[口舌の人]
俺は神の存在を否定している。
しかしそこにも、人間を超越した何かを、想像している。
そしてそれを、自分だと言い聞かせることもある。
絶対という言葉を使うとすれば、そこには何ものものない。
自分さえも、居るのか居ないのかわからない。
即ち、自分について、とやかく考える必要がないのだ。
その対象物がないのだ。
他人は、俺を口舌の人と揶揄する。(他人=ひと)
そこに、侮蔑の色合いを感じている。
俺自身、そのことで悩んでいる。
しかし有言実行をと、願ってはいる。
実行せねばならぬととして、考えてはいる。
“実行なくば、死あり。”と、思い詰めてもいる。
小説を書きながら、人生の生の体験をしようとしている。
いや、現生活の体験を得ようとしているのだ。
ブルジョア的精神のせいかもしれない。
「それは迂闊であり、矛盾でもあった。
迂闊と知り矛盾と知りながら、依然ともがいている。」
あゝ、もうやめてくれ。
お願いだ!
俺が悪かった。
あゝ、月よ、月よ、もう消えてくれ。
俺が悪かった。
謝るよ、何でもするよ。
どんな償いでも。
ネェ、君。
君からも頼んでくれよ。
何でもするよ。
君に、仕えもするよ。
お願いだ、許してくれ!
あゝ、頼むから月よ、消えてくれ。
お願いだ、お願いだ!
そうか、こんなにまで言っても
お前は許してくれないのか!
チキショー!何だってんだ!
ちょっと触れただけじゃないか、
お前の唇にー
俺の唇が触れただけだ。
どうしてだ、
どうしてそれが悪いんだ!
俺はしたくなったんだ。
悪気はなかったんだ。
君がいけないんだ、
君が暗い道に入るから。
俺は君の後をついて来たんだ。
君の唇を盗もうなんて
そんなこと考えもしなかった。
ただ、君の後からついて行って
ただ、君を感じていただけなんだ。
それだけなんだ。
ナァ、頼むよ。
悪気はなかったんだ。
ひと言、言ってくれよ。
許す!って。
お願いだ!
悪気はなかったんだ。
分かったよ、分かったよ。
みんなの前で白状するよ。
君はそれが言いたいんだナ。
分かってるんだ。
俺はいつも考えるだけなんだ。
空想をして、それで楽しんで、
あゝ、悪い子だったョ。
何もできないくせに、
できるなんて思い込んで。
そして空想の中でそれをして。
あゝ、分かったよ、白状するよ。
みんなの前で、大声で。
お~~い、みんな、よく聞けよ!
俺はナ、今、キスをしたんだ。
無理矢理にだ。
あゝ、チキショー!
何だってんだ!
俺の意思でやったんだ。
文句あるか!
チキショー!
どうでもしろよ!
俺はやったんだから……
━・━・━・━・━・━
「なあに、あの子。
何をわめいてるのかしら。
私にキスしたなんて、冗談じゃないわ。
まったく失礼ね!」
そう、そうね。
彼女は、正しいわ。
でもね、彼は、やったのよ。
とに角、彼はやったの。
それを知っているのは、この私、月だけよ。
俺は神の存在を否定している。
しかしそこにも、人間を超越した何かを、想像している。
そしてそれを、自分だと言い聞かせることもある。
絶対という言葉を使うとすれば、そこには何ものものない。
自分さえも、居るのか居ないのかわからない。
即ち、自分について、とやかく考える必要がないのだ。
その対象物がないのだ。
他人は、俺を口舌の人と揶揄する。(他人=ひと)
そこに、侮蔑の色合いを感じている。
俺自身、そのことで悩んでいる。
しかし有言実行をと、願ってはいる。
実行せねばならぬととして、考えてはいる。
“実行なくば、死あり。”と、思い詰めてもいる。
小説を書きながら、人生の生の体験をしようとしている。
いや、現生活の体験を得ようとしているのだ。
ブルジョア的精神のせいかもしれない。
「それは迂闊であり、矛盾でもあった。
迂闊と知り矛盾と知りながら、依然ともがいている。」
あゝ、もうやめてくれ。
お願いだ!
俺が悪かった。
あゝ、月よ、月よ、もう消えてくれ。
俺が悪かった。
謝るよ、何でもするよ。
どんな償いでも。
ネェ、君。
君からも頼んでくれよ。
何でもするよ。
君に、仕えもするよ。
お願いだ、許してくれ!
あゝ、頼むから月よ、消えてくれ。
お願いだ、お願いだ!
そうか、こんなにまで言っても
お前は許してくれないのか!
チキショー!何だってんだ!
ちょっと触れただけじゃないか、
お前の唇にー
俺の唇が触れただけだ。
どうしてだ、
どうしてそれが悪いんだ!
俺はしたくなったんだ。
悪気はなかったんだ。
君がいけないんだ、
君が暗い道に入るから。
俺は君の後をついて来たんだ。
君の唇を盗もうなんて
そんなこと考えもしなかった。
ただ、君の後からついて行って
ただ、君を感じていただけなんだ。
それだけなんだ。
ナァ、頼むよ。
悪気はなかったんだ。
ひと言、言ってくれよ。
許す!って。
お願いだ!
悪気はなかったんだ。
分かったよ、分かったよ。
みんなの前で白状するよ。
君はそれが言いたいんだナ。
分かってるんだ。
俺はいつも考えるだけなんだ。
空想をして、それで楽しんで、
あゝ、悪い子だったョ。
何もできないくせに、
できるなんて思い込んで。
そして空想の中でそれをして。
あゝ、分かったよ、白状するよ。
みんなの前で、大声で。
お~~い、みんな、よく聞けよ!
俺はナ、今、キスをしたんだ。
無理矢理にだ。
あゝ、チキショー!
何だってんだ!
俺の意思でやったんだ。
文句あるか!
チキショー!
どうでもしろよ!
俺はやったんだから……
━・━・━・━・━・━
「なあに、あの子。
何をわめいてるのかしら。
私にキスしたなんて、冗談じゃないわ。
まったく失礼ね!」
そう、そうね。
彼女は、正しいわ。
でもね、彼は、やったのよ。
とに角、彼はやったの。
それを知っているのは、この私、月だけよ。
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