このPEN-F #2646XXは、女性のオーナーさんです。リターンミラーが剥離したため、行きつけのカメラ店経由で修理に出されたそうですが、際剥離をして私のところに来ました。ミラーホルダーを観察すると、オリジナルの接着剤が残ったままで、そこをシコシコと申し訳程度に傷をつけてゴム系接着剤で貼られています。それては剥れますねぇ。気になるのは、この業者さんは、シボ革を剥離せず(出来ずか面倒)前板端部でカッターでカットしてしまっています。これはダメでしょう。内部も殆ど何もしていませんね。これで幾ら請求されたのでしょうね。
それでは、最初からやり直して行きます。この巻上げ地板ですが、スプール軸のホルダー(ピンセット部)のカシメが不良で空回りしています。こんなのは内職さんの仕事ですが、カシメ機のストローク調整が不良だったのです。これ一つということは無いので、この辺のロットは同じ状態のものが有るはずです。再カシメをしておきます。
最近、ブレーキOリングの交換をご依頼される方が増えていますが、この個体もダメですね。全くブレーキは効いていません。分解してみると・・このOリングはゴムがビョーンと伸びてしまっています。ネオプレンゴムは油は厳禁ですけど、どこかから油が浸入していたのかも知れません。このブレーキには調整機構がありませんので、リングのインナー、アウターとそれに挟まれるOリングにも寸法公差がありますので、組み合わせによっては、ポン付けではちょうど良いダンパーにはなりません。工場での生産立ち上がり時はかなり苦労をしたのではないかと私は想像しています。これも交換。
リターンミラーは僅かにカケがありましたが、ケラレの心配はない程度ですので再接着で使用しました。全反射ミラーも交換です。ブレーキのOリングには、じつは工場で苦肉の細工がしてある(個体もある)のですね。これをすることによって、確かに組立上の自由度は上がりますが、果たして、当初の設計通りのブレーキ性能を確保できるのか(長期的にも)少し疑問があります。それより市場での品薄状態を改善することが優先されたのでしょう。