的共通資本 #宇沢弘文 #経済学 #ローマ法皇 #ヨハネ・パウロ2世

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明日に向けて(1600)あたりまえの幸せを取り戻すための経済学―社会的共通資本に学ぶ(1)

2018年10月18日 19時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181018 19:00)

7月より「あたりまえの幸せを取り戻すための経済学 社会的共通資本勉強会」を始めました。主催は市民環境研究所/Peaceflagプロジェクト/たねまきプロジェクト/すみれやの4団体です。
すでに3回を終え、10月24日に4回目を行います。詳しくは以下の記事をご参照ください。

明日に向けて(1597)「社会的共通資本」のアイデアこそが世界を救う!(10月24日水曜 勉強会へ)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/935c1143fc9ec37a98c63a2592ea394a
https://toshikyoto.com/press/2907

この勉強会と並行しつつ、そこで語った内容を記事化していこうと思っています。長い連載になりますがどうかお付き合いください。

● 社会的共通資本勉強会を進めるにあたって

市民がつながる夜間学校 「あたりまえの幸せを取り戻すための経済学 社会的共通資本勉強会」
7月17日 市民環境研究所にて

今回から社会的共通資本についての勉強会を始めますが、最初に勉強会への呼びかけの文章をご紹介します。主催団体の一つのPeaceflagの井崎敦子さんの手によるものです。

「経済学者・宇沢弘文先生をご存知でしょうか。私は最近教えていただきました。最初、サンタクロースのような風貌に驚きました。今は宇沢先生の著書の中でも一般向けのわかりやすいものを読み始めたばかりです。社会的共通資本←この段階で難しい。
けれど読んでみると、あれ?なんだか読める。そして、ずーっと考えてきたことの答えが書いてあるような気持ちになってしまいました。
学ぶこと、思索すること、日々の暮らしとは縁遠いようですが、普通の市民がやっていかないと、なんかこの偏った社会は全然健全にならない気がします。高学歴の人が企業のトップも官僚も政治家も独占しているからおかしなことになるんじゃないだろか?
小学生時代を思い起こせば、人気があったのはガリ勉くんじゃなかったよな。子供は敏感に人を見る。学歴だけで独占しないでよね、社会を。
というわけで、市民のための夜間学校、まずは経済学から。宇沢先生の最後の教え子、守田敏也さんを講師にお迎えしてスタートします。」

この文章、とてもいいなと思いました。また宇沢先生もきっと喜んでくださるに違いないと思います。宇沢先生はこういう感覚を喜ばれる方です。

● 初めての方には『人間の経済』がお勧めです!

その宇沢先生に僕は2005年から2009年まで同志社大学社会的共通資本研究センターに客員フェローとして拾っていただき親しく指導をしていただきました。
宇沢先生はある程度近づくととても怖い先生でもあって、僕はたくさんのことを教わりながら、一方でどんなに叱られたか分かりません。指導する時のとても厳しい一面を持った方でもありました。
でもいまはそれも含めて師としての宇沢先生の深い温情に心の底からの感謝の念を深めるばかりです。宇沢先生の志を受け継ぐ一人として今回の勉強会も頑張りたいと思っています。

さて学習会の初めに宇沢先生の本を紹介しようと思ったのですが、とてもたくさんあって「まずはこの1冊」に何をあげれば良いか決めかねました。でも最近、新潮新書から『人間の経済』という本が出ていることを知りこれをご紹介することにしました。
素敵な序を宇沢国際学館の占部まりさんが書いています。宇沢先生の娘さんです。
ここには講演やインタビューが1冊の書物にまとめられています。先生自身がお亡くなりになる直前まで出版社の方と相談して編み上げたものなのだそうですが、宇沢先生のインタビュー記事はとても分かりやすくて面白いのです。
書き下ろされた書だと先生は経済学者ですからどうしても学問的な話が出てくるので経済学の素養のある人でないと分かりにくい面もある。
もちろんそれもとても大事なのですが、この書は昭和天皇にお会いしたときのエピソードから入っていて読みやすいのです。初めての方に特にお勧めです。

