関東地方は北の高気圧が降りて来て、やっと涼しくなりました。昨夜までの熱帯夜から開放されて良く眠れるでしょう。ほっ。
前回O/HをしたPEN-FTはお譲り先が決まりました。ペンスケ展などでお話しをお伺いしますと、「O/H済みのFTを販売して」とのお声を多数お聞きしますので、なるべくご希望に沿うようにと思っておりますが、年々、程度の良いベース機も少なくなっており、レストアに掛かる工数を計算しますと、採算的には非常にきびしいのが現状です。その辺のご理解が頂ければ継続してお出しすることは可能なのですが・・
で、今回のPEN-S 3.5 ##1474XX(1967-3製)ですけどね。何やら沢山の付箋がついて来ましたね。3.5ですからそれほど経時的に劣化をしている個体は少ないのですが、この個体はトップカバーに微妙な変形があって、オーナーさんがお気にされているようです。カウンターガラス側横のビスも欠落していますので、それによっても変形が進みます。
画像にすると良く分からない程度なのですが、確かに変形というか歪みはありますね。観察すると、カウンターガラスが再接着をされていますので、その時の分解時に不用意に指で力を掛けたのでしょう。カバーは本体に取り付けた状態で構造物として強度を発揮しますが、単体の状態では非常に弱いのです。また、接眼窓部のへこみもご指摘になっていますが、この部分は元々プレスの段階でかなり内側に変形しているものが多いです。これは、接眼窓をプレスで打ち抜く後工程での変形とプレス型の構造的な問題。オリジナルの梨地では目立たなくとも、リペイント時にメッキを剥離して研磨をしてみると、接眼部が大きくへこんでいることが判明して、そのまま塗装をすると目だってみっともないので修正に苦労することは度々あります。普段はそのような修正はあえて書いていないだけです。
どうでも良いけどさ。この個体は前回の修理?から、あまり時間が経過していないのではないの? シボ革ですが、アルコール系の接着剤で貼ってありまして、ご覧のように硬化せず糸を引く状態。接着強度が無いため、シボ革自体も縮んでしまっています。そもそもO/Hだけにシボ革を全て剥離する必要がどこにあるのかな? メーカーで貼った接着強度は絶対に出せませんから、必要最小限以外の部分は剥がさないこと。この接着剤を落とす作業には閉口しそうです。
ファインダーの対物レンズも例の硬化しない接着剤で留まっていますね。鳥モチ接着かなぁ・・
シボ革の接着剤を完全に清掃して洗浄してあります。シャッターユニットは分解を受けています。特に疲労はありませんが、塗布されていた水油が気になりました。そもそも無限調整が大きくずれていましたが、これで撮影出来たのでしょうか?
オーナーさんのご希望により、カウンターガラスは新品と交換してあります。↑の方の画像と見比べてくださいね。接着とはこうするのですよ。トップカバーの変形は極力修正をしてあります。
これで完成です。縮んだシボ革は修正をしながら貼ってあります。欠落していたトップカバー横のビスですが、この個体 #1474XXの頃はPEN-S 2.8と同じスリ割り(-)ビスが正解ですので、純正のスリ割り化粧ビスをつけてあります。この後の生産機では+ビスになります。元は悪くないのに分解でコンディションを落としていた個体ですね。