今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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PEN-FTブラックのオーバーホールの巻

2015年01月12日 20時29分47秒 | ブログ

頭を切り替えてカメラに戻ります。使用する工具もすべて変わります。##2884XXと大きなダメージはないPEN-FTブラックです。オーナーさんはライカも所有されていらっしゃるとのことで、そのような方は意外に多いですね。機能的には問題は無く、ファインダーの暗さをご指摘で、巻き上げレバーもゴリツキを感じられるかな?という状態です。特にドラマはないと思いますが、通常のオーバーホールをします。

あらら、ベテランさんはアルミ箔で電池アダプターですかぁ。

 

 

ハーフミラーは30万台以降の金コート以前のミラーが付いていますね。このミラーは劣化が進みやすいようです。反射率も低下しているようです。

 

プリズムも曇り気味ですね。

 

 

この個体もアイドラーギヤにリターンミラーユニットが接触していますね。

 

すべて分解洗浄の上、組立て行きますよ。分解時に電池室のリード線が半田部から断線しましたので、再半田付けをしておきます。電池ケース収納部のモルトも交換してから取り付けていきます。

洗浄点検済みのシャッターユニット。メインスプリングは条数を増した改良後のタイプです。

 

画像を撮り忘れました。特に問題のない個体と思っていましたが、確かに機能的には問題はないのですが、接眼プリズムのコーティングはすでに劣化が進んでおり手遅れの状態。また、シャッターユニットを洗浄して古いグリスと摩耗金属粉を取り除くとギヤ鳴り現象が起きるユニットがあって、この個体もそのような傾向があり、調整にてこずったというところです。FTのユニットは、一つ一つ個性があるので難しいなぁと思います。

 ハーフミラーを交換してありますので、ファインダー像は曇りも消えて明るくクリアーとなっていると思います。使用せずに保管された時期が長かったために光学系にダメージを受けてはいましたが、それだけに塗装の状態は角の剥離も無く、非常に良好な個体でした。すみません。今日は体調が良くないのでこれでUP終了といたします。

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SEIKO 5 DXをレストアするの巻

2015年01月09日 21時14分30秒 | ブログ

ここまで腕時計が続きますが、PENファンの方にはすみませんね。ニューファイブDXは1967年に新しいファイブとして6106Aを搭載して発売されました。25石で6振動と高性能で、それ以前のファイブより腕になじむのは私も当時使用していたので実感しています。6106-8000は代表的なモデルです。しかし、結構きびしい個体ですよ。

オーナーさんはパッキンが破れていると言われましたが、風防の黒茶のものは手垢ですよ。ずいぶんと汗かきの元所有者というか、少しは汚れを拭いたらどうなんだという気がしますが、まぁ、毎日腕に嵌めている実用品ですからね。

このように汚れがひどいケースはベゼルが固着して緩まない場合が多いのですが、何とか分離出来ました。クラックもありません。

 

テンションリング付の圧入風防ですから、専用工具で分離します。

 

 

しかし、問題はケースの傷が多いこと。観察すると、使用による自然な傷ではなく、紙やすりでゴシゴシとやっちゃってますね。風防も同じです。オークションものらしいですから、出品者がいたずらしたのでしょう。

 

元々、ラグ部の細いデザインのケースですから、あまり研磨しろはないのですが、ギリギリまで研磨をしてみました。ベゼルも研磨していますが、強度の問題がありますから、ほどほどで止めておきます。

 

おそらく一度もオーバーホールを受けていない個体だと思いますね。固着した油汚れがひどく、何度も超音波洗浄をしました。

 

巻真が抜けてしまう状態でしたが、観察のところ摩耗はなく、オリドリの油切れによる固着ですね。注油をしなが組立ていきます。

 

香箱、輪列を組んで。。軽く作動しますね。

 

 

秒針規正レバーはガンギ車を止めます。

 

 

テンプ受けを締め込むとテンプが停止する。回転錘が接触していたため。受けが変形してアガキが不足している状態。修正をしても時間の経過で戻ってしまう。天真の状態も良くないため、ASSY交換をしてあります。

