今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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元箱付きのPEN-Fの巻

2018年04月19日 17時17分32秒 | ブログ

すみません。庭のレンガ敷きと並行で作業をしています。遅れて来たペンマニアさんから元箱付きのPEN-Fが来ています。いつ見てもPEN-F系の箱は豪華ですねぇ。単体のレンズまで同じゴールド箱でしたね。コストが掛かっていそうです。本体は、中々良いコンディションのようです。

元箱と本体のシリアル№は一致しています。

 

 

取説、保証書、領収書、郵便はがきなども付属していますが、有楽町駅前の銀座のお店で販売されたようですが、なぜか、はがきに捺印されている販売店のスタンプの上にラベルを貼って別の社判が押されています。領収書の社名と一致していますが、どんな事情なのでしょう?

きれいな個体なのですが、トップカバーに一か所メッキが剥離していて、母材の真鍮まで到達しています。これは補修をしておかないと浸食が進んでしまいます。

 

緑青を取り除いてプライマー塗布のうえに銀塗料をタッチアップしておきました。気休めですけどね。

 

ネジのスリ割りがきれいなので未分解と思いましたが、分解はされているようですね。でもきれいな個体です。全体的なオーバーホールをせよ、とのご指示ですので始めます。

 

シボ革が強引に剥がされていて接着はSSなどで使うかなり強力なものなので、SSかそれに準じる修理店の仕事なんでしょうね。リターンミラーのテンションが異常に高く調整されているのと無限遠の再調整をされています。ミラーアップで修理をしたのでしょう。ピンセット先の隙間がブレーキの作動範囲。シャッター作動の最後でこの距離だけ動くことによってシャッターのショックを緩和しています。ブレーキはそこそこ聞いていますので今回はこのままとします。

本体の洗浄を終えて組み立てて行きます。スプロケット軸(軸受)の摩耗はありません。あまり使われていない個体です。

 

スプール軸も組み立てます。

 

 

洗浄点検しましたが特に問題はありません。注油、グリス塗布で組立をします。

 

 

フレネルレンズカバーに当りがありますね。レンズの絞りレバーでも当てたのでしょう。

 

PEN-Fはプリズムの腐食が発生ている個体が多いのですが、この個体は清掃できれいになっています。フレネルレンズの中央にはすり傷があります。

 

完成した前板をセットします。

 

 

シボ革を鋭利なナイフ状のもので強引に剥離した形跡が前板に残っています。せっかちな作業者だなぁ。ドライヤーでゆっくり温めればきれいに剥離できるのに・・また、リターンミラーのテンションが通常ではあり得ない強さに張られていました。如何にバネのテンションを張らずにフリクションを軽減して正確に作動させるかを考えるべき。正常なテンションに戻しておきました。

全反射ミラーは腐植はありませんので再使用としています。フレネルレンズカバーは交換とも思いましたが、オリジナルの変形を修正してタッチアップしてあります。

 

底部。すでにレリーズ送り(リンケージ)は後のFTと同様な仕様に変更されています。過去に無限遠調整をされていますが正確ではありません。調整用のイモネジが剣先(オリジナルは止まり先)になっています。たぶん、ネジロックを溶かさずにスリ割りを強引に回したため、スリ割りの片側が折れてしまい、レンズ辺りから調達して着けたのでしょう。問題は、付属の40mmもピントリングを動かされており、カメラ側とレンズ側がどちらも不正確という、どうにもならない状態になっています。

シンクロ接片の半田は剥離することが多いのですが、この個体も半田をやり直してありましたが、半田を流し過ぎて先端U部分にも付着してネジ締めが困難になっていました。吸取線で半田を吸い取ってから再半田をします。

 

このようにしてあります。

 

 

それほど悪い個体ではないのに作業が進みませんね。本体は完成してシャッターのエージングテストをしていると、低速(1秒)が稀に不規則になる現象が現れて再分解です。(ヤレヤレ)原因が分かりました。画像はスローガバナーですが、低速域はギヤが入れ替わってBCの方に押し付けてギヤを変えていますが、Aのカシメが緩んでBCの上に乗り上げてしまうために1秒が速く不規則になるのでした。PEN-Fの機構は強度的に不完全なところがあります。カシメを修正してありますか、一度乗り上げ癖がつくと再発の可能性はありますね。

 付属の40mmも当然使用頻度は少なくレンズもきれいですがマウントネジに分解歴があります。事前のチェックでは無限遠がズレていて、しかも、調整をしてピントリングを回転させるとまだズレているという状態。この場合はレンズの緩みなどの場合が多いのですが・・まず、このネジが緩み加減ですね。本来はネジロックをされているネジですので、再締め込みのみの場合はすぐに緩んで来るのです。

流化したヘリコイドグリスがマウントとの接合面に大量に付着しています。

 

 

問題は鏡胴と絞り部分も分解をされていて、こちらのネジも緩んでいる状態でした。ピントの不具合の原因ですね。

 

各部の洗浄脱脂とレンズの清掃を終えてグリスも交換して組み立てました。緩んでいたネジです。

 

純正のフィルターは良いものが少なくなっていますが、このフィルターは手垢で汚れていましたが、洗浄のところきれいになりましたね。コーティングもきれいです。

 

ということで、当初は問題なく行くかなと思いましたが、そうは問屋が卸さないPEN-Fらしい展開になりました。付属のレンズも正規の元箱付きは貴重ですから大切にされてください。

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