今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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女性PEN使いさんのPEN-FTの巻

2016年09月16日 10時49分42秒 | ブログ

愛媛にご在住の女性PEN使いさんから修理のSOSが入りましたよ。#2004XXと、20万台と言えども10万台に近い前期型の個体です。比較的、初期生産の個体が女性の方のところへ行くなぁと感じます。前期型がすべて悪いわけではありませんが、改良前のユニットと光学系と露出計はどうしても時間の経過で劣化が起きやすいのです。で、巻き上げががっちりと固着しています。お約束の行動。セルタイマーを掛けてみて終了ということでしょう。

機械は未分解ですね。20万台でメンテナンスなしは厳しいところです。

 

 

なんと、HD電池が入ったままでした。オーナーさんは露出計は使用していないとのことです。では、液漏れをしますから抜いておきましょうね。

 

これです。プリズムのコーティングが劣化しています。

 

 

ハーフミラーは初期タイプのもので、その割には劣化は少ない方ですので、保管は比較的良かったと想像します。

 

問題のシャッターユニットですけどね。予想していた故障ではなく、応急復帰で作動をしましたが、完全にグリス切れでギシギシの状態です。原因はこの辺りでしょうね。

 

では、いつものように洗浄後、組み立てて行きます。スプロケット上部に入るウェーブワッシャー。これは初期の生産機には入っていません。20万台で入っている事が確認できます。

 

ん?、そうでもないな。仮に復旧させて巻き上げて見ると巻き上げが軽い。テンションスプリングがへたり気味の気がします。巻き上げは、なるべく軽いのが良いと思うでしょ。軽いと言うことはバネが弱いということ。条数が長く改良される前の仕様で、比較的、製造が古い個体なので、巻き上げたまま長期に放置されたような個体はへたりが出ると思いますね。スローガバナーは改良されたものが付いていますが、歯車の材質は改良前のままなので、摩耗する心配はあります。

前板関係。うぁ、これで見えましたかね。リターンミラーがすごく汚れ(腐食)しています。今回は清掃のみとしておきます。

 

プリズムは慎重に拭き上げてコーティングはセーフです。シャッターは、やはりテンションが弱く、スローガバナーを押しきれない状態でした。ガバナー側には問題は無いので、あまりやりたくはないのですが、テンション調整をしてあります。

この頃の個体は、接眼プリズムのコーティングは劣化した物が多いですね。外気に近いからでしょうね。

 

前期物はいろいろ細かいところに問題が出ます。駒数カウンター板が完全に復帰しない時があります。前期のものはスプリングが弱いと感じますが、経時劣化なのか仕様変更なのかは不明。しかし、今回の直接的な原因はスプリングでは無かったのです。

これね。ギヤASSYの小ギヤの回転がスムーズでない。今回は交換をしましたが、かと言って、後期の強めのスプリングとの組み合わせでは、何の問題も起きないのです。常に信頼性を改善する変更が行われているということ。

 

で、お約束の画像。残念なことに、露出計の感度が半部以下に低下しており、電池室からのリード線の抵抗値が大きいなど、交換をして改善を試みましたが感度低下が大き過ぎでした。オーナーさんは露出計はiphoneのアプリをお使いだそうで(そんなことできるんだぁ)今回はユニット交換はしていません。

底部です。リターンミラーユニットは、まだ変更前のタイプです。テンションは弱めなので、フリーズのし易い傾向がありますが、裏を返せば巻き上げが軽い。

 

38mm標準レンズですが、結構すごいです。革ケースに収納されていた個体は、レンズの劣化が大きいようです。

 

後玉もカビの他に、全体的に白く曇っています。

 

 

絞り羽根に流化したヘリコイドグリスが流れ込んでいます。全て洗浄脱脂をします。

 

付属の革ケースに入れて完成ですが巻き戻しレバーが飛び出していますね。

 

 

拡大するとこのようになっています。

 

 

これは、組み間違いではなくて、中央のレバースプリングを留めるネジの頭とレバーが干渉しているです。組立図面上では干渉せず、レバーは収まるようになっているはずですが、各部品の公差の関係で、部品の組合せによってはこのような個体が発生します。これ、結構多いですよ。

外観もきれいでそれほど使われた個体ではないのですが、20万台と言っても殆ど10万台と同様の古い生産機になりますから、経時的な劣化の不具合が出ていましたね。シャッターのテンションスプリングの劣化。露出計の感度低下。プリズム(光学系)のコーティング劣化。ハーフミラーの劣化(今回は交換)。駒数カウンターの復帰不良などがありました。どういう訳か女性オーナーさんのところへ行く個体は前期型が多いように感じますね。私としては、メカの心配などせず、撮影を楽しんでもらえることを願っています。

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