 

この個体は、発売直後の1967-3月製と古いため、無給油の自動巻きマジックレバー関係は、摩耗が進んでスムーズに作動しない状態。ベアリングも摩耗により回転錘が傾き本体に接触しますので、6106Bから移植することにします。回転錘の取付けネジも変更されています。

 

グリスと注油で自動巻き機構を組みました。非常にスムーズに巻き上げています。

 

この時代としては文字盤の劣化は少ない方です。防水が利いていた個体でしょう。針を着けてユニットは完成。

 

硬化して機能を無くしたパッキンを新品に交換します。

 

 

新品の風防に交換したケースにケーシングをして、6106Bの回転錘を取り付けました。留めネジがセンター1本になりました。歩度は非常に安定しています。

 

ケースの状態や機械にも問題が多い個体でしたが、何とか仕上がりましたね。ファイブDXは次期モデルのアクタスが発売されるまでの2年という短期間に製造されたモデルですが、端正なセイコーデザインは上級モデルに通じる気品があって好ましいです。腕時計専門書にも、数あるファイブの中で特に紹介される初期型の基本モデルですね。ラグ幅19mmが以後のスタンダード18mmの過渡期という感じですが安定感があります。防水時計となってSSベルトが標準ですから当時は革ベルトで使用しているケースは殆ど見かけませんでした。夏期に黒のナイロンベルトはありましたね。ベルトに生命保険のおばちゃんがくれたアルミ板のカレンダーを着けてね。

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お父様の形見のSEIKO クラウンを復活させるの巻

2015年01月08日 21時06分46秒 | インポート

お父様の形見というセイコー・クラウン21石が来ています。非防水ケースですから文字盤の状態は悪いですが、当時は少数派のステンレスケースのため、金メッキケースと比較すれば、ケースの状態は悪くはありません。時計を振るとカタカタと音がするとのことでしたが、機械留めのネジが緩んでいるようです。

この時計は、25年前に時計屋さんに修理に出したとのことでしたが、機械を分離して見ると・・カタカタは2本のうちの片方の機械留めネジが緩んでいたのですが、もう片方がすごいことに。ネジが折れて地板内に残ってしまったので、隣に孔を開けてネジ切りもせず規格外のネジをねじ込んであります。地板内に残ったネジを取り出す工具もありますが、錆びてネジが太っていればまず外れません。このネジを無理に抜こうとすると折れますので、このままとします。

テンプの受け部分の地板が削られています。受けの角度を調整したかったのでしょうか?

 

何度か分解歴のある機械で、汚れも多かったですから、念入りに超音波洗浄をしました。

 

香箱にゼンマイをセットして香箱真をセットします。

 

 

中心のホゾ穴も摩耗を修正してありました。

 

 

受け側のホゾ穴も修正してありますね。

 

 

機械の組立が終わって、脱進機のアンクル爪(ガンギ車)に注油をします。見えないですかね? 丸穴の中に見える部分です。

 

組立注油が終わって文字盤・針を取り付けます。

 

 

風防とケースは軽く研磨をしてあります。

 

 

調整をしない最初の状態です。それほど悪いデータではないですね。

 

 

文字盤の劣化が残念ですが、これも高度経済成長期にお父様が頑張っていた証でしょう。手持ちの新品文字盤ですが、上はSSケース用ですが、下は金メッキケース用ですね。機械は19石と21石が有って21石の方が生産数は少ないと思います。ケースも当時は非防水の時代ですから金メッキの方が一般的でステンレスケースは少数派でしょう。この組み合わせは少なく、私も探しているところです。1962年3月製。

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SEIKO チャンピオン860カレンダーを仕上げるの巻

2015年01月04日 21時00分43秒 | ブログ

その前に、今日はやっと初詣に行って来ましたよ。冷たい空気の境内に入ると心が洗われるような気がしますね。で、参拝を済ませて、かみさんがお札を受けている間に腕時計をパチリ。去年の暮れに仕上げたセイコー5スポーツ6119-8140の6106仕様。室内でしか見ていなかった文字盤の色が変わってきれいです。ベルトも似合っていたと思います。