あと「社会的共通資本としての教育」について論じた『日本の教育を考える』はぜひ読んでみて欲しい本です。先生の旧制一高の時のエピソードが書かれています。
なんと第二次世界大戦下の東京の学校で毛沢東の『持久戦論』という「中国人民がいかにすれば日本帝国主義を打ち破れるか」を論じた書が回し読みされていたのだそうでとても驚かされる本です。
この他、『経済学と人間の心』も読みやすいし、心温まる話が多いのでお勧めです。

● 宇沢先生とノーベル賞

宇沢先生は世界的に有名な方で、先生の先生や同僚、教え子からたくさんのノーベル経済学賞受賞者が出ています。先生も毎年ノミネートされていて、社会的共通資本研究センターにもノーベル賞発表の時期になると必ず記者が近づいて来ました。
中には「宇沢先生をとても尊敬していて、これから社会的共通資本について学びたいと思っています」などという方もおり、センターにある先生の本を差し上げたのですが、発表がなされ、未受賞に終わると瞬く間に去って行かれました。

宇沢先生が受賞されなかったのはノーベル経済学賞のミステリーとも言われていたそうですが、どうもノーベル委員会は反政府運動へのコミットなどを嫌うらしいとも聞いたことがあります。
それで宇沢先生が成田空港をめぐる闘争の調停に奔走されたことなどが受賞にいたらなかった理由ではないかというのですが、真相はまったく分かりません。
これらについて先生自身は何もおっしゃられませんでしたが・・。
(ちなみに2018年の経済学賞を受賞されたノードハウスも宇沢先生の影響を受けられていたそうです。経済学者の諸富徹さんが講演でご指摘されていました)

続く

社会的共通資本勉強会第4回
10月24日(水) 午後7時から9時
市民環境研究所にて(京都市叡山電車元田中駅から5分)
https://www.facebook.com/events/589590494805103/

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明日に向けて(1599)原発から命を守るために―5被曝労働と原発

2018年10月17日 16時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181017 16:00)(20201123 改訂)

京都市左京区養徳地区で配られている月刊紙『ようとく』に連載中の「原発から命を守るために」の5回目をお届けします。

原発から命を守るために―5被曝労働と原発

原発は被曝労働を前提とした悪質プラントだ

連載の3回目で「なぜ原発を動かしてはならないか」という問いを立て、「巨大事故を起こす可能性があるから」「10万年も管理しなければならない核廃棄物を作りだすから」という答えを導き出しました。
今回はその続きとして原発が日常的に労働者を被曝させていることを指摘したいと思います。
原発を「ハイテク」と誤解している方がおられますがそんなことはありません。原子炉が作られたのは1940年代前半でした。原発そのものも基本設計は1950年ごろにできています。
その原発のすべてで繰り返し故障事故が起こってきましたが、そのたびにたくさんの労働者が投入され、手作業での修復などもなされてきました。酷い時には漏れ出した高濃度の放射能汚染水を雑巾で拭いたりもしています。
いまも福島で被曝労働が続いているだけでなく、再稼働の度に起きている故障事故でも被曝労働が強制されています。

社会的に不利な立場の人々が被曝させられてきた

このため現場には危険性について何も知らない知的障害者や外国人、未熟練労働者がしばしば使われてきました。時にはヤクザの組員が半ば強制的に放り込まれるなど、あまりにひどい実態があります。
現場では放射線が身体にどれだけ当たったかを測る「ガラスバッジ」を使い、危険値を越えると鳴るアラームなどもありますが、被曝量が増えると法的に働けなくなるからとバッジを外し、アラームを切ってしまう「鳴き殺し」という事態も常態化しています。
反対に言えばそんな被曝労働がないと動かせないのが原発なのです。だからその存在は倫理的に許されないのです。
すべての労働者を守るために「被曝労働がなければ成り立たない原発をやめよ」と訴えましょう。

