今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

新品仕上げのPENの巻

2016年09月13日 19時51分06秒 | ブログ

最近は三光でない普通のPENでも良いコンディションのものが少なくなって来ましたね。そこで、外観が非常にきれいな個体なので、幾つかの欠点を直して出来るだけきれいにして欲しい。とのご依頼です。確かにきれいな素材ですので、当方のパーツを使いながら仕上げて行くことにします。まず、定番のカウンターガラスにクラックがありますね。交換をご希望です。

こちらも定番ですが、ファインダーの樹脂が劣化をして白っぽくなっています。これは研磨をします。また、シャッターダイヤルに緑青が吹いて、回転が非常に重くなっています。

 

ファインダー単体にして見ると、露出していない部分は劣化を免れていて差がはっきりとしています。

 

 

研磨をしたところ。黄色の塗料は何か製造上のマーキングでしょう。

 

 

洗浄をしたダイカスト本体。意外にシボ革は汚れていて、洗浄後は明るく見えます。

 

では、いつものように組み立てて行きます。

 

 

オーナーさんからは「PEN-Sに比較してシャッターがゆっくりのような・・」PENのシャッターは、#000番バリオタイプの2枚羽根なので、羽根が大きく動きが緩慢なんですね。メンテナンスでシャッター自体は問題ありませんでした。

モルトを貼ってから巻上げダイヤル、カバー、駒数板を組み込みます。非常にきれいな部品たちです。

 

駒数ガラスは新品と交換接着をしました。

 

 

緑青の吹いていたカム板を洗浄して取り付けます。

 

 

ここで、この個体一番の欠点。レンズの前玉が傷なんですね。「何とか・・」とのことです。良く観察すると、レンズホルダーの塗装が浮き上がって劣化をしていました。(左がオリジナル)部分的にレンズを交換することはなるべく避けたいのが私の流儀なので、レンズASSYで交換することにしました。しかし、10台の部品取り機を見ましたが全て傷があります。当時はフィルターの装着率は低かったようで、裸のままでポケットに入れたような使い方が多かったのでしょう。仕方がありませんので、殆ど製造時期の近い整備待ちの良品から調達して来ました。

裏蓋内部もきれいに仕上げてあります。

 

 

実用される時は、フィルターとレンズキャップは装着してくださいね。

 

 

レリーズボタンの前面が腐食していましたので、良品と交換してあります。新品に近い雰囲気には仕上がったと思います。#4154XX 1963年11月製の両耳、普通のPENでも良いコンディションの個体は少なくなっていますので貴重です。大切にされてください。

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ファンの手元に戻しますPEN-FT

2016年09月08日 18時24分51秒 | ブログ

その前に、みなさん、「国産名車コレクション」のトヨタ2000GT買いましたか? 私は本屋さんに行くのが遅れまして、昨日出向きましたがすでに売り切れでした。そこに、ご常連さんの北海道のINOBOOさんからメールが来まして「買ったよ」とのことでした。羨ましいなぁ。やはり2000GTは人気がありますね。私がS800をレストアしている頃に、知り合いの修理屋さんにレストアで入っていましたが、ダイナミックなデザインから持っていたイメージよりも現車は意外に小柄に見えました。あの頃入手しておけば今頃は・・S800のミニカーは色々所有していますが、今回のシリーズにもラインナップされるようです。私の車は最終型(北米仕様ディスクブレーキ付)のS800M(AS800-1005000以降)ですが画像を見るとそれ以前のタイプ(チェーン駆動かリジットかは不明)をモデル化しているようです。追)ホイールを見ると4穴なのでリジットですね。チェーンは★の5穴ですから)

で、今日も近くの書店を回りましたが、意外に街の小さな本屋さんは廃業していました。普段行かないショッピングモール内の書店でも品切れ。そこに、あまりに派手な塗装だったので買わなかった「傑作機コレクション」のキの61三式戦闘機「飛燕」が残っていたので買って帰りました。空冷エンジン主体の日本軍用機の中ではひときわスマートな機体で大好きです。調布飛行場にあった飛行第244戦隊の戦隊長、小林照彦大尉機をモデル化しています。この戦隊長は元々は軽爆機からの転科という珍しい方ですね。ははぁ、増槽は銀色表現になってますね。昔の定説では「黄色」となっていまして、私たちモデラーも黄色に塗っていました。最近は、練習機でもあるまいに、目立つ黄色は無いだろうと新しい考証となったようです。しかし、飛燕と言えば体当たり攻撃の震天制空隊というワンパターンは気に入りません。私が飛燕と聞くと思い浮かぶのは、光人社発行の「秘めたる空戦」の作者、松本良夫氏です。内地運用より過酷なソロモン、ニューギニア、フィリピンを転戦し、独立飛行第103中隊での活躍は有名です。飛行理論にない飛び方は天性のもので、隊長にして「お前がカモ番(編隊の最後尾、一番落とされやすい)を飛んでくれないと俺は心配だ。一生カモ番を命ず。と言われ、空戦終了後は必ず燃料残、飛べる時間、どこの基地に帰れるかを瞬時に計算していた。最後は特攻で出撃したが会敵得ず、敵戦闘機に脚を出して降伏の意思を示し捕虜となった。しかし、皇軍で捕虜となった事実は重く、復員後は故郷の北海道に帰り静かに暮らした。自分の愛機が整備隊により整備を受ける現場に通って「きれいな飛行機だ」と眺めていたのはこの空中勤務者だけだったそうです。興味お有りの方は是非お読みください。

