昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十)  あんまりです、残酷です

2014-02-16 12:59:03 | 小説
(四)

「先生。このまま、ベッドに縛り付けられたまま最期を迎える患者の身にもなってください。
白い天井を見つめたままで、何の楽しみもなく過ごすなんて。あんまりです、残酷です」

食い下がる小夜子だが、医師は呆れ返った顔を見せている。

「あなたねえ、病人に早く死ねとでも言うの? 信じられませんな、まったく。
楽しみがない? そんなものは家族で楽しませてやりなさいよ。
医師がどうのという範疇を越えている。
そうか。家族じゃないから、そんな無責任なことが言えるんだ。
他人だから、そんな風に考えるんだ。
どこの世界に、病人を早死にさせようとする者が居ますか! 
信じられん、まったく。お引き取りください!」

憤懣やるかたないといった表情を見せる医師だ。
しかしそれでも、小夜子は食い下がり「先生!」と睨み付けた。


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