なお原発労働者の原発内での写真を世界で初めて撮って公表した樋口健二さんの写真と、彼を中心に被曝労働を取材した番組のURLを添えておきます。


被曝する労働者達:下請け・日雇いが支える原発の実態
https://youtu.be/wuvwO1RlIVo

続く

#被曝労働 #原発労働者 #樋口健二 #ガラスバッジ #鳴き殺し

*****

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明日に向けて(1598)福島原発サイトからは膨大な海洋汚染がすでになされ今も意図的な排出が続けられている(この間のまとめ)-放射能汚染水問題(7)

2018年10月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181016 23:30)

● 放射能汚染水問題の連載について

放射能汚染水問題を連載していますが、これは僕が2016年夏に語った「毎日400トンの汚染水が海に出ている」という内容をコープ自然派さんがカタログに掲載したことに対し、水産庁から削除要請がなされたことを受けたものです。
その後の分析で僕がつかんだのは、膨大な放射能汚染水の海への流出は2015年10月に海側遮水壁を作ったことで止まったとされていることでした。この点で僕にはミスがありました。申し訳ないです。
しかしそれ以上に海洋汚染のひどい実態をよりリアルにつかむことができたので6月16日より連載を始めました。

明日に向けて(1537)福島第一原発放射能汚染水問題を振り返る!(1)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/303ecfad5408a218b3059a527c519e9c

その後、自然災害の連発で途切れた連載を10月3日から再開しました。

明日に向けて(1581)放射能汚染水の投棄は今も継続中!-福島第一原発放射能汚染水問題を振り返る!(2)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8650c6d9a1a41544e1ee943226163c50

● すでに大変な汚染が起こりいまも継続している

連載における最重要ポイントは福島原発事故から今日まですでに膨大な放射能汚染水が海に流れ込んでしまったことです。
東電は今、タンクに貯めた大量のトリチウムを含む汚染水の投棄を目指していますが、すでに大量に流したからこそ、もうこれ以上少しも汚すべきではないことをしっかりおさえておきたいです。

その際、大事な点は、現在も井戸から汲み上げた汚染水が処理後に流されていることと、そもそも東電は地下水と汚染水がまじわり海に出ていくことを当初から知っていながら対策をサボタージュし膨大な汚染をもたらしたことです。
より深刻なのは二つ目ですが、この間、一つ目についてもどんどんと新しいことが見えてきて、連載が少々複雑になりました。それでここで再度まとめを行っておきます。

● 意図的排出が続いている

汚染水問題は原発サイトの山側から大量の地下水が流れてくることで深刻化しています。
原子炉がメルトダウンし熱を放ち続けているので大量の冷却水が投入されていますが、ここに地下水がまじって汚染水を形成し、海へと流れだしてきたのです。

東電は「取り除く」「近づけない」「漏らさない」ことを対策の3本柱としてきました。
「取り除く」とは原子炉建屋内の汚染水を汲み上げ、浄化装置(アルプス)を通してタンクに貯めること。「近づけない」とは建屋に地下水が入る前に井戸を掘って汲み上げること。
「漏らさない」とは建屋内で作られた汚染水を海に出さないこと、海側に遮水壁を作りつつ、原子炉と遮水壁の間にも井戸を掘って汲み上げて独自に浄化してきました。
再び東電の説明図をご紹介しておきます。

東電は山側の「地下水バイパス」から汲み上げたものは検査してそのまま捨て、原子炉周りの「サブドレン」、原子炉と遮水壁間の「地下水ドレン」からのものは、アルプス以外の浄化装置を通して捨てています。
この際、放出基準をトリチウム1リットルあたり1500ベクレル以下、セシウム134と137を1ベクレル以下、全ベータ核種を「地下水バイパス」は5ベクレル以下、「サブドレン」「地下水ドレン」を3ベクレル以下と決めています。
トリチウムの規制値を東電は厳しいものと自己評価していますが、世界にはもっと厳しい国や地域もあります。

