(四)
「良いのよ、千勢。
きつく言い過ぎたわ、あなたが悪いわけじゃないのにね。
どうしても、生理的に受け付けないのよ。
あなたにとっては善い人らしいし、恩人みたいなのよね。
まあね、あたしにしてもねえ。
武蔵に引き合わせてくれたのは、あの人なのよね。感謝しなければいけないのかもね、ほんとは。
でもさ、武蔵に会わなかったらさ、武蔵の援助がなかったらさ、アーシアの元に行ってたかもしれないし。
そうしたらアーシアも死ぬことがなかったかもしれないし…」
アーシアのにこやかに微笑んでくれる顔が浮かぶと同時に、大粒の涙がどっと溢れ出た。
アーシアを思い浮かべても、このところ涙までは流さなかった小夜子。
アーシアの死と武蔵との出会いを関連付けてしまった。
“関係ないわ、関係ない。あの時一緒に行かなかったのは、ごく自然なことよ”
と否定するのだが、武蔵と会わなければ…と考える小夜子だった。
「大丈夫でございますか、お医者さまをお呼びしましょうか?」
おろおろと小夜子を心配する千勢。
気丈な小夜子しか知らぬ千勢にしてみれば、今の小夜子は尋常ではなかった。
医者を呼んだからといって、どうにもできぬことは分かっていた。
分かってはいたが、何かをしなければと焦るだけの千勢だった。
「良いのよ、千勢。
きつく言い過ぎたわ、あなたが悪いわけじゃないのにね。
どうしても、生理的に受け付けないのよ。
あなたにとっては善い人らしいし、恩人みたいなのよね。
まあね、あたしにしてもねえ。
武蔵に引き合わせてくれたのは、あの人なのよね。感謝しなければいけないのかもね、ほんとは。
でもさ、武蔵に会わなかったらさ、武蔵の援助がなかったらさ、アーシアの元に行ってたかもしれないし。
そうしたらアーシアも死ぬことがなかったかもしれないし…」
アーシアのにこやかに微笑んでくれる顔が浮かぶと同時に、大粒の涙がどっと溢れ出た。
アーシアを思い浮かべても、このところ涙までは流さなかった小夜子。
アーシアの死と武蔵との出会いを関連付けてしまった。
“関係ないわ、関係ない。あの時一緒に行かなかったのは、ごく自然なことよ”
と否定するのだが、武蔵と会わなければ…と考える小夜子だった。
「大丈夫でございますか、お医者さまをお呼びしましょうか?」
おろおろと小夜子を心配する千勢。
気丈な小夜子しか知らぬ千勢にしてみれば、今の小夜子は尋常ではなかった。
医者を呼んだからといって、どうにもできぬことは分かっていた。
分かってはいたが、何かをしなければと焦るだけの千勢だった。
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