(七)
「あらあら。こちらこそ、お願い致したいことです。」
満面に笑みをたたえて、千夜子が言う。
“商売抜きでの付き合いが、できそうな男だわ。
奥さまには悪いけど、あたしにも、ね。”
“そうか、やっぱりこの女もその気だったか。
それにしても、商才がある。
女にしておくのは、勿体ない。
いや、女だからこその商売があるかもしれん。
会社の女たちの中にも、案外居るのかもな。
明日にでも、話してみるか。”
「どうなさいました?
ご迷惑ですか、月一度と言うのは。」
「いやいや、これは失礼。
千夜子さんの商売熱心に感服しまして。
つい、見とれてしまいました。」
「まぁ、お上手ですこと。
ほんとに遊び慣れてらっしゃること。」
「そろそろ、鮨をつまみますか?」
パンパンと手を叩き、階下から呼び寄せた。
「ありがとうございます。
社長さまには、あたくしでもつまんでいただこうかしら。」
妖艶に誘いかける千夜子に、武蔵は背にゾクッときた。
「いや、それは大好物です。」
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