昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十六)

2013-09-17 20:42:58 | 時事問題
(四)

「ほんと? ほんとに、お水が青いの? キラキラ光ってるの?」
目を輝かせる小夜子。

「海って、ずっとお水ばかりなの? 
陸地がないの? 

お魚がいっぱい泳いでて、お舟より大きなお魚がいるの? 
それから……」と、疑問が溢れ出る。

「自分で確かめろ。
海辺の旅館に泊まるから、すぐ目の前が砂浜になっている。
生垣を出ると、もうそこは砂浜だ。」

「うわっ、うわぁ! いつ、いつ? 明日行くの?」

武蔵の腕を激しく揺さぶる。

「そうだな、いつにするかな……」と曖昧に言葉を濁す。

「だめ、だめ! 明日行くの! じゃなきゃ、行かない!」

頬をぷくうぅと膨らませる小夜子。
武蔵の指がその頬を軽く押す。

ぶふっと萎む小夜子の唇に、武蔵が軽く接吻する。
小夜子と武蔵の、一つの儀式になっている。

「明後日だ、明後日の始発で行く。明日は荷物の用意だ。」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