では、PEN-FT三兄弟に戻りますが、なかなか作業が進みませんよ。遊ぶものが多いからですね。で、1台目は10万台後期の個体でしたが、絶好調だと思いますよ。前にあるのが、風防待ちをしていたスポーツマチックです。
スポーツマチックの流用風防ですが、やはり内径が小さいために、ベセルを締める外径がかなり太ってしまい、修正は無理と判断して、スポーツマチック5用を見つけました。画像は、流用品をセットしたところで、外周のエッジがなだらかです。
風防が入ったケースに機械を組み込んで、精度の調整をしています。
仮に、茶のベルトをセットしてみたところ。フェイスが大きくて個性的なデザインですので、茶や黒以外でも似合うと思います。
元々、ステンレスベルト仕様ですから、現行のステンレスベルトでも弓カンを付ければ、違和感無く似合うと思います。尚、この時計は、すでにお譲り先が決まりました。
で、PEN-FT (B) #3280XXです。特に不具合はありませんが、巻上げのゴリツキが気になります。裏蓋の↑の部分が、故意にめくり上げられていますね。
巻上げレバーユニットを分離してみると・・駒数計の0復帰レバーが上に曲がっています。ははぁ、それで裏蓋と接触しないために裏蓋を曲げたということか・・
30万代なんですが、シャッターユニットはあまり良くありません。巻上げギヤ軸がかなり磨耗をしていますね。これが巻上げのゴリツキの原因です。ギヤに遊びが出て、正規の位置にないためです。その他、ネジの緩みなどが認められました。
メンテナンスの結果、巻上げのゴリツキはかなり改善はしています。この個体は露出計は基板別体タイプに交換されていました。その他はハーフミラーの交換のみで仕上がっています。
3台目のFT #1948XXという、中期の個体です。こちらも露出計ユニットが基板別体タイプに交換されています。取付けビスのネジロックが外されているのと、電池室からのリード線も交換されています。アイピース枠が完全にクラック入りで割れていますね。
いつものように、分解、本体洗浄から組み立てをしていまはたが、シャッターユニットに重大な欠点が見つかりました。シャッター幕を地板に取付けるビスのカシメが緩んで抜け掛かっています。これでは、正確にタイミングでシャッターは開いていなかったはずで、いつ脱落しても不思議はない状態です。
自然にカシメが緩むこともありますが、この個体の場合は、画像、反対側のスリ割りを強引に回した形跡があります。ここはねじ込み後、カシメ加工をされていますので、緩まないのです。それを知らずに緩めたのでしょう。さて、困りましたよ・・・
シャッター幕交換も検討しましたが、今回は、再カシメの上、接着剤で補強して使用することにしました。で、本体にシャッターユニットを組み込んで仕上がった前板を取り付けます。残念ながら、プリズムのコーティングは両端が手遅れの状態で剥離しています。反射の差が分かりますかね? 同じく、接眼プリズムのコーティングも良くない状態です。
露出計は補修用のユニットに交換されていますので、プロが作業をされた個体と思いますが、それにしてはシャッター幕の一件は解せません。
接眼のアイピース枠とハーフミラーは交換してあります。いろいろありましたが、どの個体も、調子は良く仕上がっています。付属の40mmはヘリコイドグリスが完全に抜けた状態でしたので、グリスの交換とレンズの清掃をしてあります。これにてFT三兄弟は完成です。