(六)神 そしてend
人々が忌みきらう虫たちの生きる様。
じめじめとした地中において、もぞもぞと蠢いている虫たち。
しかし虫たちに罪はない。
あるとすれば、創造主たる神だ!
神! 神! 創造主だと?
良かろう、神が人間をつくりたもうたとしよう。
支配者としてつくりたもうたのか?
この地において、まさしく支配者たれるのか?
神は、人間を忌みきらっておられる。
なぜなら、……、分からぬのか?
ほんとうに分からぬのか?
だとすれば、やはり人間は嫌われている。
虫たちは、ただただ、生きている。
己がこの地にあったことを、神に知らしめるために。
そしてそんな中、なんの前触れなく突如せいじゃくを破って――江戸幕府のまえにその威厳を見せつけた黒船のドン! のごとくに、地獄の断末魔と神ごうしき神がみらの歓喜の声とがいりまじった悲鳴が、この地に飛び込んだ。
ドアの無施錠に職員が気づいた時には、脱兎のごとくに階段をかけあがる影だけが見えた。
そして直後に館内放送の声とともに、雄叫びともつかぬ声が大空にひびいた。
一瞬間、すべてが止まった、凍りついた。
時の流れでさえ止まった。
四方を壁で閉ざされた世界から、すべてが青空の下に移された。
見わたす所にはなにもなく――またなにかが欲しいと思えばそこにあるような気もする。
その世界は、一方では貴く気高い紫の世界であり、また一方では人間の持つ主我的という業火の世界であった。
すべては終わりを迎えた――終幕。
異国語で、end(英語),pau(ハワイ語),MURI(マオリ語),そしてfin(フランス・スペイン語).
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