中古屋さんより素性の良いPEN-FTを譲り受けて来ました。シリアル№は#3127XXと良い頃の個体です。私は出来るだけ個体数を維持したいという思いから、素性が良いのに取り残された個体を復活させてファンのみなさんにお戻ししたいと思っています。完成後は、ご希望の方にお譲りをしたいと思います。

しかし、欠点のない美品が欲しいという方には向きません。ご覧のように、トップ面にコツンと打痕があります。その他は概ねきれいな個体です。では、分解をして検証して行きましょう。

 

トップカバーを外します。おぅ、未分解機ですね。正しく後期型の姿です。

 

 

では、いつものように分解洗浄をしてモルト貼りから巻上げ機構を組み立てて行きます。

 

シャッターは全く疲労はなく、シャッター幕もきれいです。リタイヤの原因は、一番多いトラブルのハンマー周辺の緩みです。部品が不良なわけではありません。じつは、入手の時点で故障原因は分かっていました。

 

メインバネが変更された後期型のユニットは調子は良好でした。人出を転々とする前に些細な問題でリタイヤしていたのが返って幸いして疲労がありません。

 

前板関係もプリズムのコーティングもきれいです。

 

 

ルーペのレンズもきれい。モルトを貼り換えて取り付けます。

 

 

接眼プリズムのモルトも正確に貼ります。

 

 

正直なところ、特にコメントする不具合部分がないで困ります。巻上げは軽くスムーズです。あまり使われなかった個体ですね。

 

アイビース枠は表面にクラックが見えますので、新品と交換してあります。

 

 

ハーフミラーは再使用は可能な状態でしたが、こちらも新品と交換しました。露出計の感度は良好です。

 

露出計調整、ピント調整、ストロボ発光テストをしています。

 

 

些細なことから早めに使用を停止していたことが、返って消耗していない良いコンディションを保っていたようです。美品ではありませんけど、ヤレた感じは少ない、実用される方には持って来いの個体だと思います。ご希望の方があればお譲り致しますので、価格等は下記までお問い合わせください。

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SEIKO 疑惑の3rd ダイバーの巻

2016年09月07日 19時28分11秒 | ブログ

次もダイバーですが、三代目のダイバーと言うことで「サードダイバー」と呼ばれている6309-7290です。この型番は海外製のモデルのようです。セイコーダイバーに就いては、マニアさんのサイトで「マニアやよほど好きな人以外は手を出さない方が良い」と書かれている通り、今回の個体はいろいろと怪しくて問題がありそうですよ。まず、ベゼルリングにクリック感がなく、「ヌルッ」と回るので、もしやと思って分解してみると・・カシメられているはずのスチールボールが無くなっていて、なんと、両面テープで貼り付けてあります。やれやれ、カメラの世界だけでなく、腕時計の世界にも、とんてもない人がいるようです。ちゃんと直せよ・・

仕方がないので、規格のボールを研磨してサイズを合わせてセットします。ベゼルプレートの接着も外れて来ました。メロメロやん。ベゼルリング自体も、前回の6105のように抜け止めのリングが無く、ベゼルと本体との嵌合のみで組み立てる構造です。これでは、何度もベゼルを外すと緩くなって脱落してしまうと思うのですが・・コストダウンですかね。

めでたくベゼルがセット出来ました。クリックも「カチッ」と歯切れの良い感触です。

 

機械は6309Aでシンガポール製のようです。特に特徴も無いセイコー5DXと同様の機械なので(ハック機能なし)、組立は割愛です。で、ケースから機械が中々取り出せず変だなぁと思いましたら、文字板の取付け足がなく、樹脂リングと機械に接着されていました。文字板もリプロと思われますが、何故、足を取り去ったのかは不明です。足が無いと位置決めがずれて、インデックスの位置が合わなくなるのです。右にチラッと見えますが、このモデルはリュウズはねじ込み式で、ネジを緩めるとバネ機構によってリュウズが出て来ますが、巻き芯が頻繁に緩んだと見えて、巻き芯のネジ部をヤスリで平らに削り、そこをペンチで強引に締め込んだため、リュウズの表面に「出べそ」として盛り上がっていました。ほんと、センスのない人は何をしてくれるやら・・

自動巻き機構のマジックレバーを抑える白い樹脂も、2つのネジ穴はあるものの、ネジは無くて接着されています。これでオリジナルなのでしょうか?