● 三タイプの井戸に関する疑義

さて井戸を分析していて東電の汚染水発生メカニズムの説明が実態とあっていないことに気づきました。
原子炉内の核燃料と接する前のものである地下水にかなりのトリチウムが含まれているからです。地下水は雨によって形成されますが、となるとこの雨がすでにトリチウム汚染されているとしか考えられない。

明日に向けて(1585)汚染水発生メカニズムの説明がおかしい!・・・放射能汚染水問題-(3)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9f0bc7d46d395c37ee6764e8f895dae4

明日に向けて(1586)トリチウムの雨が降っているのではないか?-放射能汚染水問題(4)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/7b99ac72c424ece8a69ce3ccfdd4aa12

● 薄めて流しつつすでに5000億ベクレルのトリチウムなどが放出された

排出にあたって東電は濃度規制を行っていますが、それでは薄めれば幾らでも基準をクリアできます。
実際にも「サブドレン」に原子炉の地下に入る前のものと入った後のものが混在しているし、ここにやはり汚染されたあとの「地下水ドレン」から汲み上げたものが一緒にされていて、薄めがなされています。

排出量は「地下水バイパス」からは2014年4月から2018年10月12日までで413,225トン、「サブドレン」「地下水ドレン」からは2015年9月から2018年10月11日までで614,075トンです。
概算で前者は1日あたり約260トン、後者は1日あたり約560トン。必ずしも毎日流してはいませんが、平均すれば合計で1日800トン以上の汚染水排出が続いています。
そこには概算で約5000億ベクレルのトリチウムが含まれています。もちろん他の放射能も混じり込んでいるのは確実です。

明日に向けて(1591)トリチウムを含む汚染水を濃度だけで規制し薄めて海に流している-放射能汚染水問題(5)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/95bae75157b579887ced5d3e66451486

明日に向けて(1593)約5000億ベクレルのトリチウムが「地下水バイパス」「サブドレン」「地下水ドレン」から意図的に放出されたのではないか?-放射能汚染水問題(6)
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/21d3523a2a90f9396c2083172963a1df

以上、連載の経緯とこの間の汚染水の意図的排出についてまとめました。

続く

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明日に向けて(1597)「社会的共通資本」のアイデアこそが世界を救う!(10月24日水曜 勉強会へ)

2018年10月15日 10時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181015 10:00)

● 社会的共通資本学習会、10月24日(水)午後7時から開催です!

この夏より社会的共通資本に関する勉強会を行っています。10月24日(水)で4回目になります。
主催は市民環境研究所/Peaceflagプロジェクト/たねまきプロジェクト/すみれやの4団体。僕にとってはとても豪勢な主催のみなさんです。
この中でPeaceflagプロジェクトをけん引する井崎敦子さんが、この勉強会の名を「あたりまえの幸せを取り戻すための経済学・社会的共通資本勉強会」と命名してくれました。
これ、きっと宇沢先生がとても喜ぶに違いないネーミングです。

これまでの勉強会、第1回目は社会的共通資本とは何か、19~20世紀の世界経済とそれを反映した経済学の流れを紹介しつつ、「社会的共通資本」というアイデアの依って立つ枠組みのようなものを紹介しました。
2回目と3回目では岩波新書『自動車の社会的費用』をテキストにその内容をしっかりトレースする形で話を進めました。
おかげさまでご好評をいただけたとのこと、4回目はもう一度『自動車の社会的費用』の内容をおさらいしつつ、社会的共通資本のアイデアを私たちがどう生かすのかの討論の場を作って欲しいということになりました。

● 『自動車の社会的費用』で初めて「社会的共通資本」が詳しく展開された!