ついでに、同じく暮れに仕上げたセイコー・マーベルです。じつはデジカメの設定を間違えて殆どの画像がピンボケで、この2枚だけ辛うじて写っていましたが年初から失敗でした。このマーベル、仕上げてから一週間以上、平置きでゼンマイを定時に巻き上げていただけで、一度も時刻合わせをしていませんが、殆ど狂いがありません。ゼンマイの巻き量によって歩度の変化はあるのでしょうけど、ちょうど丸一日で帳尻が合うということか? 良く、マーベルの精度は悪いと書かれてるのを見ますが、この個体は驚異的です。天真が健全なら精度は出せる機械だと思います。

寒さのせいでしょうかね。ここのところカメラの修理関係が少ないので手持ちの時計をやります。セイコー・チャンピオン860カレンダー7622-9010です。(1966年1月製)亀戸製の手巻きの17石で、非常に機械の精度も良く、亀戸らしいがっちりとした作りは好きで、いくつも手持ちを持っています。今回はレンズ付きの純正風防が手に入りましたので仕上げることにしました。

入手した時は風防は傷だらけで文字盤が良く見えない状態でした。そこで研磨をしてみましたが、外側の凸っばったレンズの場合、研磨をすると磨けないレンズ周辺が歪んでしまいます。ケースの状態は小傷は多いですが、幸い致命的な打痕はなく、軽く研磨と洗浄をしてあります。このケースのラグはカットが浅いため、小型のリューターなどで研磨をするとカット(稜線)がダレてしまうのです。

シリーズ中、地味なデザインの文字盤が多いのですが、(ブラックはあります)この文字盤がちょっと高級感があるタイプです。左は実用中の同モデル。3時付近に腐食があります。今回の文字盤の方が程度は良さそうですが(未分解)やはり3時側に腐食の走りがあるのは残念なところ。

すべて分解をしたところ。手巻きの機械ですから自動巻機構が無いので、部品点数は少なめです。部品の摩耗は少なく問題は無いとこの時は思ったのです。

 

ゼンマイがダメでしたね。ゼンマイの先端部が折れていて、自動巻きゼンマイのようにゼンマイを巻くと滑って巻き止まりしない状態です。先端を加工して修理することも可能ですが、今回は手持ちのゼンマイと交換します。

ゼンマイを入れ替えた香箱をセットします。

 

 

輪列をセットしてが特徴的な受けを取り付けますが、加工精度が優秀のため、一回でピタッとホゾ穴に入ってくれます。

 

カレンダーは日車のみです。バネをセットしますが、気を抜くと飛んで行ってしまうので注意をします。

 

カレンダーレンズ付きの風防の場合、僅かにカレンダー窓との位置ズレでも気になるものですので、ケースの機械をセットして風防角度の微調整をします。

 

この風防は当時物の純正部品ですが、良く見ると裏側にすり傷のようなものが確認できます。これは、後天的に傷をつけたものではなく、成形金型の磨きが足りないためです。大衆機ランクだからこの程度の仕上げでOKとしたものか? しかし、セイコーの純正品質としてはちょっと残念な気がします。

フェイスは大きく、ラグ幅も19mmですが、自動巻機構が無いので厚みが薄く、腕に馴染んで装着感は良好です。派手さはなくても亀戸製らしいがっちりとした作りは私のお気に入りです。使いたい気分の時にサッと巻いて精度の良いところで使う。手巻きの良さです。昨日、文字盤のリダンで有名な西山製作所様から連絡を頂き、西山様がお亡くなりになったことを知りました。入院先の病室からメールを頂いてはおりましたが、私のことを「同業ですね」と言って頂いてお付き合いを楽しみにしてしていましたのに大変残念です。職人仕事は一代限りで技術まで持っていかれでしまいますからね。振り返って自分の未熟さが恥ずかしいと思います。