外に出ると、空はカラリと晴れわたっている。
ジリジリと刺すように日差しがとどいている。
とつぜんに、車に乗ることに嫌悪感を感じた。
(仕事なんかやってられるか)という思いがわいてきた。
このまま長良川に行き、パンツ一枚で泳ぎたいと思ってしまう。
これまでにも仕事を投げ出してしまおうかと思ったことはあった。
しかしそれをすれば会社をクビになることは自明の理であるし、それ以上に社会からの脱落を意味すると分かっていた。
それより何より、なぜいま、そのような気持ちにおそわれたのか、言いようのない不安に胸が押しつぶされそうになっているのはなぜなのか、そのことのほうが彼を苦しめた。
中学時代に愛読というより狂気に近い思いで読みあさった芥川龍之介が思いだされた。
その作品群ではなく、その死に様が彼におそいかかってきた。
「ぼんやりとした不安に坑することができなかった」と書かれたという遺書の文言が頭をかけめぐった。
(死ぬって、どうなんだ? どうなっちゃうんだ?)
(この世からいなくなるってのはわかるけど、どっか行くところがあるの?)
天国、地獄、冥界。いろいのことばが浮かぶけれども、もちろん実感がわかない。
(彼なら、きっと答えてくれるだろうに……)
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