僕が『自動車の社会的費用』を取り上げたのは、この書が事実上、宇沢先生によって初めて「社会的共通資本」のアイデアを世に出した書だからです。
宇沢先生は若い時にアメリカに渡られ、近代経済学の研究を推し進めて学会の中心人物に上り詰められました。
そのころ、指導した学生たちから後にノーベル賞をとるような経済学者が次々と現れたのですが、今年、受賞したノードハウスも宇沢先生の着想からヒントを得て、その思考を発展させてきた一人だと言われています。

しかし当時、アメリカはベトナム戦争の深みにはまっていき、経済学者までもが戦争協力を要請されるようになっていきました。
宇沢先生はこの流れと決別し、日本に帰ってこられて東大経済学部の教授になられました。
しかし先生は日本に帰ってきて高度経済成長の陰で公害が頻発しており、たくさんの方が苦しんでいることにショックを受けられました。

とくに水俣を訪れ、胎児性水俣病患者さんの家を熊本大学におられた原田正純先生に連れられて回った時、「この公害の責任は自分たち経済学者にある!」と考えられ、ご自分を責められたのでした。
そこから宇沢先生は近代経済学の限界に目を向けはじめられましたが、それはかつての同僚たち、仲間たちの業績を否定することでもあり、苦難の道を歩まれました。
そしてその中で「社会的共通資本」というアイデアに開眼され、それを自動車問題に適用して書き下ろしたのが『自動車の社会的費用』なのでした。

● 資本主義の暴走=格差の拡大に対して、社会的共通資本のアイデアこそが対抗理論となる!

この3回の学習会でこうした「社会的共通資本」というアイデアが生まれた背景、そして『自動車の社会的費用』での打ちだしを同書を丹念に読み解きながら進めてきましたが、次回はいったんこれをまとめ直してお話します。
現代社会は資本主義が暴走を強め、貧富の格差が開くばかりです。しかも公共セクターが次々と壊されて「民営化」の名のもとに切り縮められ、実質所得だけでなく、社会的投資においても格差が広がっているのです。
このためどんどん資産を拡大するお金持ちにとっては「豊か」でも、社会を占める大半の人にとっては貧しく、生きづらい社会が深まりつつあります。

この流れを大きく逆転したいと世界の多くの人が考えていますが、これまでのところ資本主義に対抗するアイデアは社会主義しかなく、それが前世紀末までに無残な失敗を遂げてしまったので、有力な対抗理論が見つかっていません。
これに対し社会的共通資本のアイデアは分権的市場経済を残しつつ、社会の重要な点だけを「社会的共通資本」として共有化していくこと、しかもその管理を一部の国家官僚に任せないことにそのユニークさがあります。
「管理はその場にいる人々、専門家の手でなされるべきだ。民主主義的運営こそがカギだ」と宇沢先生は考えられていました。
ただし「専門家」を肩書で判断するわけではありません。例えば海のことであれば漁民の方が入らなくてはいけない。その場を一番知り、愛し、活用している人々の参加こそが大事なのです。

そんな社会的共通資本のアイデアをぜひともに学び、活用していきましょう!学習会へご参加下さい!

*****

市民がつながる小さな夜間学校「あたりまえの幸せを取り戻すための経済学・社会的共通資本勉強会」4
https://www.facebook.com/events/589590494805103/?active_tab=about

宇沢弘文先生の最晩年の弟子、守田敏也さんによる宇沢経済学勉強会の第4回目。
今回は2回目、3回目で行った『自動車の社会的費用』が好評だったので、もう一度、まとめのお話をしていただき、私たちがこの内容をどう生かすのかのディスカッションを行いたいと思います。
守田さんの発話をいつもより短くし、討論にたっぷり時間を割きます。最初にまたちょっとおさらいを入れていただきますので初めての方も大丈夫です!
毎回、とても刺激的な勉強会、ぜひお気軽にご参加くださいませ。会場3階となりますがエレベーターがございます。皆様のご参加をお待ちしております。

第4回目日時:10月24日(水) 19:00~21:00
場所: 市民環境研究所http://www13.plala.or.jp/npo-pie/
〒606-8227 京都府京都市左京区田中里ノ前町21 305 石川ビル
電話: 09095434044

