ご常連のFTファンの方がカメラ店で購入されて来た個体です。露出計不動、巻上げゴリツキがひどい。#3569XX とのことですが、ほんとかなぁ? 裏蓋の圧板が4点留めになっていますよね。35万台でしたら⇣の「後期生産のPEN-FT」でやりました個体のように2点留めでないと変です。勿論、多少のシリアル№の前後はありますけどね。
この画像から分かることは、接眼プリズムを押えるプリズムホルダーの材質がアルミ製になっていますけど、この頃でしたら真鍮製の2点留めになっていなければ変です。また、セルフタイマーと接するダイカストの巻き戻し軸部の形状も異なっています。露出計ユニットは分解されていますので、ハーフミラーを入れ替えたのか、ユニットごと交換されたのか? それならなんで露出計が動かない??
底部を見ます。右端のボトムキャップがアルミの蓋になっていますが、35万台ですとビニールシート張りとなります。総合的に判断してトップカバーの付替機で、本体は1968年7月ぐらいに製造となった23万台付近の個体と判断します。35万台のトップカバーの程度は良いのに、なんで本体を変えなければならなかったのか。本体が故障であっても修理をすれば戸籍詐称にならずに済んだものを・・当方ストックの35万台の本体と合わせた方が良いかもね。まぁ、手慣れたプロがまとめた個体と言う印象です。
ははぁ、シャッターユニットも本体から分離されていますね。フィルムレールの上2点、下1点にシャッターユニットの留めビス孔がありますが、ここは工場出荷時は緩み止めが塗布されていますが、それが壊されていますね。修理のためにシャッターを分離することは必然で悪いことではありませんが、過去の履歴を推測する手がかりになります。品定めする時は覚えておいてください。
では、本体洗浄のうえモルトを貼って組み立てて行きます。スプロケットのクラッチ部の摩耗は全くありませんね。本体自体も消耗は少ない悪い個体ではないようです。カバーに当りでもあったのでしょうかね?
シャッターユニットのテンション(バネ)は通常の1つ緩めに組まれていました。工場の調整なのでそのまま組みます。チャージギヤ軸に軽微な摩耗があります。
プーリーはコントロールレバーと共締めで緩みやすいのでダブルナットになっていますが、若干緩み気味です。ここが緩むとコントロールレバーの作動が不正確となってシャッタースピードに影響があります。
後は同じなので割愛します。リターンミラーユニットも改良後のタイプですから実質的には35万台と違いはありません。
露出メーターユニットは、また別の個体のものでしょう。本体よりも後に製造されています。不動は基板のパターンがひどく腐食しているため、なんとか修復して作動としましたので、急いで電池室からのリード線を新製しておきます。
ハーフミラーは見にくい腐食はありませんが、オーナーさんのご希望で新品を使います。
しまった。特に考えないで電池室のリード線を黒で作ったら、シンクロのリード線も黒だった・・まっ、いっか。
メカの組立はほぼ終了。後は調整と検査をして行きます。セルフタイマーのレバーが水平になっていませんね。これはブラック用のレバーと交換した時に水平を調整していないためです。こういうところからも分かっちゃうんだなぁ・・
FTは完成。露出計も復活し、巻上げもスムーズな良い個体となっています。問題はレンズです。42mmは「難あり」として購入されたそうですが。持病の前群クモリがありますが比較的軽微です。絞り羽根に油が回って復帰しないと・・
貴重な42mmをこういうネジの開け方をするとは良い度胸だこと・・
鏡胴を振るとカタカタと音がするので原因を調べてみると・・後群が緩んでいました。レンズの無限遠がズレているのは、レンズが緩んでいる状態でピントリングをいじった可能性がありますね。また、ヘリコイドグリスが抜けていますので交換しておきます。
後玉は比較的きれいですが、8時周辺にカビが発生しています。
画像だと良く写らないのですけど前玉の後ろが曇っています。
本当に「難大あり」の42mmでした。FT本体のシャッターテンションが弱めの個体は42mm装着時フリーズする危険性がありますが、このセットは非常に軽快に作動しています。トップカバーは付け替えですが、本体は素性の良い個体です。35万台のジャンクを探さなくても良いかなぁ・・・
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