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カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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SEIKO 5 DXをレストアするの巻

2015年01月09日 21時14分30秒 | ブログ

ここまで腕時計が続きますが、PENファンの方にはすみませんね。ニューファイブDXは1967年に新しいファイブとして6106Aを搭載して発売されました。25石で6振動と高性能で、それ以前のファイブより腕になじむのは私も当時使用していたので実感しています。6106-8000は代表的なモデルです。しかし、結構きびしい個体ですよ。

オーナーさんはパッキンが破れていると言われましたが、風防の黒茶のものは手垢ですよ。ずいぶんと汗かきの元所有者というか、少しは汚れを拭いたらどうなんだという気がしますが、まぁ、毎日腕に嵌めている実用品ですからね。

このように汚れがひどいケースはベゼルが固着して緩まない場合が多いのですが、何とか分離出来ました。クラックもありません。

 

テンションリング付の圧入風防ですから、専用工具で分離します。

 

 

しかし、問題はケースの傷が多いこと。観察すると、使用による自然な傷ではなく、紙やすりでゴシゴシとやっちゃってますね。風防も同じです。オークションものらしいですから、出品者がいたずらしたのでしょう。

 

元々、ラグ部の細いデザインのケースですから、あまり研磨しろはないのですが、ギリギリまで研磨をしてみました。ベゼルも研磨していますが、強度の問題がありますから、ほどほどで止めておきます。

 

おそらく一度もオーバーホールを受けていない個体だと思いますね。固着した油汚れがひどく、何度も超音波洗浄をしました。

 

巻真が抜けてしまう状態でしたが、観察のところ摩耗はなく、オリドリの油切れによる固着ですね。注油をしなが組立ていきます。

 

香箱、輪列を組んで。。軽く作動しますね。

 

 

秒針規正レバーはガンギ車を止めます。

 

 

テンプ受けを締め込むとテンプが停止する。回転錘が接触していたため。受けが変形してアガキが不足している状態。修正をしても時間の経過で戻ってしまう。天真の状態も良くないため、ASSY交換をしてあります。

 

この個体は、発売直後の1967-3月製と古いため、無給油の自動巻きマジックレバー関係は、摩耗が進んでスムーズに作動しない状態。ベアリングも摩耗により回転錘が傾き本体に接触しますので、6106Bから移植することにします。回転錘の取付けネジも変更されています。

 

グリスと注油で自動巻き機構を組みました。非常にスムーズに巻き上げています。

 

この時代としては文字盤の劣化は少ない方です。防水が利いていた個体でしょう。針を着けてユニットは完成。

 

硬化して機能を無くしたパッキンを新品に交換します。

 

 

新品の風防に交換したケースにケーシングをして、6106Bの回転錘を取り付けました。留めネジがセンター1本になりました。歩度は非常に安定しています。

 

ケースの状態や機械にも問題が多い個体でしたが、何とか仕上がりましたね。ファイブDXは次期モデルのアクタスが発売されるまでの2年という短期間に製造されたモデルですが、端正なセイコーデザインは上級モデルに通じる気品があって好ましいです。腕時計専門書にも、数あるファイブの中で特に紹介される初期型の基本モデルですね。ラグ幅19mmが以後のスタンダード18mmの過渡期という感じですが安定感があります。防水時計となってSSベルトが標準ですから当時は革ベルトで使用しているケースは殆ど見かけませんでした。夏期に黒のナイロンベルトはありましたね。ベルトに生命保険のおばちゃんがくれたアルミ板のカレンダーを着けてね。

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