参加費:1000円(お茶とお菓子つき)
主催 市民環境研究所/Peaceflagプロジェクト/たねまきプロジェクト/すみれや
参加お申し込みは、masuji90@maia.eonet.ne.jp井崎までお待ちしております。

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明日に向けて(1596)原発から命を守るために―4北海道地震と原発

2018年10月14日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181014 23:30)

京都市左京区養徳地区で配られている月刊紙『ようとく』に連載中の「原発から命を守るために」の4回目をお届けします。
なおこの原稿は9月6日の北海道胆振東部地震のすぐ後に書いたもの。今回の掲載にあたり、少しだけ加筆しました。

原発から命を守るために―4北海道地震と原発

海溝型地震-南海トラフ地震に備えよう

大災害が続いています。原発との関係で怖いのは地震で、この連載の初めでも6月大阪北部地震など「ひずみ集中帯」地震が多発していることを指摘しました。
この国は地球を覆う10のプレートの4つがひしめき合う世界有数の地震地帯。列島が乗っている北米・ユーラシア両プレートの下に海側から来る太平洋・フィリピン海両プレートが潜り込んでいます。
このとき一緒に巻き込まれた陸のプレートが跳ね上がって起きるのが海溝型地震で東日本大震災がそれでした。静岡以西では東南海トラフ地震がいつまた来るか分からない状態で、命を守る対策を幾重にも重ねておく必要があります。

ひずみ集中帯の上にある原発はもう絶対に動かしてはならない

一方、こうして海側から押されることが列島に「ひずみ」を作り、それで起こるのが「ひずみ集中帯」地震で9月6日に北海道で起こったマグニチュード7(厚真市)の地震もそれでした。
実はこの仕組みが分かったのは1995年の阪神大震災後。GPS機能が発達し精密な地震観測が可能になったためですが、この国の原発のほとんどはそれ以前に、つまり「ひずみ集中帯」など知らずに作られ、危険地帯の上に幾つも建てられてしまっているのです。
今回、北海道が大停電してしまったのも根本的には「ひずみ集中帯」の上に北海道の電力の半分をも賄う火力発電所が置かれていて、地震で壊れてしまったからです。これが原発だったら福島のような事態になりかねませんでした。
これらから言えることは「ひずみ集中帯」にある原発は絶対にもう動かしてはならないということです。京都直近の福井の原発銀座も「ひずみ集中帯」の上。「あまりに危険なので止めよ」の声を高めましょう。

続く

#北海道胆振東部地震 #ひずみ集中帯 #地震と原発

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明日に向けて(1595)「その時どうする?原発事故が起こったら」・・・姫路市でお話します(10月21日)

2018年10月13日 09時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20181013 09:30)

10月21日(日曜日)に兵庫県姫路市で「その時どうする?原発事故が起こったら」というタイトルでお話します。
午後1時半から4時まで。県立姫路労働会館にてです。

● 自然災害が次々と発生

今年、日本は本当に度々大きな自然災害に襲われました。
大きな影響があったものとしてあげられるのは6月18日大阪北部地震、6月29日米原市竜巻、7月豪雨、猛暑、7月末から8月初旬の台風12号の迷走、9月初旬台風21号の暴風、9月6日北海道胆振東部地震、台風24号の暴風などです。
7月豪雨で221名の方が犠牲になられた他、全国で多数の死者が出てしまいました。あらためて犠牲になられた方に哀悼の意を表明し、ご遺族のみなさん、また被災されたみなさんにお見舞い申し上げます。

この災害の連続の中で浮かび上がってきたのは、さまざまな面でこの国の災害対策がとてもではないけれども十分とは言えないことでした。
その点でたくさんの救えた命が救えませんでした。その点でこれらの災害は単に「自然災害」とは言えない側面を持っています。自然災害に人災が加わって被害が拡大してきているのです。
この状態をなんとしても変えたい!そのために災害の度に危険情報を発信するとともに、被害状況を分析し、今後の知恵となる点を抽出してきましたが、あまりの災害の連続で追いかけるのに手いっぱいという感もありました。

