(九)
「申し訳ございませんでした、杉田さま。
当方の手違いで、このような場所にご案内いたしまして。
ただいまお席のご用意ができましたので、どうぞお二階の方へ。」
ボーイからの注進に素早く対応したマネージャー。
正三に対する他の者たちの気の遣いようから、上客になると判断してのことだ。
「本日のご会計は、大サービスさせていただきますので。」
と、杉田に耳打ちする。
「不愉快です、ぼくは。金をけちろうなどとは思わない。
楽しませてもらった分だけは、きちんと正当に払います。」
憮然とした表情で、正三が口を開いた。
“いいか、正三。
金をケチってはいかんぞ。
どんなに店側に落ち度があっても、女どもに腹が立ってもだ。
そういう店には、二度と行かんことだ。
中に、『その後どうなったかな?』などと、
サービスを期待してのこのこと出かける輩がいるが、言語道断だ。
毅然とした態度を取るのだぞ。
見られている、ということを常に忘れるな。”
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます