今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

里帰りのPEN-Sリペイント機の巻

2024年05月17日 14時00分00秒 | ブログ

2013年に私がリペイントをしたPEN-S3.5 #1010XXが北海道から里帰りして来ました。嫁に出した娘と久しぶりに会った心境です。元はお父様のカメラをリペイントされて、定期的に撮影されているとのことですが、塗装の傷や劣化が見られません。昨日塗装をしたみたいです。大切に扱って頂いているのが良く分かります。

しかし、コパル#000番シャッターはさすがに10年以上ですと不具合が出てきます。そこで、シャッターのオーバーホールに帰りました。動力が髪の毛の太さのバネ1本で、部品構成からも摩耗によってフリクションが高くなる傾向から、中々気難しいシャッターです。点検のところ、目視で不良の部品はなく、摩耗も少なめです。

完成したシャッターユニットを本体に戻しますが、本体の塗装に全く傷が無いので組み立てにはリペイント時と同じ気を使います。

 

カム板やレンズを取り付けて行きます。また、シボ革の角が剥離気味でしたので補修接着をしておきました。

 

S」を赤で色入れをした個体は何台か製作した記憶があります。今は諸事情もあって中々リペイントが出来ませんが、今見ても手抜きのない仕事をしていたなと思います。

 

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リコー・スーパー44のメンテナンスの巻

2024年05月16日 15時00分00秒 | ブログ

リコーの4X4 ベスト(127)フィルム二眼レフカメラ。スーパー44が来ています。製造は1958年12月~とのことでfeet機ですから、当時アメリカで流行した35mmスライドフレーム一杯(5cmX5cm)のベスト判カメラとして輸出されたものでしょう。年代の割にはレンズの状態は悪くはなく、シャッターのメンテンナス中心で復活するかと思います。

さすがにリコー製で安価なカメラでも簡潔な設計で品質は悪くはない印象です。

 

この時代の国産ミラーとしては悪くはない、清掃をすれば使えるとも思えますが今回は新品を作り交換します。

 

内部を清掃をして新しいミラーを取り付けました。

 

 

シチズンMVシャッターはチャージ、MX、セルフタイマーの3つのレバーがあるので前カバーにはレバーの逃げ孔が開いています。

 

シチズンのシャッターも高品質で悪くはありません。シャッタースピードB.1-1/400 でセルフタイマー内蔵です。低速不調とセルフ不調があるのでガバナーの洗浄と羽根の油を洗浄します。

何故かレンズのプレートが接着外れの状態でした。接着剤の塗布位置から推定して元の位置に接着しておきます。

 

巻上げは残念ながら赤窓式ですね。

 

 

レンズはリコービューワー60mmとリケン リコー60mmです。この時代のレンズに多い曇りはなく、清掃で良い状態になりました。巻き上げダイヤルの回転(クラッチ)が重く、ASA感度盤が回らない状態(ウェーブワッシャの錆び付き)ですので清掃をしておきます。

シボ革はビニール製で接着糊は弱く、部分的に剥離していますので接着をしておきます。

 

裏蓋の開閉はローライフレックスなどとは逆になっており、三脚の取付けネジは本体の先端にあります。

 

巻き止機構などはなくシンプルな内部。

 

 

立派な専用革ケースに入って完成。

 

 

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PEN-EE系はきびしいところの巻

2024年05月13日 15時00分00秒 | ブログ

運転会から戻ってPEN用38mmf2.8を組んでおきます。この個体はレンズは比較的きれいですがパンケーキの持病、ヘリコイドグリスが抜け気味でピントリングの回転にガタがあります。グリスを入れ替えて組みます。

で、本題はPEN-EES #4004XXですが、当時オーナーさんのお母様が新品で購入されたという大切なカメラです。しかし、製造の古いEE系のセレンは起電力が落ちていて正常に撮影することが難しくなっています。今回は、別のセレンとメーターの組み合わせで交換することにします。まずは分解をしていますが、駒数ガラスの接着が外れています。過去の分解時に外れたまま組まれていたようです。(接着層がない)

確保しているセレンとメーターユニット

 

 

洗浄をした本体に組み立てて行きます。

 

 

レンズ部を分離します。

 

 

絞り羽根に油が付着していますので分解洗浄をします。

 

 

