昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十六)

2013-09-18 21:07:32 | 小説
(五)

そして今、初めての海で戯れる小夜子。
思い描いた大海原を眼前にして、息を大きく吐き出した。
沈み行く夕陽が、海を赤くしている。

“あぁ、これが幸せというものなのね”

暖かさの残る砂地に寝そべり、武蔵の指で遊ぶ小夜子。

「いいこと。物では得られない幸せがあるのよ。
お金では買えない幸せがね」

梅子の言葉が思い出される。

“でもね、梅子姉さん。
お金があればこその、この旅行だわ。

それに、時間はお金がないと作れないのよ。
武蔵の稼ぎがあればこその、今なの”

そんな思いから逃れ得ぬ小夜子だった。


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