今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

セイコー・ロードマチック・ミリタリー仕様を作るの巻

2013年02月08日 22時04分25秒 | インポート

Dscf039703 PENが少ないので時計をやります。これはセイコーのLM(ロードマチック)ですが、揺動レバーという部品が不良のため、カレンダーの早送りが出来ないジャンク品。LMに搭載されている56系の機械の欠点です。そこで、この個体を使って、ハミルトンのカーキ風のミリタリー仕様を作れというご依頼。ミリタリーにはカレンダーは無いので揺動レバーが壊れていても支障は無いと言うジャンクの救済手段ですね。

Dscf039802 裏蓋の無いワンピースケースですから、機械は風防を取り外して取り出します。機械は別途オーバーホールをするとして、まずケースを仕上げておこうと思います。ケースには傷が多く、上面にヘアーライン加工が施されていますので、これを研磨して平滑面としておきます。LM用の風防は平面ガラス仕様が多いですが、このケースの風防はプラ風防です。こちらの方がクラシカルな雰囲気となって好ましいと思います。

Dscf039902 しかし、裏面です。ワンピースケースなので裏からは開きませんが、このケースはへこみが多いですね。正しくジャンクです。これも修正しておきます。

Dscf040001 研磨して仕上げたケースとベセルをサンドブラスト処理で艶消しとしておきます。

Dscf040101 裏面。ちょっと殺風景な眺めです。

Dscf040201 完成したケース。文字盤と針は、セットで製作されていらっしゃる方から調達しました。リング付きの社外風防は、デッドストックを使います。では、機械をオーバーホールして行きます。

Dscf040301 56ロードマチックは23石と25石が存在しますが、この個体は25石のモデルです。超音波洗浄のあと組み立てをして行きます。ゼンマイが入っている香箱にはメーカー指定のS-2グリスを塗布してあります。輪列とガンギ車をセットして、一体の受けを取り付けます。殆どの場合、部品の加工精度が良いので、ピタッと決まってくれます。

Dscf040401 アフターマーケット製のブラック文字板と針をセットしましたが、この針が曲者で、短針と秒針はきつい、長針は緩めという具合。また、長針の裏から塗布されている夜光塗料の盛り上がりが大きいため、0.2mm間隔での針の隙間では接触をする可能性がありました。長針が緩めのため、今回は取り外しはしませんが、次回の時は、針の裏面をフラットに仕上げてから使用しなくてはいけません。カレンダー窓はありませんので、曜車や日車は不要ですが、構造上組んでおかないと不具合があるため組み込んであります。

Dscf040501 とりあえず組んだままでタイムグラファーにより測定をします。「21600」は6振動(ハイビート) テンプの振り角は215°でまぁまぁです。+8秒ですから歩度の調整は良さそうに見えますが、テンプの片振りが2.7と大きい(グラフが2本)ですから、極力0に近づけるように調整をしてから、再度、歩度調整をして行きます。

Dscf040502 こんなところでしょうかね。時計は遅れることは不可ですので、少し進み方向で調整をしておきます。

Dscf040503 ユニットが完成しましたので、ケーシングです。ワンピースケースですから、機械は風防側から挿入してロックリングで固定します。文字板に付着している微細なホコリをハイポンタックで取り除きます。

Dscf040601 まず、リング付きの風防を圧入します。風防は社外の対応品ですが、寸法は合っていますが外周の角が角ばっていて、オリジナルの丸みのある形の方がクラシックなミリタリーにはあっていると思います。今回は仕方ありませんので、このまま使用しますが、純正が手に入れば交換したいところです。

Dscf040701 セイコー純正のナイロンベルトをあてがって見たところ。ミリタリー時計と言っても全く違和感は無いと思います。これが自動巻きのロードマチックとは。リューズはオリジナルを使いましたが、キングセイコーなどの大型ものの方が良いでしょうね。NATOタイプのナイロンベルトのグレーなどが似合うと思います。精度バッチリで実用性の高い時計に仕上がりました。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/