そもそも、最初の点検でシャツターユニットの取り付けが緩んでいてガタがありました。以前に修理屋さんに出された経緯があるとのことでしたが、分解にはダイカスト本体とシャッターユニットを留めるネジのネジロック(黒塗料様の)を外さなくてはなりませんが、組立時に再びネジロックをしておきませんと使用中にネジが緩んでネジ山を損傷してしまいます。予定ではシャッターユニットはオリジナルを使用する予定でしたが、オーナーさんの判断で部品取り機のユニットを使用することにします。

メンテナンスをしたシャッターユニットを搭載したところ。メーターとセレンダイヤルを組み込みます。

 

ファインダーの清掃をしてトップカバーを閉じます。

 

 

トロボ発光テストをしています。

 

 

結果的に今回は撮影優先で中身を総交換となってしまいました。オーナーさんは現在はご家族を撮影されていて将来はお孫さんも撮影したいとのことでした。

 

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やれやれローライコードⅠの巻

2024年05月08日 21時00分00秒 | ブログ

ゴールデンウイークはどこへ行かれましたか? 私は今週末の運転会がやっと息抜きです。しかし、このような古いカメラがどこにあるのでしょう? ローライコードⅠとのことですが、1936(昭和11年)ころの製造らしいです。コードになるといきなり銘板が0.75mm厚のアルミ板になってしまうのね。茶色は黒が退色をしたのでしょうね。

とりあえず動かないしレンズも曇っていますので分解をしていきます。

 

 

画像が増えそうですので簡単にUPしていきます。古い割にはシャッター内部は悪くは無さそうです。分解清掃をしていきます。

 

レンズはビュー、テイク供曇っているのは、この時代のカメラの定番です。ビューレンズを分離しましたが、過去に緩み止めのイモネジを緩めずに強引に分解されてねじを壊しています。(裏側)

レンズは裏表が似ていて間違いやすいので組み立ては気を付けます。

 

 

フィルムカウンターは窓が素通しのため大量に汚れがあります。動きが粘って巻き上げが正常に動きません。

 

「12」前後に傷があるのは恐らくカウンターが粘って動かないので鋭利なものでこじった痕でしょうね。そんなことしたって・・数字の色入れが抜けて見えにくいので入れ替えることにします。

裏側のギヤの戻り用コイルバネが弱っています。これが弱いと巻き上げに不具合が出ます。極細のバネですので代用は難しいです。

 

カウンターの動きを直しても巻き上げ(巻き止)が正常に作動しない。巻き上げギヤを止める爪が異常に摩耗しているように見えます。

 

分離してルーペで見てみると・・あ~、これは摩耗ではなく故意に削られていますね。先端部分を薄く削り過ぎたためにギヤに噛合わなくなってしまい、結果的に巻き止が出来ないのです。

 

裏側を見ても分かります。なぜ削ったのか? まぁ、正常に動かないので直そうとした?  私はオリジナルの部品を削って修理するような考え方はしたことがありません。

 

先端の形状もオリジナルとは違っている気がしますけど良品が無いので比較が出来ません。微妙な先端形状の違いが正常に巻き止まない原因にもなるのです。交換部品はないし、削っちゃったものは戻らないしね。仕方がありませんので旋盤のバイトの先端部チップを取り付ける要領で欠損部分を作りました。

何とか正常に巻き止が掛かるようになりました。

 

 

ダイヤルのシボ革が無くなっているのでローライフレックスのジャンクからシボ革を調達して作りました。意外に同心円の2か所加工は難しいです。資料の画像を見るとダイヤル中央のボタン(ロック解除)は黒塗装のようです。この個体は未塗装なのか剥離したものか? まぁ、塗っておきましょう。

スプールノブのシボ革も無くなっていますので他から調達しておきます。

 

 

このカメラはフォーカシングルーペが:欠損していて、前面フードの後ろ側にあるミラーを45°に倒して背面のルーペで見るしかありませんが、ミラーはすでに腐食しているし見にくいと思いますね。通常のミラーは製作して交換をしてありますが。

巻上げテストをしていると、稀に巻き止が掛からない時がある。点検すると「自動巻き上げ止め装置」のレバーはフィルムカウンター側の制御レバーも削られていることが分かりました。こちらも同じ方法で修復して、何度も仮組をしながら適正な寸法になるよう修正をしました。

このモデルは巻き上げダイヤルの仕様がダイヤルの外側にはシボ革がなく、中央のボタンは真鍮地となっていますが、一般的なシボ革貼りのボタンは黒塗装で組みます。塗装をしたボタンだけ新しく見えて若干、乞〇が歯を磨いたみたいに見えますかね。

