昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ボク、みつけたよ! (四十一)

2022-02-19 08:00:55 | 物語り

 そうでした、学校です。
当然ながら、まるで違います。当時は木造でしたが、いまはコンクリートの校舎です。
正門前に立ちますが、まるで思い出せません。
車をうごかして、裏手にまわることにしました。
運動場なんですが、意外に小さいです。もっと広く大きかった記憶なんですが。
敷地に沿ってまがると、せまい道路です。大型の車がきたらすれ違えないかもしれません。
学校のフェンスをこするか、相手の車が畑に落ちてしまうか、どちらかでしょうね。
いっそのこと一方通行にしてしまえばいいのに、なんて勝手なことを考えてしまいました。

 そういえば、こんなことがありました。
いくつだったか、五十過ぎたころでしたか。両側が畑のせまい道で、ここはすれ違うことはできません。
半分以上を過ぎたところで、中型の車がはいってきました。
当然ながらわたしが走っていることには気付いているはずです。
クラクションを鳴らして注意喚起をしたのですが、止まりません。
どころかそのまま進んでくるのです。
やむなく車を停めて「バックしてくれませんか」と声をかけました。
すると勢いよくドアを開けて――ドアが外れるんじゃないかと気になるほどの開け方です――「なんだ、コラア! だれに言ってるんだよ、てめえは」と、凄んできます。

 こういうところがわたしの変なところで、相手に威丈高にでられると、つい反発してしまうんです。
喧嘩はよわいです、わたし。というより、したことがありません。
相手が逆上してなぐりかかってきたとしても、無抵抗です。
殴られっぱなしになります。むろん、だれかが仲裁に入ってくれるという前提ですが。
どういうんですかねえ、この性格は。直りませんわ。
そうそう、車のことです。ちょっとにらみ合いになったのですが、わたしの作戦勝ちです。
携帯電話をとりだして、ピッポッパッと操作するふりをしました。
いかにも警察への電話だと思わせたんです。

いえね、きっとすねに傷をもつ人間だとふんだんです。
ひょっとして傷害事件かなにかで、執行猶予中じゃないか、ともです。
雰囲気的にチンピラ風でしたから、賭けにでたんです。
外れたらなぐられたでしょうね。まあ、そうならそうで、警察に電話しますけどね。
当たりです、大当たり! 案の定、相手があわてだしましたよ。
「わかったよ、このくそヤローが」。捨てゼリフを残して車に乗りこみました。
でね、ちょっといたずら心がおきて、手帳になにか書いてるふりをしたんです。

「な、なんだよ。なに書いてるんだよ、コラア」。ことばづかいは悪いですが、哀願調でした。
「あとあとのことを考えて、ナンバーをひかえようかと」
「ねえよ、ねえよ。すぐバックするから」
 そんなやりとりがありました。まったく無鉄砲でした。
そうだ。こんなこともありました。ダンプカーを相手にしたことも。
なんでだったかは覚えていませんが、対向車だったんですがね。
走行中でのことで、相手がドアをバン! とばかりに開けてきたんです。

もちろん車高がありますから、かすりもしませんでしたがね。
思わず、車の中で頭をすくめちゃいましたけど。
どういうんですかね、ちょっとしたことで相手を怒らせるんです。
こまったもんです、ほんとに。
でもさすがに、あの時ばかりは土下座をしました。
国道を走行中だったんですが、クラウンを追い抜いたんです。
それがまずかった、相手がヤクザさんだったんです。

さすがに相手がヤクザさんでは、いかなわたしでも無茶はできませんて。
追いかけられて停車させられて脅されて、もうひたすらあやまりました。
コンクリートに頭をこすりつけて、「ご気分を害してしまい、もうしわけありませんでした」と、ひたすらあやまりつづけました。



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