 

機械の精度もダメでしたね。メインスプリングとヒゲゼンマイが良くないようです。まぁ、何とか調整して・・

 

裏蓋に付いているパッキン。これ大き過ぎで太過ぎでしょう。神経が分かりませんね。フラットパッキンに交換します。

 

最後にベゼルプレートをインデックスに合わせて貼ります。文字盤の足が無いため、中心軸のセンターが出ていないのでインデックスが微妙に寄ってしまうのです。

 

その他、リュウズ頭の研磨などをして完成です。文字板と針はリプロでしょう。サードダイバーでも後期型のため、ケースはスリムになっていて近代的?に見えます。気になるのは風防ガラスがフラットで、ベゼルから一段低くなっています。社外の風防を取り付けてあるのでしょうかね。

右端は私所有のレディース用ダイバーの2205-0760です。ずいぶんとサイズが違いますね。個人的には、やはり左端の植村ダイバーが好きですね。しかし、指摘されていた通り、オークションに出品されている個体は、オリジナル性や状態に疑問がある物が多いようですから、素人さんはあまり手を出さない方が良いと思います。

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SEIKO ダイバー植村モデルの巻

2016年09月05日 19時59分52秒 | ブログ

九州のご常連さんからセイコー・ダイバー6105-8110が来ました。セイコーの二代目のダイバーということでセカンドダイバーと言われています。このモデルは冒険家の故・植村直巳氏が愛用したことから植村モデルとも呼ばれる150mダイバーです。キャリバーは6105B(前期型は6105A)で、基礎キャリバーは6106Aになります。非常に人気の高いモデルで、ヤフオクなどでは20万円を超える出品も見受けられます。とても手が届かない時計ですね。ご依頼はオーバーホールとケース研磨、風防、竜頭、針などの交換です。分解してみると・・文字盤がきれい過ぎるようですので、すでにリプロパーツと交換されているようです。

ケースが平べったくて特徴がありますね。私も1つ欲しいです。機械の精度ですが、全然ダメですね。片振りが大きく、完全に油切れのようです。

 

香箱車の真のグリスが完全に乾いて固着しています。分解して洗浄、組み立てをします。

 

このような人気モデルは、何度も分解を受けているのが普通ですが、意外にこの個体は程度は良くて、過去に一度程度のオーバーホールですね。裏を返せば一度しかメンテナンスをせずに使い続けたということです。

 

機械は手巻き機構も無いので、組立はそれほど複雑ではありません。秒針停止ハック機能はあります。

 

テンプを載せて動き出しました。注油をします。

 

 

ひっくり返し。カレンダー機構を組み立てます。

 

 

自動巻き機構は載せずに、タイムグラファーで測定、調整をして行きます。中々良くなって来ましたね。

 

ダイバー系は高価なので良く知りませんが、文字板の裏側です。リプロだと思うのですけどね。

 

3時ヨコに薄いすり傷がありましたが、蓄光も利いていますからリプロでしょう。針もリプロを使います。新品の針はメッキに傷をつけないように注意します。最後に曇りを拭いておしまい。

 

たぶん、この針はヤフオクで海外から送ってくれる日本人の方の製作かと思いますが(入っていたケースから)他の針も品質は悪くはありませんね。しかし、オリジナルと比較すると針の両肩が折り曲げられているのですが、そのエッジがシャープではありません。抜き型の精度か、後加工のエッジ研磨を省略されているものか? まぁ、この辺がリプロパーツの限界なのですよ。

風防ガラスも傷だらけでしたので交換です。こちらは、たぶん当時物の社外品だと思います。腕時計の風防は、純正以外にも、適合する風防を作っていたメーカーさんがありました。あとは、回転ベゼルを取り付けます。

 

完成したケースに機械をケーシングして自動巻き機構を載せます。

 

 

現行のセイコー製ウレタンベルトを取付けて完成です。ケースの研磨は、なるべくオリジナルのデザインカットを損なわないように最小限の研磨としてあります。特徴的なケース形状ですが、同心円にヘアラインを入れるのが非常に難しいところです。海外でもファンの多いモデル。欲しいですね。

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