どうも巻き上げダイヤルとフォーカシングダイヤルは色々な仕様がある可能性があります。今回、フォーカシングダイヤルはシボ革仕様としていますが、ダイヤル外周に淵がなくフラットでシボ革仕様としては不自然なのでシボ革仕様でなく黒塗装仕様の可能性もあります。シボ革裏の見えない部分にMade in Germanyと刻印されているのも変です。

戦前のカメラですから今となっては良く分かりませんが、零戦より古い工業製品が良く生き残っていたと感心します。

それと、ここのところ難しいカメラが続いていることで、メールでのお問い合わせやご連絡が遅れる傾向にあります。申し訳ありませんが、順次対応いたしますのでよろしくお願いいたします。

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連休はPEN系でもの巻

2024年05月03日 13時00分00秒 | ブログ

私は連休は関係はないのですが、お取引のカメラ店様もお休みになって、何となくもったりとした雰囲気ですね。連日ローライフレックスが続いてストレスが溜まっていましたので、では箸休めにPEN系でもやりましょうかと思ったのでしたが・・塗装のきれいなPEN-Wと初期型のPEN-Sですが、何故か気になるPEN-Sから見て行きましょうかね。

PEN-Sの発売は1960年6月とのことですが、この個体#1424XXは1961年2月の製造になると思いますので初期型ですね。その割には汚れ放題ではありますが、外観はきれいで、あまり使用はされなかった個体と思います。ただし、経年によりファインダーは思いっきり曇っています。巻き上げが2回に1回ミスをします。

初期型の特徴。スプロケットがアルミアルマイト、スプールはグレーです。

 

ピントリングは固着気味でヘリコイドクリスは抜けています。

 

 

内部もホコリの混入が多く、巻き上げダイヤルカバーの留め孔片方が折れています。

 

初期のシボ革は硬化が進んで剥離がしにくいですが、それだけではなく古い時代の個体ほど接着が強固なのです。ストロボのターミナルはネジ式ではなく半田付けです。

 

先にファインダーを清掃しておきますが、曇りが激しいレンズは清掃だけではクリアーにならないケースが多いです。この個体もそうでした。光学研磨をしておきました。

 

ダイカスト本体は古いモルトの接着剤などを完全に除去してから洗浄してあります。

 

じつは問題のシャッターユニットです。各部を分解して点検をしていくと・・

 

あ~ダメだ。地板にクラックが入っています。これはコパルシャッターの持病で、使用過程で鏡胴部分を激しく打撃した個体や、工場で組み立て時にヘリコイドの雌側を地板に強く締め過ぎた個体に発生します。ダイカストの肉厚が薄く強度が足りないのでしょう。私の印象では初期の個体に多く発生している気がしますが・・これは修正が出来ません。地板の交換が必要です。箸休めと思って始めたの・・

結論的に製造時期の近い当方のシャッターを選択しオーバーホールをして使うことにしました。但し、ハウジングのチャージリンケージに摩耗があってリンケージの作動がスムーズでない傾向があったため、オリジナルのハウジングを使用しています。

本体にシャッターを搭載して、駒数ガラスの再接着とファインダーを取り付けたトップカバー側を取り付けます。シャッターの調子は非常に良いと思います。

 

初期型であまり使われなかったようですが、シャッターの持病が出てしまった残念な個体。シャッターユニットは製造時期によって部品の設計変更を受けていますが、今回は製造月が近くのユニットを使いましたので整合性は取れています。

次はPEN-W #1032XXで昭和39年9月(1964) 東京オリンピック開催の前月に製造された個体。こちらも外観も良くレンズの状態もまぁまぁと、あまり使われなかった個体です。よって、あまり書くことはない予想です。

本体の洗浄から組み立てて行きます。

 

 

シャッターユニットも消耗がありません。あっという間(実際は工数は掛かります)に組み立て終了。

 

ファインダーのレンズを分離して清掃をしました。カバーを接着します。

 

 

レンズですが、一般的には後群のバルサムが劣化しているものが多数ですが、この個体は、ほぼ合格点です。珍しい。ただし、前群に汚れが見えます。

 

前から見るとね。これは汚れではなくコーティングのカビ痕というのかな? 残念ながら拭いても取れません。

 

前側のレンズを分離します。黄ばみはバルサムの劣化ですべての個体にあります。しかし、曇りはありません。

 

このように張り合わせています。

 

 

後玉は良いので撮影では期待できます。外観の塗装状態も良く、現存の中では良い方の個体でしょうね。2台に共通点はあまり使われなかった個体という点。PEN-Sの初期型で状態の良いものは少ないので貴重な個体です。

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