さらに世界に目を向けてみるとインドネシアで巨大地震と津波が起こり、2000名以上の方が亡くなったことをはじめ、自然災害+人災が続いています。
地球を覆うプレートはわずか10数枚ですから、インドネシアや太平洋の島々の周辺で続いている巨大地震が日本列島の乗るプレートに影響する可能性も十分に考えられます。
あるいは気候変動は日本ばかりか世界中を覆い、例えばスウェーデンでは8月に全土を覆う山火事が発生しました。

● 災害からの命の守り方の知恵を積み重ねよう

しかし本当に残念ながらこの国の政府はいまだに旧来の災害対策のレベルにとどまり、これだけの災害の連続に見合うような体制への見直しをしようとはしていません。
さらにはこんなに災害が連続しているのに、危険極まりない原発の再稼働すら続けています。南海トラフを震源とする巨大地震も迫っていると言うのにです。
こんなことではとても命を守れません。

ではどうしたらいいのか。どう考えたらいいのか。
災害の一つ一つに対して命を守るすべを重ねるとともに、この国難とも言える災害に備えるためにも原発を止めるべき大きな世論を作りだすことです。
さらにはオリンピックなどやめて災害対策にこそお金をつかうべきです。リニア新幹線だとか北陸新幹線の延伸などは言語同断です!こうした世論も逞しくしていかなくてはいけない。
そのために各地で「自然災害や原発災害からの命の守り方」を問う企画をぜひどんどん行っていただきたいです。もちろん僕を講師として呼んでいただければどこへでも飛んでいきます!

10月21日は姫路に行きますが、主催者の脱原発はりまアクションのみなさん、共催の生活協同組合コープ自然派兵庫のみなさんは、これまでも何度も僕を呼んでくださり、こうした企画を共にしてきました。
今回も今年起こった災害についても学びたいとのことでお声がけいただけました。これまで一緒に積み上げてきた「命を守る輪」をさらに豊かなものにするために心を込めてお話します。

● ナルボンヌから世界に発信したはりまの行動も紹介します!

さらに今回の講演では夏の南仏ナルボンヌで行った反核サマーキャンプの報告も少しだけ入れさせていただくつもりです。
なぜかというと世界に出て僕は日本民衆の脱原発行動での奮闘を伝えているのですが、その一つとして紹介しているのが関西電力姫路支店前、およびJR姫路駅までの脱原発はりまアクションのみなさんの行動だからです。

反核サマーキャンプには昨年7月にドイツのデーベルンで初めて参加したのですが、ちょうどそのときはりまのみなさんの金曜行動が250回目を迎えていて、その報告を僕はドイツで受け取りパワポに入れ込んで報告したのでした。
そして今夏、南仏に旅立つ前にはりまの行動は300回を迎えたのでした。もちろんこれもパワポに入れ込み、250回、300回を共に世界から集まったみなさんに紹介しました。
はりまの行動に世界から集ったみなさんが共感してくれました。

そんな点も踏まえて「その時どうする?原発事故が起こったら」というお話をしますのでぜひお近くの方はご参加下さい!
以下、企画情報をお伝えしておきます。

*****

自然災害続出!今こそ聴きたい守田さんのお話!
「その時どうする?原発事故が起こったら」
~知っていれば役に立つ!フリージャーナリスト守田敏也さんに聞く~

日時 10月21日(日)13:30~16:00
会場 県立姫路労働会館
内容 守田敏也さんのお話85分、質疑・意見交換
参加費 一般500円 避難者・障がいをお持ちの方200円・大学生以下無料
託児室あり(一週間前まえに事前申し込み 500円)

主催 脱原発はりまアクション 共催 生活協同組合コープ自然派兵庫
連絡先 菅野個人電話 079-421-2853
菅野Email hssss461@ybb.ne.jp

 

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